第134話 聖獣様の守りしもの
『つまりあの壁はそういうことだったのか。なるほどのう』
今もまだ時折壁に何かがぶつかる音と、ちかちか輝く光石の輝きが見える。
だけどそれも徐々に治まってきているようだ。
「今度は僕から質問して良いですか?」
『言わなくてもわかっておる。我がお主を呼び出した理由と、何故こんな所で倒れておったのか……じゃろ?』
「聞かせてくれますよね?」
『無論じゃ』
聖獣様は頷くと僕を呼び出した理由から語り始めた。
『お主も薄々気がついておるかもしれんが、最近この島の中に溜まっていた魔素が急速に薄れて来てな』
確かにこの島に来た当初はあれだけ島を覆っていた魔素の靄が最近はかなり薄くなっていた。
元々この島の中では魔素濃度の低い西側の拠点付近では星見の塔に登らずとも綺麗な夜空が見えるほどである。
『一体何が起こっているのか我は気になって西へ調査に向かうことにしたのだが。その前にお主には我の居ぬ間のことを頼もうと思っておった』
「でも僕が着く前に聖獣様は西へ向かったのですね?」
『うむ。突然西の魔物どもが今までに見たことが無いほど混乱して暴れ出してな。このままでは渓谷を通って村までやってくる可能性が出て来たのだ』
そしてとりあえずの応急処置として聖獣様は渓谷の左右の崖を崩すことで村への通り道を塞ごうとしたらしい。
僕たちがここへたどり着いた後に激しい破砕音と共に崩されたのがそれだ。
『結局僅かばかりの足止めにしかならんかったがな。しかしその時はあれほどの大群が押し寄せてくるとは思っておらなんだのだから仕方があるまい』
一通り崖で渓谷を埋め、それで一安心と聖獣様が安堵した時だった。
魔物たちが突然ある方向へ向かって走り始めたのだという。
『我はその動きが気になってな。もしかすると昨今の異変の原因がそこにあるのではと魔物たちの流れに紛れ込んだのだ』
やがて魔物の流れはある一点を中心として、その周りをぐるぐる回り始めた。
その中心に寄りたいけど寄れない。
そんな動きに見えたのだという。
『我はそんな魔物たちの流れから抜け出すと、その中心に何があるのか確認することにした。勿論危険を感じたときはすぐさま逃げるつもりでだ』
「中心には何があったんですか?」
僕の質問に聖獣様はなぜか馬首を自分の背に回し。
『これじゃ』
背中で何かを咥えると、それを僕の目の前にぶら下げて見せたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます