第46話戦後の話

俺達が門ところに行くと、物凄い歓声が上がった。


「うおー!!すげーな!あんたら!」


「あんな化け物を倒せるなんて!!」


「私達を守ってくれてありがとうございます!!」


俺は、暖かい気持ちになった。


この人達を、守れてよかった……。


俺達は、その歓声に手を振って応える。


だが正直ヘトヘトで、今すぐにも倒れ込みたい気分だった。


なんとか門をくぐり抜けると、バラルさんがやってきた。


「よくやってくれた!この街の英雄達よ!この街を代表して礼を言う!助けてくれて感謝する!!」


すると、また大きな歓声が上がった。


「だが市民の皆さん!もう夜になる!感謝を伝えたい気持ちはわかるが、英雄達は激戦により疲労している!ここは一先ひとまず休ませてあげようじゃないか!」


すると、歓声が止んだ。


「そうだよな……」「あんな戦いだもんね……」「休ませてあげなきゃね!」


「だが、英雄達はここに何日か留まるようだ!なので、後日また場所を設けたいと思う!よろしいか!?」


すると、市民達は大人しく戻って行った。正直助かった……。


しかし、このバラルという男は相当使えるな。


腕も良いし、市民の信頼もあり、今のような気配りもできる。


だからこそ、前領主と息子には煙たがれたのかもしれない。


俺は、小声で話しかける。


「バラルさん、正直助かりました。ありがとうございます」


「いや、俺にはこんなことぐらいしかできん」


「いえ、そんなことはありません。市民の皆さんの反応を見ていればわかります。貴方は、信頼に足る人物だということが」


「……そうか。変わった貴族もいたもんだな。まあ、いい。領主の館に泊まっていけ。あそこなら市民も入ってこないし、今は誰も使ってないしな」


「ええ、では有り難く。それでは、失礼します」


すると、アロイスとイージスが駆け寄ってくる。


「団長!やりやしたね!美味しいところ持っていきやしたね!」


「団長!凄いです!オイラじゃ手も足もでなかったのに……」


「ああ、アロイスもあっちを任せて悪かったな。いや、イージス。それは、ただの相性の問題だ。お前の腕を、俺は信頼している。ただ今回は避けるタイプの俺、シノブ、アテナが相性がよかっただけだ」


「そうだぜ!イージス!多分俺でも同じ結果だったろうよ!」


「団長……アロイスさん。へへ!でもオイラはもっと強くなります!」


そうして、全員で合流して歩き出す。


そこからはさすがに疲れきっていて、誰も喋ることはない。


そしてそのまま全員、残っていた使用人に案内された。


俺は、そのままベッドにダイブ。


一瞬で、意識を失った。





どれくらいの時間が経ったのかわからないが、俺は目を覚ました。


するとシノブがスヤスヤと寝息をたて、隣にいた。


シノブの寝顔は久々なので、まじまじと見てしまう。


こんな可愛い顔しているのに、オーガジェネラルと互角に渡り合うんだからな。


そして、やはりあの力の解放はシノブに負担をかけるなと思った。


俺は急に愛おしくなり、黙って頭を撫でてやる。


「そうだよな。いつもありがとう。シノブがいるおかげで、俺は随分と助けられている。俺は、お前の為に何ができるかね?」


俺は、そろそろヘタレを卒業しなきゃだなと思った。


ただその前に、ご両親に挨拶がしたいと思っていた。


だからある意味、今回のエデンへの護衛任務は渡りに船でもある。


そしてそのまま、頭を撫でているとノックが聞こえた。


「ユウマ殿、バラルだ。疲れているところ悪いが、いいだろうか?」


「ああ、今起きました。大丈夫です。すぐ行きます」


俺はシノブに布団をかけて、部屋を静かに出る。


すると、外は明るくなっていた。どうやら、半日ほど寝ていたらしい。


「すみません。待たせました」


「いや、こちらこそすまん。ちょっと、問題が起きてな」


「どうしたのですか?深刻な顔をして?」


「領主の息子の長男が帰ってきやがった……」


「あー……忘れてました。そうか。生きていたのか……」


「ああ。俺も正直死んだかもと思っていた。だが、悪運が強かったようだ」


「馬鹿だなぁ。そのまま逃げて静かにしてたら、酷いことにならずに済んだのに」


「やっぱり、そうなるか?」


「おそらくは。だって領主の息子が逃げ出したのです。ちなみに今は?」


「領主の館の少し前のところで、市民と兵士と睨み合っている。幸い流血騒ぎまでいっていないが、このままではマズイと思ってこうして来たわけだ」


「ああ、たしかに。亡くなった兵士のご家族からしたら正当な怒りですし。でも、なんで俺が?」


「ああ、アンタなら奴と対等以上に話せるだろ?貴族の子息は、2段階下がった爵位の扱いになるからな」


俺はその話をきいて、そういやそうだったなと。


今までは男爵だったから関係なかったので忘れていたが、俺は我が国の貴族の子息の扱いについて思い出していた。


我が国の貴族の子息の扱いは、親の持つ爵位の2段階下がった爵位扱いになる。


もちろん、実際の権力はない。それ相当ということだ。


まあ、相手が親の権力を恐れて勝手に忖度そんたくすることはあるが。


後は、親が偉いから自分も偉いとか勘違いしてる奴とか。


で、この場合だが……奴らは伯爵の子息だ。ということは準子爵扱いになる。


つまり、俺と同じということだ。


だが違う点がある。奴らはあくまでもそれ相当というだけだ。


だが俺は、国王様に認められただ。


なので、格は俺のが上である。


「ああ、準子爵扱いになるからですか」


「そういうことだ。奴ら、今更来て偉そうにしていやがる!!」


「わかりました。俺に任せてください。いざとなれば、強行手段にでます」


「そうか!本当にすまん!何から何まで世話になる!」


「頭をあげてください。これは貴族の不始末です。ここでは1番爵位が高い俺が、なんとかするべきでしょう」


「はぁ。なんでこうも違うかね。育ての親か?」


「はは……どうでしょう?確かに母上は敬愛する人ですが、俺の親父は酷いもんでしたから」


「ということは、結局そいつ次第ってことか……」


そしてそんな話をしていると、喧騒が聞こえてきた。


さて、穏便に済むといいのだが……。


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