第42話無事に街に着いたが……やれやれ

さて、オーガの生態について話していこう。


まず、オーガは基本的には群れない。


何故なら、単純に強いからだ。


そして咆哮すれば、近くにいる野良のオークやゴブリンが従うからだ。


そしてオーガは単独か、つがいで行動する。


オーガの雄が、良い雌を見つけると勝負を挑む。


そして勝てば、番になる。


そしてお互いを、生涯の伴侶とするらしい。


そして一匹の子供を産み、愛情を注ぐらしい。


なので、とても愛情深い魔物とも言える。


オーガは雑食である。魔物、動物、人間、亜人など、なんでも食べる。


だがお腹が満たされていれば、無闇矢鱈むやみやたらに手は出さない。


オーガは、頭の良い魔物だ。ある程度、人語を理解するらしい。


さらに、強い者と戦うのが好きらしい。


ちなみに、1番やってはいけないことがある。


それはオーガの番だった場合、片方を生き残らせること。


その場合に限り、オーガは無差別な鬼と化す。


咆哮し、魔物を呼び、目につくものすべてを破壊する。


所謂いわゆるスタンピードというやつである。


その場合、オーガ討伐は2級に上がる。


なのでオーガが番だった場合、必ず両方を殺さなくてはならない。


ちなみに、オーガジェネラルは単独で2級。スタンピードで1級。


オーガキングは、単独で1級。スタンピードで特級だ。


ちなみに普通は赤色。ジェネラルは紫。キングは黒となっている。


何故こんな説明をしているかと言うと、俺達がギルドに着いた時、一悶着あったことに起因きいんする。





俺が早朝に起きて仕事を終わらせたことで、なんとか夜が来る前に街にたどり着いた。

もちろん、良い馬なのが1番の理由だ。

速さはそこまでではないが、疲れ知らずの馬を選んだ。


「さて、なんとか夜には着いたな」


「ええ、そうですな。どうしやす?貴族用を通れば早いですが」


「……いや、止めておこう。この街は今、跡継ぎで混乱しているからな。下手に刺激を与えたら面倒だ。なにより、ここの領主が死んだ戦争の戦功者は俺とシノブだしな」


「そういえば、そんなこと言ってましたな。了解です。じゃあ、普通にいきますかね」


ちなみにすぐ出る予定なので、他のメンバーに馬を預けて、俺とアロイスだけで街に入る。


俺達は一般の門に並び、問題なく街に入ることができた。


そして街の中に入ると、何やらざわついていた。


俺達は嫌な予感がしつつも、黙って冒険者ギルドへ向かった。


そして扉を開ける前から、中で言い争いをしているのが聞こえる。


おい!どうすんだ!とか。でも止める権利もないですし!とか。もう来ちゃいますよ!?とか。


「なあ、俺ら帰ろうか?」


「団長。気持ちはわかりますが、入りましょうや」


俺は、諦めて中に入った。


ギルドの中は、まさしく阿鼻叫喚あびきょうかんだった。


職員らしき人達が喚いたり、泣いてたりしている。


「あのー!!指名依頼を受けて王都から来た者なのですが!!」


俺が大声で言うと、さっきまでの喧騒けんそうが嘘のように静かになった。


すると、我に返った1人の男性職員が近づいてきた。


「これはこれは。わざわざ、王都から来ていただきありがとうございます。で、あのですね……場所を変えましょう。どうぞ、こちらへ」


そうして訳もわからないまま、ある部屋までだどり着いた。


俺は、王都でこのドラゴンの紋章みたなと思い、聞いてみた。。


「ここってギルドマスターの部屋じゃ……?」


「さすがは、指名依頼が入るほどの冒険者ですね。王都で?」


「ええ、何度かお邪魔してますね」


「なら、慣れてて大丈夫ですね。ギルドマスター、王都から依頼を受けた方がいらっしゃいました」


「ああ、ご苦労様。入って良いですよ」


俺はギルドマスターが会うとは、余程のことだと思いながら覚悟して入室した。


ちなみに、案内してくれた人は戻っていった。


そして中に入ると、40歳くらいの女性が姿勢を正して立っていた。


「この度は、申し訳ありません。とりあえず、至急話を聞いてもらってもよろしいでしょうか?」


「え、ええ。構いませんが」


俺達は言われるがまま、対面のソファーに座った。


「では、どこから話しましょうか……まずは確認ですね。貴方は王都の依頼で、オーガ討伐に来た冒険者で間違いありませんか?」


「はい、間違いありません。私の名はユウマ。4級の冒険者です。こちらにいるのがアロイス。3級の冒険者です。あと此処にはいませんが、4級が1人、3級が2人います」


「そんな優秀な方にわざわざ来てもらって申し訳ないのですが、依頼はなかったことにしてよろしいでしょうか?もちろん全部とはいきませんが、半分くらいの報酬と貢献度は差し上げます」


「え!?どういうことですか!?」


俺とアロイスは驚いた。


それほど、依頼の取り下げとは珍しいことだったからだ。


「ええ、きちんと説明を致します。結論から申し上げますと、領主様の身内の方々が、多大な犠牲を払い討伐なさってしまったです」


俺は頭をフル回転させて考え、ある嫌な予想にたどり着いた。


「もしかして、後継者争いに関係していますか?」


「……さすがはミストル準子爵様。噂通りですね。賢く、物腰柔らかで、良い貴族だと。依頼を受けた貴族が、貴方だったのが不幸中の幸いでした」


「私のことをご存知で?そしてどういう意味ですか?」


「それは、商人達から聞きました。最近、王都で頭角を現した貴族がいると。まだ若いのにしっかりしていて、貴族特有の傲慢さはなく、これからが楽しみな方だと。そして意味ですが、先程のギルド内の様子を見ましたよね?」


「ええ、なにやら騒いでいましたね」


「ええ。あれは貴族である貴方が、お怒りになると思った職員が騒いでいたのです。噂は、あくまでも噂ですから。普通の貴族でしたら、時間をかけて街にたどり着いて、依頼が取り下げなんてことになったら激昂げきこうしますから。ギルド自体は権力者には屈しませんが、一般の職員達が恐れるのは無理もありません」


「なるほど、そういうことでしたか。まあ、ショックではありますが怒りはしません。一応、半分の報酬と貢献度はもらえますし。ただ、話せる範囲内でいいので聞いてもいいですか?」


「ありがとうございます。そう言って頂けると、職員一同安心です。ええ、話せる範囲内でよろしければ」


そうして、ギルドマスターは語り出した。


領主様には、母親の違う2人の息子がいること。後は全て娘だということ。


そして息子2人も、その母親同士も、仲が悪いこと。


なので、どちらか継ぐかで揉めていること。


ちなみにどちらも、父親に似て、傲慢で好色な人物であること。


長兄の名はガラン。大きい身体が特徴の30歳。


中々の腕前で、冒険者ランクに例えると5級相当はあるとのこと。


次兄の名はセイン。兄とは正反対で、華奢な身体が特徴の24歳。


魔法を使えるらしく、こちらも5級相当はあるとのこと。


そしてギルドが、商人からの目撃情報で依頼を受けたこと。


この街には、最高で5級までの冒険者しかいないこと。


一応2段階までは受けられるので、5級の何名かで受けてもいいがリスクが高すぎること。


なので、実力者が揃っている王都に依頼を回したこと。


そして何処からか聞きつけた2人が、自分の子飼いの家臣を連れて討伐しに行ったこと。


それは民のためではなく、どちらが跡継ぎに相応しいか示すためだけの行動なこと。


そして双方互いに犠牲をだしながらも、なんとか討伐したこと。


そして今は、どちらが多くダメージを与えたかで揉めていることなどを話してくれた。


「それは・・・ご苦労様です。そして、同じ貴族として申し訳なく思います」


「そう言って頂けると助かります。これから、どうなさいますか?」


「そうですね……じゃあ、とりあえず俺を3級に上げてもらっていいですか?」


俺が、特に機嫌が悪くないのはこれが原因である。


さすがの俺も8、9時間かけて来て、依頼の取り下げとなったら普通は苛つく。


だが俺は、半分の貢献度でも3級に上がることはわかっていたから、特に何も言わなかった。


「ええ。ではこちらで処理致しますので、少々お待ちください」


「はい、お願いします」


そうして秘書に伝えると、秘書の方は部屋から出ていった。


「あの、一応確認なんですが……番はいなかったのですか?」


「ええ。最初の目撃情報にも、単独とありましたから。討伐に参加した兵士にも、確認しました」


「なら、良かったです」


そうして雑談をして待っていると、秘書の方が来た。


「では、これが3級の紋章になります。これで貴方は、上級冒険者です。おめでとうございます。これからも、よろしくお願いします」


「はい、ありがとうございます。これからも力無き人々のために、続けていきたいと思います」


そうして俺達は来た道を戻り、ギルドを出て行こうとした時、それは起きた。


扉がバーン!と開いて、入ってきた人が叫んだ。


「た、大変だー!!この街に大量の魔物が迫ってきている!!」


はぁ、やれやれ……このまま帰れそうにはないな。
























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