第132話 禁断の力
迫り来る魔物の音にかき消され、聞こえるはずのないその音は確かに俺の耳に届いた。
「何の音だ」
気になった僕は視線を地面に向けた。
「これは……そうだ、僕にはまだこれがあった」
「それって、拠点を出る前にギルガスさんに貰った杖ですか?」
「ああ、こうなったら一か八かあの機能を使ってみるよ」
僕は優しくエストリアの肩を両手で押して離すと地面に落ちた杖を手にする。
クラフト
ギルガスが黒魔晶石と制魔石、そしてミスリルを使って作り上げたそれを強く握りしめる。
「エストリア。危険だから聖獣様を連れて離れてくれないか?」
「嫌です」
エストリアは僕を強く見つめ返してきっぱりと拒否を口にした。
その瞳に浮ぶ決意の色を見て僕は思わず苦笑してしまう。
「即答だね」
「言いましたでしょう? 私は最後まで貴方と一緒にいると」
「そうだった。それじゃそこで僕を見守っていてくれ。君はきっと僕にとって幸運の女神だから」
そう言って僕は向かい来る魔物の群れに向き直る。
頭上をいくつかの魔法が飛んでいくがわざと外しているのか狙いが定まらないのか直撃することはなかった。
『お主……いったい何をするつもりだ』
「今からドワーフ族最高の職人が作ったこのクラフト
『壁だと? そんなものは何の役にも立たないと――』
「わかってます。ただの石の壁じゃあの魔法は防げない。だったらその魔法も受け止められる壁を作るまで!!」
僕は数歩前に歩み出るとクラフト
そして一度――二度、ギルガスに禁止されたその機能を使うためボタンを押した。
「ぐっ」
拠点でギルガスが試して見せたときにも感じたが、それよりも強い何かが杖を中心にして渦巻くのを感じる。
『なっ……なんだこのとんでもない魔素はっ』
そうか、これが魔素なのか。
本来であれば魔素濃度のかなり濃い場所ですら人はそれを感じることは出来ない。
なのにそんな人である僕ですら感じられる魔素とは一体どれほどのものなのだろうか。
こぶし大の黒魔晶石に込められた魔素の恐るべき濃さに僕の額に汗が浮ぶ。
本当にこのままクラフト
そんな心配が一瞬心をよぎる。
だが今、この危機を乗り越えられるとすればこれしか方法は無い。
だから使う。
大丈夫だ。
ギルガスが。
僕が知る限り世界最高の技術を持つドワーフが作り上げた杖を僕は信じる。
「レスト様っ!」
「エストリア。帰ったらまた星見の塔で星見会をしような」
そして僕には幸運の女神が付いている。
失敗する訳が無い。
「大丈夫。魔法の攻撃を無効化する方法はクレイジア学園で学んだじゃないか。ただそれが現実的じゃ無かっただけで……でも僕なら……クラフトスキルなら可能のはずっ」
僕は自分に強く語りかける様にそう呟く。
そして頭の中で作り上げるものに必要な全てを汲み上げてから魔素が渦巻く杖を思いっきり振り下ろしながら叫んだ。
「クラフト
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 告 知 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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それまではニコニコ漫画、ピッコマなどで連載中のコミカライズ版をお楽しみ下さいませ。
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それでは『放逐貴族』『孤島開拓記』共々よろしくおねがいいたします。
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