第26話 高架道路をクラフトしよう!
「クラフト!」
深い森の中を一直線に伸びた道。
それは上から見ると一直線に見えるが、実は少し傾斜がついた坂道になっていて、段々と地上から浮いていくように見える。
もちろん本当に空中に浮いているわけではなく、何本もの柱がその下を支えた形だ。
「次に屋根は格子状にして陽の光や星明かりが入るようにして、間にガラスをクラフト! うん、いい感じだ」
僕は今、そんな道の先。
すでに周りの木々より少し高い位置に中継拠点を建築していた。
どうしてそういう作りになったのかというと、例の僕が作成した地図を元にキエダたちと最終計画を立てていた時のことである。
最初僕は一直線に森を真っ二つにする道を作る予定だった。
だけどそのことを地図を指差しながら皆に話すとすぐに反対意見が出たのだ。
それもフェイルとコリトコという予想外の二人からだった。
「それじゃあ森の動物達が困っちゃうよ」
「道のせいで右と左がが離れ離れになるです。そんなの駄目なのです」
コリトコが言うには、森の中に住む獣や魔物は、それぞれ住処と餌場、他にも色々広い範囲を動いて生活しているらしい。
なのでその行動範囲のど真ん中に壁が出来てしまうと、かなり生態系に影響が出るというのだ。
一方フェイルはどうやら昔、突然の川の氾濫で分断されてしまったどこかの国の物語を読んだことがあるらしく、僕が森の真ん中を突っ切る道を描いた地図を見てその話を思い出したらしい。
「確かに二人の言うことも一理ありますな」
「だったらどうすればいいって言うんだ? 馬車が通れる安全な道を作ろうと思ったらこうするしか無いと僕は思ったんだけど」
「そうですな。それならこうしてはどうでしょう?」
僕の問いかけにキエダが提案したのが『空中に道を作る』というものだった。
まっすぐな道を作るより素材もかなり使うことになるし、何よりそんな道を僕は王都ですら見たことはなかった。
なので本番前に昨夜、拠点で何種類か模型をクラフトしてみた。
その時にキエダから参考になればと手渡されたのが『世界の橋 百景』という本で。
どうしてそんなものを彼が持っているのか尋ねると、一言『趣味です』と返されそれ以上は何も聞けなかった。
そして夜遅くまでキエダの監修を受けながら作り上げた橋脚が今僕たちの足元を支えている。
「私の趣味がレスト様のお役に立てて嬉しいですぞ。あれは王都に住む我が同士が自費出版したものでしてな。私も少し手伝わさせていただいたのですが、それはそれは楽しい作業でした。今度レスト様ともじっくり橋について語り合いたいですな」
いつもはそんなに話をしないキエダの饒舌な『橋語り』を思い出して少しげんなりしながら、僕は予定通り中継拠点の中に建物をクラフトしていく。
といっても高さも広さもそれほどない場所なので基本平屋で、泊まれる人数も十人ほどが限界の小さな小屋しか作れない。
その横に馬車置き場と簡易厩舎を作り、屋根から雨水を引き込むための仕組みを作ればとりあえず完成だ。
「ふぅ。まぁこんなもんかな」
「領主様ぁー! ご飯できたよー!」
「ああ。わかった今行く」
中継拠点に作り忘れたものはないか確認していた僕を、コリトコが呼ぶ。
僕が拠点づくりをしている間、テリーヌが馬車の横にクラフトした簡易キッチンで、少し遅めの昼食の準備をしていた。
コリトコはそれの手伝いをしていたはずだ。
「レスト様、この先の様子ですが」
「それは食事をしながら聞くことにするよ」
「わかりました。これ以上待たせるとコリトコどのが可愛そうですからな」
僕らはこちらを見ながら「はやくー!」と手を振っているコリトコに苦笑する。
「今いくって!」
そして、そんなコリトコに向けて大きく手を振り返すと、キエダと二人で馬車に向けて歩き出すのだった。
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