第58話ドワーフ族の宴

 さて、どうやらドワーフ族には認められたようだ。


 あの後は、部屋に案内されたり、暮らしぶりを見せてもらった。


 そしてドルバ殿が、宴の準備が整ったと伝えにきた。


「よし!行くぞ!酒はいけるな!?」


「ああ、任せておけ。潰してやる」


 俺は、無駄に酒に強いからな。

 叔父上に仕込まれたからなぁ……止めよう、あれは地獄だった……。


「ほう!いったな!?このドワーフ族に!」


 そうして、宴は始まった。


 アテナとホムラは、女性陣に捕まっている。

 あの2人は、意外と攻められると弱いからな。

 しばらくは抜け出せないだろう。


 イージスは、ドワーフの男性陣に速攻で潰された。

 それはもう一瞬の出来事だった。


 ルイベさんとゼノスは、ちびちびと飲んで大人って感じだな。


 ノインさんは、困っているホムラを見てニヤニヤしている。

 え?俺公爵継いだら、あれを制御しなきゃいけないの?

 うーん……今は、やめよ。


 ゴラン殿は、飲まずに静観している。

 まあ、万が一に備えてだな。

 ん?俺は何をしているかだって?

 宣言通りだ。

 潰している。

 なにを?

 ドワーフの男共だ。


「おい!こっちもダメだ!」


「なに!?嘘だろ!?こいつ人族だろ!?」

 

「こいつも潰れたぞ!」


「くくく、どうした?威勢がいいのは最初だけか?」


「く、くそ!?いや、まただ!持って来い!」


「ドルバ殿、無理しなくてもいいんだぞ?」


「いや!ドワーフ族の長として負けられん!勝負じゃ!」


「くく、良いだろう。返り討ちにしてくれる!」


 こうして、楽しい夜は過ぎていく。


 え?人格が違う?

 それは、そうだ。

 皆がよく言う。

 酒飲み勝負の時の俺は、叔父上ソックリだと。

 

「ま、参った……ワシの負けじゃ……グハッ」


 ふむ……どうやら、ただのしかばねのようだ。


「ユウマ?飲み過ぎじゃありませんか?」


「お、ホムラか。なに、これくらい叔父上の地獄の飲み歩きに比べれば、なんてことはない」


 なにせ、叔父上の酔いを治すために、俺は酔いつぶれることは許されない。


「ふふ、最初聞いた時は驚きましたわ。貴方がシグルドの甥っ子だと。貴方は、家名を明かしていませんでしたから」


「ああ、そういや知り合いだったんだよな。俺は、貴族になるつもりはなかったしな……冒険者で生計を立てて、妹が無事幸せな結婚したら、国を出ていくことも考えていたしな」


「……後悔していませんか?貴族になったこと……そ、それにワタクシのことも。公爵家の1人娘なんて面倒な女」


「ん?……後悔はしてないかな。大事な人達と一緒にいられるし……ホムラを、何処かの誰かに奪われる心配も無くなったしな。お前は、俺の女だ。誰にも渡さん。だが、俺が一般人だったらこうはいかない」


「ちょ!?酔っぱらいすぎですわよ!?う、嬉しいですけど……そうゆうのは素面しらふの時にお願いしたいですわ……もちろん、今でも嬉しいですけど」


「くくく、すまないな。ヘタレなものでな。まあ、これから長いんだ。ゆっくりやって行こう」


「そうですわね。まだまだ、お互いに知らない事だらけですから。ワタクシ達のペースでいいですわね。わ、ワタクシは側に居られれば幸せですし……」


「ああ、よろしく頼むな」


 こうして、夜は更けていった。




  ▽▽▽▽▽▽


 俺は2日酔いになることもなく、目覚めた。


「ふむ。あの地獄の日々が、ここで役立つとは……人生わからないものだ」


 叔父上に、散々付き合わされたからなぁ。


「ユウマ殿、起きましたか」


「あ、ゴラン殿。すみません、昨日はみっともないところを」


「いえ。むしろ、素晴らしいです。あの飲みっぷり。是非、我が王とも飲みましょう」


「はは、強そうですね。ええ、良いですよ」


 そして外に出てみると、死屍累々ししるいるいといった様子だ。


 地面で寝転んでいる奴や、背中をさすられている奴もいる。

 まあ、つまりは2日酔いの連中だ。


「おお、ユウマ殿。起きたか……イテテ」


「おや?2日酔いですか?」


「ぐ!悔しいが、そうだ。ユウマ殿は平気そうだな。これは、負けを認めるしかあるまい」


「はは、またいつでもどうぞ。とりあえず、治しますかね」


 俺は、2日酔い共の中央付近に立つ。


「ふぅ……かの者等に宿る異物を取り除け!リムーブ!」


「おお!神よ!」「な、なんだ!?これは!?」「き、奇跡だ!」


「……なあ、ユウマ殿。ここに住まないか?」


「それは、嫌。2日酔い治し要員になるだけだ」


「……そうか、残念だ」


 いや、心底残念そうな顔だな!?

 まあ、酒呑みからしたら、欲しいだろうなぁ。


 その後、朝食を共にし、出発の時間になった。


「ては、ドルバ殿。世話になったな。また、会おう」


「おう!いつでも来い!宴を開くからよ!」


「はは、ほどほどで頼むな」


 沢山のドワーフ族に見送られながら、俺達は出発した。


 こうして、ドワーフ族訪問は無事に終わった。





「さて、ユウマ殿。ドワーフ族は上手くいきましたね。だが、次はお気を付けください。我が王すら持て余している、ハーフエルフ族です」


「……対処法を変える必要がありますよね。ちょっと相談してきます」


 俺は、ルイベ男爵のところに行く。


「ユウマ殿?どうかしましたか?」


「いや、次はハーフエルフ族の集落なので、ルイベ男爵にお願いしたいなと」


「え?私ですか?……わかりました。精一杯努めさせていただきます」


「いや、そんな緊張しなくて大丈夫ですよ。普段のルイベ男爵で。彼等は、酷い言葉を言ってくる可能性があります。俺たちの中では、ルイベ男爵が適任です。他の奴らは、キレやすいので……」


「ああ……ホムラ様やアテナさんはそんな気がします。ゼノスは部外者。イージスさんは口下手そうですね。ノインさんは、そもそもそういう担当ではない。なるほど、了解です。私が適任ですね」


「ええ。なるべく、俺と2人で話をしましょう」


 俺は話を済ませ、馬事に戻る。


 さて、場合によっては滞在すら出来ないかもな。


 そして、嫌な予感ほど的中するものだ。





 さて、ハーフエルフ族の集落に


 だが、入ることができそうにない。

 俺たちは、門番らしき2人に止められている。

 はぁ、これは難題だな。


「なんだ!?貴様等は!?ここは、ニンゲンなんぞが入っていい場所ではない!帰れ!」


「そうだ!ここは神聖なるハーフエルフ族の里!一歩たりとも入れはしない!」


 さて、どうすればいい?





 

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