第45話オーガジェネラル襲来!
俺は、考えていた。何故、こんな所にオーガジェネラルがいるのかを。
そして、ある恐ろしい予想にたどり着いた。
もしかしたら、あの領主の息子達が倒したオーガは
つまり今、俺が倒したオーガが
そして、そうすると領主の館でみたオーガにも納得がいく。
オーガにしては、一回り小さかったからだ。
奴らは、子供の血の匂いかなにかを辿り、ここまで来たのではないかと。
だとしたら、怒り狂うのは無理もない。ちぃ!なんてことしやがる!あの馬鹿息子共!
すると、スレイさんが声をかけてきた。
「ユウマ殿、ありがとうございます。もう、大丈夫です。いや、しかし凄いですね。剣の腕前が一流なのに、回復魔法まで一流だなんて……」
「はは、王都ではバーサクヒーラーとか言われてます。では、俺と一緒に門まで下がりましょう」
俺は馬に乗り、スレイさんを後ろに乗せた。
「アロイス!聞いていたな!ここはお前に任せる!いいな!?」
「へい!この数ならもう大丈夫でさあ!行ってくだせえ!」
確かにもう魔物の数も減り、オーガもいないので平気そうだ。
「では、行ってくる!」
俺は、全力で馬を走らせる。
そして門付近で降り、入り口にいるゴブリンとオークを一太刀で斬っていく。
そのまま、門内部に入った。
「では、スレイさんは再びここで指揮をお願いします!」
「わかりました!ご武運を!」
俺は、そのまま駆け出そうとして止まる。
治療が追いついていない患者が、沢山いたからだ。
俺は、冷静に考える。魔力の残りはどうだ?魔斬剣をあと何発いける?
そして、応急処置なら問題ないと判断した。
「皆さん!治療が追いついていない患者を、俺のところに集めてください!エリアヒールを使います!」
事前に回復魔法を使えることは伝えてあるので、問題なく集まった。
俺は集めている間に唱える準備はしていたので、すぐに行使した。
「ここにいる全ての者の傷を癒せ!エリアヒーリング!」
俺がそう唱えると、周りから感嘆の声が聞こえる。
「ああ、ありがたや……」「神の使いか……?」「馬鹿な?範囲神聖術じゃと?」
そして患者達の傷は、少しずつだが塞がっていく。
「これで大丈夫なはずです!後は、お願いします」
俺は結果を確認せずに、それだけを言い、再び走り出す!
すると途中で真っ青な顔をして、取り乱したアテナに出会った。
「団長!い、イージスの馬鹿が!」
「どうした!?落ち着け!すぐに案内しろ!」
「わ、わかった!こっちだよ!」
俺は、アテナの後をついていく。
すると、其処には全身から血を流し、腕が変な方向に曲がった満身創痍のイージスがいた。
俺は、すぐに状況を把握して駆け寄った。
「すみません!代わります!退いてください!!」
俺は回復魔法をかけていた人に退いてもらい、上級魔法のフルリカバリーの準備に入る。
頼む!間に合ってくれ!
こいつを、こんなところで死なせてたまるか!!
今の俺なら、唱えるまで2分でいけるはず!
俺は
「この者の全てを癒したまえ!フルリカバリー!」
すると、まるで逆再生をするかのように傷が癒え、血が止まり、腕が正常の位置に戻っていく。
だがいくら上級回復魔法とはいえ、死んだ人間は生き返らない。
俺は願った!頼む!間に合っててくれ!
そして、俺の願いは届いた。イージスが、眼を開けたのだ。
「あれ?団長?なんでここに?オイラはなにを?なんで団長もアテナさんも泣いてるんですか?」
イージスは、軽く記憶が飛んでいるようだ。
「馬鹿やろー!テメーが心配かけるだからだろうが!団長が来なかったら死んでたぞ!?」
そう言って、アテナはイージスを叩く。
「ちょ!痛い!痛いよアテナさん!」
「うるせー!アタイに心配かけた罰だ!大人しく叩かれてろ!」
俺はそれを微笑ましく見つつも、涙を拭き、すぐに切り替えた。
「では、俺はシノブのところに行く!アテナ、行けるか!?」
アテナは、涙を拭いて答えた。
「ああ!アタイも行くよ!」
すると思い出したのか、イージスが言う。
「あ!そうだ!オイラはオーガジェネラルにやられて……オイラも行きます!」
そう言って立ち上がろうとするが、血が足りていないのだろう……フラフラしている。
「イージス、お前はここにいろ。団長命令だ。傷は癒えても、まだ戦える状態ではない。お前はよくやってくれた。よく、オーガジェネラルを抑えてくれた。後は、俺達にまかせろ!」
「だ、団長……わかりました。足手纏いにはなりたくありません。お気をつけて!」
俺はアテナと共に走り出し、門を抜けてそのまま駆けていく。
そこは、まさに
手足の千切れた死体。胴体が潰れた死体。下半身が潰れた死体。
オークとゴブリンの死体も潰れている。
まさしく、地獄絵図だった。
そんな中を走り抜け、ようやくオーガジェネラルを見つけた俺は絶句した。
そのオーガジェネラルは4メートル近くあり、体格も一回り大きく、両手にそれぞれに大きいメイスを持っていた。
そして何より、その威圧感たるや半端じゃない!
だが全身から血が流れていることに気づき、安心した。
どうやらあの状態のシノブなら、オーガジェネラルとも互角に渡り合えるようだ。
俺がそんなことを思っていると、バラルさんが近づいてきた。
「おお!来てくれたか!助かった!あのお嬢さんだけでは無理だ!」
「バラルさん。無事で良かったです。ええ、俺も行きます。バラルさんは、生き残っている人を頼みます!」
「おう!わかった!任しとけ!」
「はい、お願いします。アテナ!お前は深追いするな!一撃で死ぬ!距離をとりつつ、隙を見て目や口の中を狙え!それ以外は通らん!」
「あいよ!アタイに任しときな!一泡ふかせてやる!」
俺は恐怖を抑え込み、オーガジェネラルに近づいていく。
「団長!イージスさんが!」
「大丈夫だ!間に合った!後は、こいつを倒すだけだ!」
「良かったです!ただ、簡単にはいきませんよ?」
「ふん!俺とお前とならいけるさ。少なくとも叔父上よりは弱いだろ?」
「確かに!そう言われると、いける気がします!では、わたしは左に行きますので、右を頼みます!」
「ああ!任せておけ!」
シノブはそう言うと、一瞬でオーガジェネラルの左側に回り込み、オーガジェネラルの手首に短剣を一閃する。
オーガジェネラルの手首から、血が流れる。
さすがにあの状態のシノブなら、能力が跳ね上がっているのでダメージは通るようだ。
俺も遅れじと走り出し、右側に回り込み、魔力を込めた剣をすれ違い様に一閃する!
すると、オーガジェネラルの足から血が吹き出る!
よし!俺も魔力を纏えばダメージは通る!
だが俺は、一撃でもまともに喰らえば即死なので、慎重に攻める。
俺には避ける技量はあっても、シノブみたいな速さはないので懐には中々飛び込めない。
オーガジェネラルは俺の魔力を纏った剣を警戒したのか、こちらに意識を向けている。
その隙にシノブは懐に入り、眼に見えぬ速さでオーガジェネラルの背中を切り刻む。
オーガジェネラルはダメージは大したことなさそうだが、嫌がっている。
俺はその間もチャンスを待ち、魔力を限界まで溜めていた。
それと同時に、俺は焦っていた。
シノブもあの状態は長くは持たないし、俺の魔力もまだ余裕があるとはいえ無限では無い。
そして何より、日が沈んできたことだ。
シノブはともかく、俺やアテナには暗闇はマズイ。
だから、早く決着をつけなくてはいけない。
何かキッカケさえあれば、すでに血だらけのオーガジェネラルにトドメの一撃を叩き込めるのに!!
俺がそんなことを願ったからだろうか。
突然、オーガジェネラルの眼に矢が突き刺さる!
すると、オーガジェネラルがグオオオオオ!と痛みを堪えるように両手で頭を抑える。
つまり、手ぶらでの無防備の状態だ!
俺はアテナ!良くやった!と思った。
今の今まで、一本の矢も放たなかったのは、これを狙っていたからか!
「シノブ!!行くぞ!!」
「はい!!団長!!」
俺とシノブは、同時に駆け出した。
シノブは跳躍し、脳天目掛け短剣を刺す!
俺は腹の辺りに、魔斬剣を至近距離で水平に放つ!
そしてオーガジェネラルの脳天から血が吹き出し、腹からもドバっと血が流れる。
俺とシノブは、すぐに距離をとる。こいつらはタフだからな。最後まで油断できん。
だがオーガジェネラルはそのまま倒れこみ、ピクリともしなくなった。
それでも、俺とシノブは動かなかった。
「シノブ?いったよな?」
「ええ、いったと思います」
「そうか……やったな!おい!」
「ええ!やりましたね!」
アテナが、駆け寄って来た。
「どうだい!?一泡ふかせてやったろ!?」
「はは!その通りだ!有言実行だ!凄いぞ!アテナ!」
「ええ!さすがのわたしも、あれには驚きましたよ!狙ったんですか?」
「ああ。一本でも射てば、警戒されると思ったからね。団長の魔力が高まった瞬間を狙ったよ」
すると、バラルさんが駆け寄ってくる。
「おーい!オークとゴブリン共が逃げていったぞ!やったのか!?」
「ああ、見ての通りだ。オーガジェネラルは倒した。これで、もう大丈夫なはずだ」
「おお!凄いな!あんたらは!あのオーガジェネラルを倒すとは!こうしちゃおられん!俺は街に戻って、伝えてくる!あんたらはゆっくりくるといい」
そして、バラルさんは門へ向かい走って行った。
俺とシノブとアテナは、顔を見合わせて笑った。
もちろん、たくさんの犠牲者が出た。後始末もまだだ。
でも今だけは、仲間と共に生き残ったことを喜びたい。
俺は、そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます