第47話 泉に橋を架けよう!
まず最初に橋桁の土台になる石を泉の中に沈めていく。
聖獣様の指示に従い、泉の中で一番対岸との間が狭まっている辺りの岸に移動してまっすぐ直線方向。
対岸に向けて等間隔に沈めた土台の上に今度は橋をクラフトする。
クラフトの力が届く範囲まで作っては橋の上を歩きクラフトするということを三回ほど繰り返す。
ちなみに橋用には、先に加工しておいた木材を使っている。
ギフトは神の力と呼ばれるように仕組みはよくわからないが、僕のクラフトスキルは、クラフトするものに合ったように自動的に素材が最適化されるのだ。
なので橋をクラフトしようとすれば自動的に橋に合うようにしっかりと腐りにくいような作りのものが出来上がる。
今回はそれに加え
キエダから聞いた
石製の橋に比べればそれでも耐久度は下がるが、神秘的な泉に架かる橋としては美しい朱に彩られた木製の橋はたしかに映える。
僕たちはやっと出来上がった橋を少し離れた所から眺めていた。
「最初真っ赤な橋がいいと聖獣様に言われたときは自然な風景に合わないんじゃないかなって思ったけど……」
「青と緑と赤のコントラストが神秘さを引き立ててますな」
『我の言ったとおりだったであろう?』
自慢気に鼻を鳴らす聖獣様だったが、今回ばかりは同意せざるを得ない。
聖獣様の『なぜ赤が映えると思ったのか』という長話を聞き流しつつ、僕たちがその美しい風景を眺めている時だった。
「レスト様ぁ~」
村の方角から少し幼い子どもの声が聞こえてきた。
僕たちが振り返ると、村へ繋がる道の向こうからコリトコが何やら棒のようなものを肩に担ぎながらこちらに向かって走りながら大きく手を降っていた。
その後ろにはテリーヌと数人の子どもたちが歩いてくるのが見える。
「わわっ。本当に橋が出来てる!」
近くまで走り寄ってきたコリトコが、泉に架かる橋を見て驚きの声を上げた。
続いて他の子どもたちもやってくると、コリトコと同じように橋を見てはしゃぎ出し、手にしていた荷物を地面に置くと橋に向けて走っていく。
「気をつけてね」
「「「はーい」」」
遅れてやってきたテリーヌが子どもたちに声をかける。
どうやら彼女は宴の準備の間、子供の世話を任されたらしい。
いや、むしろテリーヌが自ら申し出たに違いない。
「子守りかい?」
「子どもたちが暇そうにしてたので、村長様に私が相手をしましょうかと」
「テリーヌらしいですな」
キエダはそう言うと、地面に子どもたちがおいていった荷物を見てこう続けた。
「ところでこの荷物からすると、子どもたちは釣りをしにやってきたのですかな?」
「ええ。ただ単に泉に行くだけではつまらないとメリメちゃんが言い出して」
「メリメ?」
「コリトコの妹さんですわ。ほら、あの子どもたちの中で一番小さな女の子」
僕はテリーヌが指差した方へ顔を向けた。
橋の上を五人の子どもたちが走り回ったり、欄干から湖を覗き込んだりしている姿が見える。
その中で一人の女の子が、少し年上っぽい男の子と何やら話をしている姿があった。
「あの子がコリトコの妹か」
「ええ。コリトコくんも手を焼くほどやんちゃな妹さんらしいですわ」
僕は彼らが泉に落ちないように見ていてくれとキエダたちに告げると、地面に置かれた釣り竿を一本手に取る。
作りとしてはとても簡素で、枝葉を切り取った棒になにかの糸で作った釣り糸と釣り針があるだけのもので。
王都で売っていた立派な釣り竿とは比べ物にならなかった。
「釣り針は石で作ってあるのかな? 器用なもんだ」
僕はしげしげとそれを一通り見回してから地面に戻す。
しかしウキも無いこんな釣り竿でもこの泉の魚は釣れるというのだろうか。
僕は泉のそばまで歩いていくとその中を覗き込む。
透明度がかなり高いおかげで、畔の近くは水底が見える。
そしてその水の中にはそれなりの魚影が確認できた。
「聖獣様。この泉ってどんな魚が釣れるんです?」
『どんなと言われても我には魚の名などわからぬが、大きいものならお主と同じくらいの魚も居たはずだ』
「そんなに大きい魚が居るんですか?」
『うむ。泉の中央辺りを根城にしていたはずだ』
そんな巨大魚がこの泉には居るのか。
僕はその根城があるという中央に目を向ける。
透明度が高い聖なる泉ではあるが、流石にその辺りはかなり水深が深いようでその魚影を見ることは出来ない。
「主釣りか」
「レスト様。主釣りに挑戦してみますか?」
「それも面白そうだけど、先にリロナンテのところまでの道を作るのが先だよ」
今日の予定は橋だけではない。
それに昨日からずっと放置したままの馬車とリナロンテもここまで連れてきてあげないといけない。
僕は子どもたちのことをテリーヌと聖獣様に任せその場を離れる。
そしてキエダと共に子どもたちが遊び回る橋を越え、その先の森の前まで来るとおもむろに両手を前に突き出し。
「クラフト!」
森の中に道を作りながらリナロンテのもとに向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます