第17話 畑作りの後は皆でご飯を食べよう!
「それじゃあいっくよー!!」
「はーい」
「お願いしますレスト様」
「……了解……」
僕は三方に離れた皆に大きく手を上げて宣言すると、そのまま手のひらを地面に向けて素材化を発動させた。
ぼこぼこぼこっ。
僕の足下から三方で待つ家臣たちに向けて人ひとり分ぐらいの深さの地面が次々と消えていく。
「よし、次っ」
ちょうど三方の皆と僕を結んだ四角形に掘られた穴に向けて、今度はクラフトを使い素材を混ぜ合わせた新しい土を入れていく。
適度な栄養を含ませ、空気と水分も混じり合わせた畑用の最高の土だ。
「一つ目完成!」
「見事ですレスト様」
「もう少し離れたところで止めて下さいよぅ。私、穴に落ちちゃうかとおもっちゃったですよ」
「良い土……とても暖かい」
今僕は、拠点の端に畑を作っている。
ここには元々調査団が長期滞在するためなのか畑を作っていたらしく、農機具の残骸がうち捨てられていた。
ぼくはせっかくなので、使えそうな農機具は素材化の後にクラフトでピカピカの新品に作り直したあと、ゴミを皆で協力して退けてから畑を新しくクラフトすることにしたのだ。
皆には作る予定の畑が真四角になるように、目印として三方に立って貰っていたが、おかげで綺麗な四角い畑が出来上がったのである。
「さぁ次に行くよ」
「ええー。少し休憩しないですかぁ?」
「だめだよ。お昼までには四つの畑を作るって言っておいただろ」
「あと三つ……そうしたらお茶休憩してもいいです?」
「ああ、かまわないよ。だから何時までも座り込んでないで次の場所に移動して」
大して働いてもいないはずなのに泣き言を言い出したフェイルに、僕は少しだけ怖い顔をして見せた。
――つもりだったが。
「ぷはぁっ、なんなのですレスト様。その顔っ」
思いっきり笑われてしまった……解せない。
「はいはい。どうせ真面目な顔は似合わないのはわかってたよ」
「そんなことはありませんぞ。レスト様は十分凜々しいと私は思ってます」
「……フェイルの笑いの壺がおかしいだけ……でも凜々しくは見えない」
なんだかフォローなのかどうなのかわからない事を言われた僕は、元の緩んだ表情に戻すと次の畑の場所へとっとと移動することにした。
笑いながら歩いてくるフェイルを含めた三人がまた三方の位置に付いたのを見て、先ほどと同じように素材化からクラフトで畑を作る。
笑われた腹いせに素材化で穴を開けた時、先ほどよりもっとフェイルの足下ギリギリまで素材化してやって腰を抜かしたフェイルを笑い返していたら、キエダに大人げないですぞと怒られた……解せない。
そうやって無事四つの畑を作り終えた僕らは、拠点中央にクラフトで作った休憩所へ向かう。
今日は外でお昼を食べる予定だ。
なのでそこではテリーヌが僕たちのために冷たい紅茶と、アグニ手製のパンとスープを準備して待っていてくれるはずで。
「はぁ。つかれたです。もう歩けないですぅ」
「フェイルは最初の片付け以外は立ってただけじゃないか」
「そうですけど、その後も笑い疲れたっていうか」
「腰抜かしてたくせに」
「あれはレスト様が意地悪するからです!」
僕らがそんなじゃれ合いをしつつ歩くと、直ぐに休憩所にたどり着いた。
休憩所はテーブルセットと物置台。
そして日差しを避けるための屋根という簡単な造りのものにした。
どうせこの場所は周りの開発が一段落すれば取り壊してしまう予定なので、そこまでこったものは必要ないからだ。
「あっ、コリトコくん。体はもう平気です?」
休憩所の中、先にそこに来て椅子に座って僕たちを待っていたレッサーエルフの少年コリトコの姿を認めたフェイルは、僕との軽口をあっさり切り上げて休憩所に向けて駆け出していく。
さっきまでもう歩けないとか言っていたのは何だったのか。
「レスト様。お疲れ様です」
「領主様、こんにちは」
僕が休憩所の屋根の下に入ると、テリーヌとコリトコがそう言って軽く頭を下げて挨拶をする。
「準備ありがとうねテリーヌ。コリトコくんも、随分顔色が良くなったようで良かったよ」
僕はそう言ってコリトコの頭を撫でてやると、彼はその特徴的な耳をパタパタとはためかせくすぐったそうに目を閉じる。
かわいい。
男の子だというのに凄くかわいい。
これがエルフの血というものか。
「ま、まぁ。まだ無理しないようにね」
「はい!」
僕はこのままでは危険だと判断し、コリトコの頭から手を離すとそそくさと自分の席に座ることにした。
コリトコの世話はフェイルがやってくれるだろうし。
ちょっと甘やかしすぎている感も否めないが、病み上がりの子供相手にはちょうど良いくらいかもしれない。
そんなことを考えている間にも。
次々とテリーヌが屋敷からここまで荷物を運んできた台車から色々なものを取りだし、テーブルの上に昼食の準備をしていく。
まだ野菜や果物が手に入っていないので、基本は僕の素材収納に収納できた粉もので作れるものと保存食だけだ。
基本はパンだが、アグニとテリーヌは何種類ものパンを作ることが出来るのであまり飽きは来ない。
今日は堅くて長めのパンだが、これはそのまま食べるのではなく、スープにひたして柔らかくして食べるパンだ。
というわけで、テーブルの上には生野菜を使わずに調味料で作ったスープが一緒に並べられる。
あとはいつもの干し肉、そして――
「うわぁ」
「おいしそうですぅ」
「良い色合いですな」
「……この料理だけはテリーヌに勝てない……」
皆の視点が一つに集まった。
それは今朝、この領地で産み出された初めての畜産物で作られた卵焼きだったのである。
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