第59話ハーフエルフの集落

さて、俺たちは集落に入れないでいる。


ゴラン殿は、静観している。

おそらく、俺等の対応を試しているのだろう。


ホムラ達は、すこし下がってもらった。

何故なら、アテナとホムラが喧嘩を売りそうだったからだ。

……あれ?人選間違ったか?

いや、アテナがいるといないじゃ、安定感が違うしな。

仕方ない、適材適所ってやつだ。


俺はルイベ男爵だけを連れ、前に出る。


「ルイベ男爵、いけますか?」


「……やってみましょう」


ルイベ男爵は両手を上げ、慎重に近づいていく。


「なんだ!?近づくな!」


ハーフエルフ族は、槍で威嚇してくる。

とゆうか、弱そうだな。

まあ、本来は魔法がメインの種族だからか。

血が混じることにより、魔法を使える者が減っているらしい。


「私は丸腰です。まずは、話を聞いていただけませんか?重要なことなのです」


「……わかった。とりあえずはお前1人で来い」


「はい、わかりました。ユウマ殿、行ってきますね」


「……お気を付けて。ただ、危ないと思ったら飛び出します。即死でなければ、治せます」


「それは良いことを聞きました。……よし、行くぞ」


ルイベ男爵は、ハーフエルフ達に槍を突きつけられながら、会話している。


ふむ……今の所は平気そうだな。

様子を見よう。





お、どうやら終わったようだ。


「ユウマ殿」


「無事でなによりです。何を聞かれましたか?」


「目的や、人数などですね。侵略しにきたのか?とも言われました。余程嫌われていますね」


「まあ、祖先は人族に滅ぼされたらしいし、無理もない。それに、その容姿から捕まって酷い目にも合うらしい。あの教会のクソ共が」


「ええ、人族全体を悪と見なしていますね。とりあえずは、あと1人までなら入って良いと」


「じゃあ、俺だろうな」


俺は、仲間たちに事情を話す。


「だ、大丈夫ですの?」


「ふん!あんな奴らほっとけばいいのさ!」


「まあ、平気だろ。彼等は憎しみもあるが、それ以上に怯えているだけだろう。こちらが手を出さなければ、平気なはず」


「では、お手並み拝見といきましょう」


「ゴラン殿……なるほど。これは、自力でどうにかしないといけないってことか。では、イージス!」


「はい!団長!」


「お前に任せる!皆を頼むぞ?」


「はい!オイラはその為に来たんです!」


「よし、では行ってくる!」


俺はルイベ男爵と共に、ハーフエルフについていく。


そのまま10分ほど歩くと、建物が見えて来た。

やはり、木造住宅が基本か。

しかも、木の上に建っている。

あれなら、獣も登れない。

近接戦闘が向かない種族には、理にかなっている。

あれなら、上から魔法や弓で攻撃すればいい。


「おい!なにをチラチラと見ている!?」


「いえ、立派な住まいだなと。あと、木の上の建物は見慣れてないので」


「……ふん、そうか。まあ、ならいい」


「だが、余計なことはするなよ?射つからな?」


やっぱり、そうか。

さっきから、視線をやたら感じるとは思っていた。

仕方ない、大人しくしてるか。

それにいざとなれば、ルイベ男爵を守りながらでも逃げられるし。

正直、束でかかられても負ける気はしないな。

腕が上がったのもあるが、ミストルティンもあるしな。


「ええ、その時は遠慮なくどうぞ」


「……変なニンゲンだ」


ニンゲンか……根深いな。


そして、一際大きな建物についた。


「ここが、我等の長であるセレス様の住居である。……少しでもおかしな真似をすれば……」


「ええ、後ろから射抜いて結構ですよ。さあ、行きましょう」


「ああ、ついてこい。今からお会いになる方は、神聖なるエルフであられる方だ」


神聖なるエルフ?

どういうことだ?

ハーフエルフとは違うってことか?

先祖がえりってやつかもな。


「ユウマ殿、私はどうしますか?」


ルイベ男爵が、小声で話しかけてくる。


「では、俺が話してみるので、なにかあればフォローを」


「わかりました。では、そのように」



そして、中に入り進んでいく。

ハーフエルフ達が、俺等を凝視してくる。

いや、しかし……本当に見た目じゃ区別がつかない。

全員が整った容姿。

長い髪で、サラサラの金髪。

平坦な身体。

綺麗な翠の目をしている。


だが進んでいくと、明らかに、他とは違う個体が立っていた。


「ようこそ、人族の方。歓迎はできないが、話だけは聞こう」


その個体は、容姿こそ同じだ。

だが、髪の色が銀髪だ。

そして、目が碧い。

そして、大きい。

ハーフエルフ族は見た感じ170くらい。

だが、この方は180はありそうだ。

何より、纏っているオーラが違う。

思わず、平伏してしまいそうになる。

これが、本来のエルフか。


ごれは、ルイベ男爵に任せなくて良かったかもな。

俺は、振り返り確認する。

だが、ルイベ男爵は一歩も引いていなかった。

……侮ってはいけないな。

戦う力はなくとも、立派な胆力の持ち主だ。


よし!俺も負けてられないな!


「ありがとうございます。それで、十分です。では、こちらを」


案内してきたハーフエルフに、封筒を渡す。


「ふむ、どれどれ。なるほど……そうゆう理由か。難しいところだ」


「では、同盟は受け入れられないと?」


「すぐには、無理だ。我等は、人族を信用出来ない。だが、国王が認めたなら、妥協はする。まずは、それからだ」


なるほど……そうなると、帰りに寄らないとか。


「わかりました。では、また帰りに寄らせてもらいます。私の名前はユウマと申します。よろしくお願いします」


「ふむ……傲慢な人族らしくないな。二度手間だというのに、怒らないとは」


「一口に人族といっても、色々です。悪い奴もいれば、良い奴もいますよ?」


「お主が、その良い奴とでも?」


「それは、どうでしょう?それを決めるのは、貴方達です」


「……わかった、考えておこう。私の名はセレス。よ、また会おう」


「ええ、また。では、失礼します」


「ああ。おい、門番達。いいか、丁重にお送りしろ」


「え!?……はい、了解しました」


どうやら、少しは態度が緩和かんわしたな。

一先ずは、一歩前進ってとこか。


そのこともあり、槍を突きつけられることなく、元の場所まで来れた。


「ではまた来ますので、顔を忘れないでくださいね?」


「……人族の顔は、区別がつかない。だが、努力はしよう」


「ええ、それで十分です。では、失礼します」





「ユウマ殿、とりあえずは上手くいきましたね」


「ええ、ルイベ男爵の最初の態度が良かったのでしょう。それと……正直、ルイベ男爵を侮っていました。すみません」


「はは、私がセレス殿に気圧されなかったことですか。いや、正直危なかったです。ですが、ユウマ殿ばかりに負担をかけては、私が来た意味がありませんから」


「ええ。頼らせて頂くので、これからもよろしくお願いします」


「ええ、こちらこそ」


そして俺らは、仲間の元へ戻る。


「ユウマ殿、どうでしたか?」


「とりあえずは、名前を呼んでもらえました。あと、帰りにもう一度来るときに、返事をすると」


「ふむ……合格ですね。セレス殿が名前を呼んだなら、ある程度認められるということです」


「一応聞くんですけど……ゴラン殿は入らなかったのではなく、入れないのですか?」


「……半分正解ですね。我等も嫌われていますから」


「その理由は、俺らが聞いていいものですか?」


「ええ、問題ありません。エデンでは、周知の事実ですから。単純な話です。何故、その力を持ってして人族を滅ぼさないかと」


「それは、なんというか……見えてないですね。憎しみに囚われすぎだからか?」


「ええ、正解です。いくら我等が強くとも、人族の方が圧倒的に数が多いので、いづれ我等が負けます」


「ええ、そうなりますね。それにこちら側にも、叔父上のような強者もいますから」


「その通り。でも、ハーフエルフ族は認めません。まあ、こればかりは時間をかけるしかありません」


こうして、無事に終わったが、まだまだ問題だらけだ。


これから少しでも、俺ら人族が歩み寄り、解決出来たらいいと思う。


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