第101話 未来への布石を打とう!
キエダとトアリウトを連れ、僕は畑の建設予定地までやってきた。
足首くらいまで育った雑草。
それがクラフトスキルで耕した範囲を綺麗に埋め尽くしている。
「それじゃあ早速耕し治すよ」
「レスト様のあの技は畑も耕せるのか」
僕の言葉に驚くトアリウト。
そういえば彼にはまだクラフトスキルのそういった使い方は見せていなかった。
「応用次第でね。まぁ見てて」
目標は最初に作った畑。
今は緑に覆われたその範囲に向けて僕は素材化を発動する。
「レスト様、さすがですぞ」
「それで、こんな四角い穴を作ってどうするのだ?」
いつもの様に大袈裟に誉めてくれるキエダ。
その横でトアリウトは興味深げに僕が作った穴を見ながら尋ねてきた。
「今僕の収納の中には今取り込んだ土と草が入ってるんだけど」
僕は手のひらを穴に向けながら少しだけ目を瞑る。
そして脳内で収納に取り入れた素材を組み合わせ。
「クラフト!」
草を混ぜ合わせた土を穴の中にクラフトして見せる。
「ほう。これは楽で良いな」
「でしょう? この調子で畑をとりあえずあと二つは作ろうと思ってね」
本当はもっと作りたいのだが、いかんせん現在の拠点は手狭である。
それに複数の畑を管理するだけの人手も無い。
「たしかキャロリアとジャ芋と小麦を作るのだったな?」
「他にも持って来た種や球根は全て植えてみるつもりだよ」
「全てと言ってもこの広さでは一つ一つ作付け出来る量がかなり少なくなるだろう?」
もちろん僕も将来的に作物を自給で賄えるくらいの量を作りたいと思ってはいる。
だけど今回作る畑の大きさでは到底それは不可能だ。
たとえ今の拠点中を全て畑にしても一つの品種に限定したとしても無理である。
ならば僕たちがまずやるべきことは、この島で何が育ち、何が育たないかを見定めることだ。
そのために作った畑のうち二つはその調査のために使おうと決めたのである。
といっても自分たちの食料もおろそかに出来ない。
なので一番大きな畑には小麦の種を蒔く。
寒くなる前に刈り取ればこの島の気候であれば十分間に合うはずだ。
小麦がこの土地で育つことは調査団の報告書で明らかになっている。
先達の残した知恵ほどありがたいものは無い。
それから残りの
もちろん一つの畑に様々なものを植えるとなればぎっちり詰め込む訳にもいかない。
そもそも畑の面積から考えれば収穫できる量はかなり減ってしまうだろう。
しかしそれは来年への布石となる。
何が自給できて何が自給できないのかを調べるのは、国家運営にとって必要不可欠で重要な情報だ。
それを確かめるために一年使う。
今後何十年も続く国のためにもだ。
この島の風土に合った作物がわかれば、来年はそれを中心に育てて余剰分は輸出に回す。
逆に合わない作物があれば輸出で得た外貨で輸入する。
そのためには島外との交易路を整備する必要はあるが、僕たちなら何とかなるだろう。
いや、なんとかするのだ。
「なるほどな。レスト様はそこまで考えていたのか」
僕の話を聞いてトアリウトは感心したようにそう言った。
だがその直後、彼の口から続いた言葉に僕とキエダの二人は驚愕することになる。
「だがどうして一年も待つ必要がある? 農作物などひと月もあれば収穫出来るだろう?」
「えっ」
「は?」
僕とキエダは一瞬トアリウトがなんと言ったのかわからずキョトンと彼の顔を見た。
いや、何を言ったのかはわかっている。
ただ意味がわからなかった。
「どうした二人とも」
「えっと……今ひと月もあれば収穫出来るとかなんとか聞こえた気がしたんだけど」
「私の聞き間違いかと思っていましたが、レスト様もそう聞こえたのですな」
キエダがホッとした様に呟いたのが耳に入る。
彼も最近歳だから耳が遠くなってきたとか偶にぼやいているのを僕は知っている。
といっても元々地獄耳な彼が少し聞こえが悪くなったとしても、まだ普通の人よりよっぽど耳が良いのだが。
「やっぱりキエダにもそう聞こえたんだ。ということは」
「はい。聞き間違いでは無かったようですな」
だが聞き間違いじゃなかったということは――
「種を植えさえすれば、大体どんな作物でもひと月くらいで収穫出来るだろ?」
驚いている僕たちの反応が心底予想外だと言わんばかりにトアリウトが再度同じことを言った。
ということは彼は本気で作物がひと月で収穫出来ると思っているのだ。
「トアリウトさんはウデラウ村で畑も耕しているんだよね?」
「ああ。コーカ鳥の糞を肥料にするとよく育つからな」
そのことはコリトコから聞いて知っていた。
だからここでも鶏舎の横にコーカ鳥の糞を保存する肥料小屋を先日クラフトしたのだし。
「トアリウトさん」
「なんだ?」
「普通、作物というのは最低でも数ヶ月。者によっては一年以上掛かってやっと収穫出来るものなんだよ?」
それに対するトアリウトの反応はあからさまに「何を言っているんだ?」といったもので。
もしかして僕の方が間違っているのかと思ってしまう。
「そうなのか?」
僕の言っていることが本当なのかとトアリウトがキエダに確認するように問い掛けた。
それに対しキエダは一呼吸置いて口を開く。
「普通はレスト様が仰った通りですぞ」
「そうなのか。しかし実際村では――」
キエダの返答に反論をしようとしたトアリウトをキエダは手で制する。
そして僕とトアリウトの二人を交互に見てから。
「これは私の推論なのですが、もしかするとそれはレッサーエルフの
キエダは僕が考えもしていなかった推論を口にしたのだった。
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