子爵から伯爵になる

第52話動きだす物語

さて、俺が領主になることが決まってから、あれから4日経った。


もう、それはそれは大変だった。

領主になること、それは伯爵になるということだからだ。


母上は、放心しちゃうし。

エリカは、狼狽うろたえてるし。

あのセバスが、言葉を無くしてしまうし。

クリスは、ニコニコしてたけど。


ちなみに、アロイスとイージスは準男爵になった。

まあ、それはそうだよな。

大活躍だったからな。

アロイスは意中の人と同格になったな。

あとは、本人達次第だ。




そして今、俺は王城へ向かっていた。

子爵になるので、謁見の間に呼ばれたのだ。

門に着くと、そのまま兵士に案内され、謁見の間に向かう。


入り口の近衛兵に、兵士が伝える。


「ユウマ-ミストル準子爵が、到着しました!」


「了解した。では、下がっていい」


「は!失礼いたします!」





「では、ユウマ殿。武器を預けてもらえますか?」


「はい、どうぞ」


俺は、ミストルティンを預ける。


「こ、これが宝剣ミストルティン……確かにお預かりいたします」


うーん、近衛兵が震えている。

やはり、国宝に指定される物だしな。

正直、俺も考えだすと震えそうになる。


「では、お通りください」


「はい、失礼いたします」


そこには、貴族達が勢揃いしていた。


俺は、レッドカーペットを、視線を下げながら歩いていく。

そのまま、止まれと言われるまで、歩く。

そして、止まれ!と言われたので、片膝をつき、頭を下げる。


「ユウマ-ミストル、顔を上げよ」


「は!失礼いたします!」




「うむ、また一皮剥けたようだな。良い顔をしている」


「は!ありがとうございます」


「この度は、よくやってくれた。礼を言う」


「いえ!勿体無いお言葉です!」


「いや、実際に助かった。あのまま放置していたら、どうなっていたか……」


「ええ。そうですよ、ユウマ殿。誇ってください。国難を救ったのですから」


「宰相様……わかりました。お褒めの言葉、有り難く受け取らせていただきます」


「うむ。では、ユウマ-ミストルを子爵に命ずる!そして、親善大使の護衛隊長を務めあげたのち、伯爵とする!賛成の者は、拍手を!」


すると、拍手が巻き起こる!

俺は、ようやく辺りを見回す。

まあ、半分くらいは不満そうだ。

仕方のないことではあるが。


「うむ!では、ユウマ-ミストル!無事に任務を遂行し、帰ってくること!いいな?」


「は!必ずや、任務を遂行し、帰ってまいります!」


こうして、とりあえずは子爵になったようだ。



▽▽▽▽▽


俺は、馬車に乗らずに、王城の帰り道を歩いていた。


すると、ゼノスが誰かと話している。

あれは……たしかシャロン-グラム伯爵か?

なんだ?知り合いなのか?

とりあえず、2人とも知り合いだし、声をかけてみるか。


そう思ったのだが、シャロンさんは何処かへ行ってしまった。


「まあ、いいか。とりあえず、ゼノスに話しかけよう。おーい!ゼノス!」


「ん?おお!ユウマ殿!」


「どうしたんだ、こんなところで?というか、さっき一緒にいたのは、シャロンさんか?」


「シャロンさん?ああ!あの人か!いや、知り合いではない。ただ、この辺来たことがないから、歩いていたら止められたんだよ。ここは、貴族街に近いですから、不審者に思われますよって」


「ああ、なるほど。それはシャロンさんが正しいですね。うるさい人もいますから」


「ああ、そうらしいな。まったく、何処の国もそういうところは変わらん」


「噂に聞くトライデントほどじゃないとは、思いますけど」


「はは!そりゃそうだ!あそこは、堅苦しくて堪らん!……だが、そろそろ一度帰らねばならんか」


「そういえば、結構いますもんね?」


「ああ、そうだな。……そういえば、ユウマ殿はエデンに行くそうだな?」


「え?はい、そうですけど」


「もし良かったら、同行させてもらってもよろしいか?ここに来る前に通ったのだが、扱いが酷くてな。まあ、教会側から入ったから、仕方ないのだが」


「うーん……冒険者を雇う予定はないのですが。しかし、戦力に心許こころもとないのは確かだし」


まあ、ゼノスの気持ちはわかる。

あそこは、人族には厳しいらしいからな。

何が起きるかわからないから、三級のゼノスがいたら助かる。

今回は、前衛が少ないしな。

何より、イージスを守りに回せるのが大きい。



「ちなみに、報酬とかはいらない。好きに使ってくれ。ただ、途中まで一緒に行ってくれるだけでいい」


「……わかりました。俺が個人的に、格安で雇います。ただし、もし貴方が問題を起こしても、俺は庇いませんし、見捨てます。それで、いいですか?」


ここは譲れない。

大事な任務だからな。

ただ、警戒を与えないために、少数でいかなくてはならない。

なので、実力者が1人でも欲しいところだ。

国の実力者は、防衛のために連れていけないし。


「それは、当然のことだな。ああ、それで構わない」


「なら、契約成立ですね。よろしくお願いします」


「ああ!ありがとう!助かった!よろしくな!」


「あと、一応上に報告しますよ?」


「ああ、構わない。なにもやましいことはないからな」


「予定では、3日後のお昼過ぎに出発するんですけど、どうしますか?」


「わかった。では、門の入り口付近にいるから拾ってくれ。こうしちゃおれん!引き払ったりしなくては!じゃあ、ユウマ殿!よろしく頼んだ!」


そう言って、走り去ってしまった。

さて、これで戦力も整ったし、いよいよエデンに行けそうだな。



と、思いたいところだが……そういう訳にもいかない。

なんでかというと、明日はホムラの実家に、お呼ばれしているからだ。


つまりは、公爵家当主オーレン-バルムンク閣下に招待されたという事だ。

いよいよ伯爵になるので、一度会いたいと手紙が届いた。


……逃げちゃダメだろうか?いや!逃げちゃダメだ!

……よし!腹を括って、行くしかない!


俺は明日のことを考え、気合いを入れた。


同時に、家に帰ってからすることにも気合いを入れた。

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