第51話幕間

さて、正式にはまだだが、領主になることが決まった。


俺は、住民達に引き止められて、未だにガンドールに滞在していた。


ギルドの報酬も貰い、国からの報酬は、帰ってからということになった。


ちなみに、仲間達は各々、自由に行動している。


シノブとホムラは、なにやら2人でお出掛けをしている。

これは、相当珍しいことである。

まあ……これからを考えると、良いことだな。


アロイスは兵士達にわれて、訓練をしている。

相変わらず、面倒見が良い奴だ。

あいつなら領主とかになっても、問題ないだろうな。

バラルとも気が合うようだし。

やはり、同じタイプの外見だからか?


イージスとアテナは、イージスの故郷へ顔を出しに行った。

イージスは1人でいいと言ったのだが、万全の状態ではないので許可しなかった。

なので、アテナに付き添いを頼んだ。

アテナもしょうがねえなと言いながら、嬉しそうだったな。

まあ、あとは本人達次第だな。



そんな訳で、仲間達は充実した休日を過ごしているようだ。

ただ、エデン出発まで10日ほどになったので、明後日には帰ることにした。


そんな時、何故か王都に帰った叔父上が、こちらに来ていた。


「どうしたんです?叔父上」


「いや、ちょっと王都にいづらくてな。あとは、事の顛末を報告しに来た」


叔父上の話によると、こうだ。

領主の息子と母親は死刑。

娘2人は修道院行きになった。


「では、予定通りですね」


「……あんま無理すんなよ?お前は甘ちゃんだからな」


叔父上から、俺を心配する気持ちが伝わってきた。


「叔父上……ええ、大丈夫です。確かに、気分のいい事ではないけど」


「そうか……ならば、もう言うことはない。さて!本題だ!」


「まあ、そうでしょうね。それだけなら、誰でもいいですもんね」


「ああ。ユウマ、俺と本気で戦え」


叔父上は、見たことないような真剣な表情だ。

俺は、訳がわからなかったが、今はいいかと思った。

そして、すぐに覚悟を決めた。


「ええ、わかりました。場所はどうしますか?」


「大丈夫だ。さっき話は通してきた。闘技場に行くぞ」


「え、ええ。わかりました」


そして、2人で闘技場に向かう。

闘技場とは、娯楽として闘いを見せる場所である。

荒くれ者の息抜きにや、腕に覚えがある者の披露の場としても使われる。

普段はその広さから、兵士の訓練などに使われている。


そして叔父上と中に入ると、驚いた。

なんと、観客席に人がいっぱいいるのだ。

よくよく見れば、仲間達もいる。

そして、俺達に気付いた観客が歓声をあげる。



「ユウマ様ー!」「領主様ー!」「抱いてー!」

最後の声はシノブだな……。たく、しょうがない奴。


「あのー、叔父上?そろそろ説明を……」


「この観客に関しては、俺は知らん。ただ、バラルとかいう奴に聞かれただけだ。ここを借りていいか聞いたら、それを市民に見せてもいいかと」


「バラルさんが?うーん、どういうことだ?」


「ユウマ殿!」


バラルさんが、こちらにやってきた。


「バラルさん?これは一体……?」


「いや、すまない。市民達が怖い目あっただろ?それを払拭ふっしょくできるようなことはないかと考えていてな。シグルド殿の話を聞き、これだ!と思ってな」


「あー……なるほど。でも、結構激しいですよ?」


「そういうのは、見慣れてるから大丈夫だ。あとは、新しい領主のお披露目でもある。ユウマ殿がどのくらい強いのか、知らない市民や、兵士達に見せるためでもある。自分達は、こんな人に守ってもらえるんだという安心も含めてな」


はぁー……相変わらず気配り半端じゃないな。

もう、この人が領主でいいんじゃないか?

戦功により、準子爵になったみたいだし……。


「バラルさん、領主やりませんか?」


「は?何を言っている?俺ができるのはお膳立てくらいだ。ユウマ殿がいてこそだ」


「そういうものですか……まあ、いいか」


「はは!まあ、細かいことは俺達に任せて、ユウマ殿はしたいようにすれば良い。ではな!」


そう言って、観客席のほうに走っていった。




「さて、話は終わったな?やるとしよう」


「ええ。お待たせしました、師匠」


「はは!お前にそう呼ばれるのも久しぶりだな。いいか?今回は切れ味は全くないが、頑丈な剣を用意した。気を抜くと、骨の一本や二本は折れるから覚悟しろよ?」


どうやら、刃を潰してある剣を用意していたようだ。

叔父上は、それを俺に投げてきた。

俺は、それをそのまま受け取る。


「わかりました。つまり、いつも通りですね?」


「そういうことだ。行くぞ!」


観客達が見守る中、叔父上との模擬戦が始まった!


叔父上は、剣を叩きつけてくる!

俺は、それを避けずに受け止める!

そのまま、数合打ち合う!


観客席から声が上がる!

俺達は、一度距離をとった。


「ほう?5割の力で行ったんだが、避けずに受け止められるようになったか……嬉しいぜ」


「ええ、おそらくですが……叔父上は、俺がどれだけ成長したのか、知りたいと思ったのでは?」


「まあ、半分は正解だな。では、次は7割で行く。吹っ飛ぶなよ?」


叔父上は、先程より威力を増した剣を叩きつけてくる!

俺は両手持ちに切り替えて、なんとか弾き返す!

叔父上は片手だというのに……相変わらずの馬鹿力だ!

そのまま、数合打ち合っただけなのに、手が痺れてきた。

うーん、通常ではこの辺が限界か……。


「どうした!?ユウマ!?お前の力はそんなものか!?俺を失望させてくれるなよ!?」


「うるせえよ!この馬鹿力が!ちょっと待ってろ!今本気出してやるよ!」


「ほう!言ったな!では、見せてみろ!お前が、何か訓練をしていたのは知っている!」


俺と叔父上は、再び距離をとる。


俺は、オーガジェネラルとの戦いの後に思った。

懐に入れないなら、入れるほど

受け止められないなら、


「ああ、見せてやる!ハァァァァ!!!!」


俺は、魔力を限界まで高める!

次に、気を抜けば暴発しそうになる魔力を抑えつける!

そして、身体中を覆うようにして留める!


「ぐぅ!きつい!だが……ガァァァ!!」


俺は、繊細な魔力コントロールにより、留めることに成功した。

おそらく、これは俺以外には使えないだろう。

莫大な魔力と、魔力コントロールが必要とされるからだ。


俺は、これを魔闘術と名付けた。

魔力を纏うことにより、全ての身体能力をあげることができる。

ちなみに、シノブのヴァンパイアモードを参考にした。

あれも、似たようなものだからだ。


「はは!良い圧だ!それが、お前が目指していた形か!?


「ええ、お待たせしました。まだ完成形ではないんですけどね……。あまり、長くは持たないので……行きます!」


俺は、叔父上に向かって駆け出す!

自分でも驚く速さだ!

体感的には、いつもの3倍はある!

一瞬で、叔父上との距離を詰める!

そして、剣を叩きつける!


「うお!?俺が後ろに下がるだと!?くくく、いいぞ!いいぞ!ユウマ!」


「満足してもらえましたかね?これキツイんですけど」


「いや、まだだ。さて、俺がお前と稽古の時に見せたのは、ここまでだな」


「ええ。それでも、手も足も出ませんでしたけど」


「ああ、基本的な腕も上がっているな。そして、その目に見えるほどの魔力を纏った姿。その状態なら、本気をだしても死ぬことはないか」


「はは、お手柔らかに」


「では、俺も気合を入れるとしよう。ウラァァァァ!!!!」


大気を揺るがすほどの咆哮だ!

とゆうか、威圧感はオーガジェネラルの比じゃない!

これが、叔父上の威圧感か……。

観客席も静まりかえっている。


「行くぞ!ユウマ!死ぬなよ!?」


その巨体とは裏腹に、一瞬で距離を詰め、剣戟を叩きつけてくる!

俺は手と足に魔力を重点的に流し、吹き飛ばぬように受け止める!

だが、それでも吹き飛ばされた。

いや、吹き飛ばされたくらいで、済んだと言うべきか。


「お!今のを耐えるか。楽しいな!だが、そろそろ剣が限界だな。よし!お前の最高の一撃を、俺にぶつけてみろ!!」


「わかりました!行きます!」


俺は残る魔力を剣に集める!

そして、一瞬で間合いを詰め、放つ!


「魔斬剣!!」


手応えはあったはず!どうだ!?

今は砂埃が舞い、何も見えない。



そして、視界が晴れた。

叔父上は、仰向けの状態で倒れていた。


「叔父上!大丈夫ですか!?」


叔父上の肩から、血が流れていた。


「ああ、問題ない。擦り傷だ」


「いや、それはそれでおかしいですけど!?オーガジェネラル切り裂いた技ですよ!?」


「なに!?お前、そんな危ない技を俺に放ったのか!?」


「アンタが本気でこいって言ったんだろうが!!」


すると、拍手が嵐が巻き起こる。


「すげーよ!すげー!」「2人ともスゴイです!!」 「こんなの初めて見たよ!!」


こうして、模擬戦は終わりを迎えた。



▽▽▽▽▽▽



ところ変わって、俺は叔父上の泊まる部屋に来ていた。


「さて、とりあえずは合格点をやろう」


「はい!ありがとうございます!師匠!」


「ああ。で、お前にはこれをやる」


俺はそれを見て、驚く。

目の前に、凄まじい魔力を秘めた剣がある。

おそらくは魔剣と呼ばれる物だろう。


「これは?何故もらえるのですか?」


「いや、ダインが……国王様が、お前にくれるそうだ。俺が、王都を出る前に、国王様が言ったんだよ。この剣を、俺がお前の力を認めた時がきたら、渡してくれと」


「も、もしかして……我が国に伝わる宝剣の1つじゃないでしょうね?」


「お!よくわかったな!今回の褒美らしいぞ?ただ、うるさい奴もいるから、内緒であげるってよ」


俺は言葉を失う。

それほどに、宝剣は貴重だ。

何故なら、

それが、我が国の創設より伝わる宝剣だ。

6本あり、バルムンク、ティルフォング、ミストルティン、デュランダル、カラドボルグ、グラムである。


「こんなのもらえ……いや、有り難く使わせてもらいます。俺のはミストルティンですね。敵を切るたびに、魔力を吸い取るという」


「お?お前にしては珍しく素直だな。そうだ、ミストルティンだ。俺のはデュランダルだな。初代国王が使っていたというやつだな」


「いや、これからエデンに行くのに、剣を新調しようとしていたので。あと、断っても押し付けられそうですし」


ちなみに、俺のミストルティン。

叔父上のデュランダル。

これらの宝剣は、持ち主が死ねば、勝手に王城の宝物庫に帰るらしい。

だから、子孫に引き継いだりはできない。


「はは!お前もダインのことわかってきたな!」


「まあ、そうですね。それに、この剣は多分、俺向きですし」


魔闘術を使うのに、これほど適した剣はないからな。


「ああ、そうだろうな。一応持ち主を選ぶらしいしな。俺のこいつは、とにかく重たい、頑丈、でかいが特徴で、俺向きだしな」


そうなのだ。

気に入らない場合は、宝物庫に帰ってしまうらしい。





こうして、新たな剣ミストルティンを手に入れた俺は、次の日の休息を得て、王都に帰る日を迎えた。


そして、沢山の市民に見送られながら、王都へ向けて出発した。


さて、次はいよいよエデンだな。


何事もなく終わるといいが……。

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