第41話指定依頼を受けて王都を出発する

あの突然の突撃訪問から、2週間程経った日のこと。


俺は予定があるので、いつもより早く起きて仕事をしていた。


「あー!男爵の仕事に慣れたと思ったらこれだもんなー!」


「まあまあ、団長。わかっていたことじゃないですか」


「いや、そうだけどな。でも、あと20日でエデンに行かなきゃならんから急がないと。これは、アロイスに残すわけにはいかんし」


俺が今やっている仕事は、治安維持部隊に関することだ。


男爵の頃はただの一部だけの地域の担当だったのが、準子爵になったことで3倍の地域に増えた。


王都だけあって、めちゃくちゃ広いから大変だ。


まずは、東西南北の門がある。


そして貴族街、平民街、遊楽街、商店街、貧困街がある。


あとは外周の警備、街道の整備など。


主に治安維持部隊は下級貴族である、子爵から騎士爵の仕事だ。


俺は準子爵なので2番目に偉くなったので、それはもう大変だ。


ましてや子爵になったら、統括者の1人になるからもっと大変だ。


ああ、冒険者稼業してたころが懐かしい……。


まあ、仕方ないので頑張りますか!エリカの為にも!自分の為にも!


そうして、書類と格闘してから2時間ほど経ったころ、ようやくひと段落した。


「はぁー!疲れた!」


「団長、お疲れ様です。どうぞ」


「お、喉渇いてたんだ。ありがとな」


「いえいえ。じゃあ、行きますかー?」


「ああ、次は冒険者ギルドだな。忙しいが、急がないとな」


「ええ、後少しで3級ですから。まあ、私は2級になりそうですけど」


「お前の実力なら問題ないだろ?叔父上も太鼓判押してたぞ?俺は見てないが、奥の手を使った状態で模擬戦したんだろ?」


「ええ、一度本気でかかってこいと言われまして。まあ、身体に負担がかかるので半分くらいの解放でしたけど。まあ、たとえ全力でやっても勝てそうにないですねー」


「まあ、一対一で勝てる奴はこの辺にはいないんじゃないか?うちの国には特級もいないしな」


「ですよねー。まだ余力がありそうでしたし。団長の奥の手を使えばどうなんですか?」


「あれな……魔力による身体強化及び、斬れ味強化か。正直完成すれば、良いところまでいけるとは思う」


「おおー、大きくでましたね。で、完成の目処は立ったんですか?」


「おい、わかってて聞いてるな?まだだよ!魔力制御が難しすぎる」


「ふふ、次の剣聖大会までに完成すると良いですね?」


「そうか。俺がもうすぐ21になるから、あと2年か。そうだな、それまでに完成させたいな」


そうして、俺達は予定通りに冒険者ギルドへ向かった。


俺とイージスとアテナは今、時間を見つけては冒険者稼業をしている。


何故なら、ホムラの護衛としてエデンに向かうからだ。


バランスを考えて、アテナには護衛にと頼みこんだ。


というか、俺はアテナを家臣に加えようとしている。


戦争の報奨金も出たし、準子爵になったし。


アロイスとイージスも家臣に加えたから、あとはアテナだけだ。


ただ本人は嫌がっている……とは違うか。


アタシみたいのが無理だよ!という感じだ。


でも母上とも仲良いみたいだし、居てくれたら助かるんだけどな。


まあ、とりあえず今回は了承してくれた。


そうこう考えているうちに、冒険者ギルドへたどり着いた。


すると、声をかけられた。


「よう、ユウマ殿にシノブ殿。また会ったな」


「おお、ゼノスか。此間は依頼手伝ってくれてありがとな」


「なに、お安い御用だ。なにやら急いでランクを上げたいんだろう?」


「ああ。詳しい理由は言えないが、少し出張をしなくてはいけなくてな」


「まあ、ユウマ殿も準子爵になったこと仕事の幅が広がったのだろう。今日は手伝ってあげられないが、また人がいなければお手伝いさせてもらおう」


「ああ、今日は人いるから大丈夫だ。ありがとう。また機会があれば、一緒に依頼受けような」


「おう、いいぞ!では、失礼する」


そして、ゼノスはギルドから出て行った。


「うーん。ゼノスさんって不思議な人ですよね?」


「ん?どの辺がだ?」


「んー……なんて言っていいのか……。団長に似ている?」


「なんじゃそりゃ?俺には全くわからないのだ……。どの辺がだ?」


「いえ、気のせいですかね。んーなんでしょう?」


「なんじゃそりゃ!まあ、俺も親近感を感じているが」


なんだか、昔から知っているような気がするんだよな……まあ、気のせいだろう。


「あれ、そうなんですか?……すみません、行きましょう」


俺達は、予約をしていた部屋に入った。


そこには、ホムラを除くメンバーが揃っていた。


ちなみにホムラは、公爵令嬢として大使に任命されたので、今はひたすらお稽古に励んでるようだ。


この間、もうワタクシ嫌ですわ!魔法バンバン撃ちたいですわ!と駄々をこねていた。


なので一度だけ連れてってやったら、満足そうに帰ったけど。


「団長、これで揃いやしたね」


「ああ、待たせたな。では行くか」


俺達7人はギルドを出て、王都を出発した。


ちなみにイージスは4級に、アテナは3級に、アロイスは3級に上がっている。


このメンバーだと、2級まで受けられるからな。


ちなみに、今回は指名依頼というやつだ。


ギルドが、直接冒険者に依頼をする形だ。


このメンバーなら、大概のことは平気だからと任された。


俺も執務室の机に座ってばかりじゃ、まいってしまうので受けることにした。


それに、近隣の住民の不安を取り除いてあげたいしな。


今回は魔の森から迷い込んだと見られる、3級のオーガの討伐だ。


準子爵になって何が良かったというと、良い馬を人数分揃えられるようになったことだ。


これがあると、今までは割に合わず行かなかった街に行けたりする。


今回行くのは、北西にある街ガーランド。


一応、イージスの故郷がある地域だな。


ちょっと距離があるが、時間があれば寄りたいところだ。


だが、そこには今治めるべき領主がいない。


何故なら前回の戦争で亡くなったザガン中将、いやザガン伯爵が治めていたからだ。


どうやら、跡継ぎを決めていなかったようだ。


なので、誰が継ぐかで身内で揉めているらしい。


まあ、自分が死ぬとは微塵も思っていなかったのだろう。


どこの貴族も変わらないな。民にとっては、圧政さえ敷かなきゃ誰でもいいのにな。


まあ、今回はそこは関係ないから、あまり関わらずに行く予定だ。


ただ、ガーランドにはオーガを倒せるような冒険者はおらず、王都まで依頼がきたということだ。


そもそも4級を超える冒険者は、全体の10%ぐらいと言われているしな。


さて、何事もなく終わってくれればいいが。





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