第14話 魔物たちの様子を探ろう!

※予約投稿をミスして朝の更新が出来てなかったようなので、本日もお詫びに二話更新いたします。こちらはその1話目となります。


 拠点の近くで拾ったエルフらしき少年。

 その少年が倒れていた近くで争っていた二種類の魔物の様子を見に、僕はやって来ていた。


 少年のために特効薬をクラフトした後、何故だか微妙に居づらい空気を感じた僕は、この魔物たちの様子を見てくると言い残して領主館を出た。

 慌てて簡易的に修復した壁をもう一度素材化し、今度は魔物たちを捕まえた檻を囲むようにもう一度壁を凸のようにクラフトする。


「お前たちはあとでちゃんと逃がしてあげるから、それまではおとなしくしてろよ」


 この二種類の魔物は確かに凶暴だ。

 だけども自分たちが襲われたわけでは無いし、あの少年も結局魔物のせいで倒れていたわけでは無いとわかった以上、無為に殺すことも無いと思っている。


「それにしてもお前たちおとなしいな。戦ってた時はあれだけ激しかったのに」


 フォレストウルフらしき魔物は、自らの傷をペロペロと舐めてはいるものの、僕がやって来てもうなりを上げることすら無かった。

 一方のコカトリスらしい魔物の方も、今は自らの毛を突いて整えているだけで敵意は見えない。


 コカトリスの子供たちに至っては、四匹が固まってまるで一つの毛玉のようになって眠っているようだ。

 その姿はまるでぬいぐるみのように見えて、とても愛らしい。


 だけど、それでもコカトリスの子供なので、きっとその体には鋭い爪を隠しているに違いない。

 なのでかわいい外見に騙されて、油断して近づくのはとても危険な行為だ。


「まったく。なんなんだこいつらは」


 僕が改めて檻の中を呆れた気持ちで眺めていると、後ろから足音と僕を呼ぶ声が聞こえた。

 あの声はアグニか。


「レスト様、あの子供の目が覚めた……」

「そうか、大丈夫そうだった?」

「……レスト様が作った薬が効いたみたい。テリーヌがもう大丈夫だと言ってた……」


 その報告にホッと胸をなで下ろしていると、僕の近くまで歩いてきたアグニが、それまでの彼女と同じものとは思えない突然素っ頓狂な声を上げた。


「なっ、なっ、なんですかこれーっ!!」


 もしかしてアグニは魔物を見たことが無いのだろうか。

 彼女はたしか王都生まれの王都育ちだったはずで。

 それなら魔物の実物はあまり見たことが無いのかもしれない。


「この二種類の動物は魔物なんだ」


 といっても魔物と獣は見かけだけではわかりにくい場合も多い。

 なぜならその二つを分けるのは彼らがどんな力によって動いているかの違いだけだからだ。

 人間を始め獣などの生き物は、心臓から体中に血液を送り出すことで生命を維持している。

 一方魔物の場合は心臓の代わりに魔石という魔力の固まりを持っていて、そこから出る魔力の力を利用して生きている。


 ただ、理由はよくわかっていないが魔石を持つ魔物は、基本的に獣よりも体が大きく、そして凶暴な場合が多い。

 もちろん獣の中にも凶暴なものは存在するが、魔物の力とは比べるべくもない。

 

「これが……魔物……」

「びっくりした?」

「ええ。まさか魔物というものがこんなに――」


 アグニはその身を震わせて目の前の檻の中を凝視する。

 その目は恐怖に揺れているように見えて。


「こんなにもふもふでかわいい生き物だなんてーっ!!」

「えええええええええええっ」


 突然叫んで、丸まったまま寝ているコカトリスの子供が入っている檻に飛びつくアグニを僕は止めることが出来なかった。

 アグニはそのまま檻に取り付くと、その格子の間から手を伸ばしコカトリスの子供を触ろうとする。


「ちょっ、ちょっとアグニ! 危ないよ!!」


 僕は突然奇行に走ったアグニを後ろから羽交い締めにすると、折から無理やり引き剥がそうとする。

 だが、アグニは必死な形相で檻にしがみついて離れようとしない。


「離してっ! 生きたぬいぐるみが! 生きたぬいぐるみがそこにっ!」

「それはぬいぐるみじゃ無いってば! 危険な魔物なのっ」

「あんなにかわいいのにどこが危険なのっ。離してっ!」


 僕はアグニの言葉を聞いて理解した。

 無類のぬいぐるみ好きの彼女は、あの毛玉のようになったコカトリスの子供を見て、その愛らしさに魅入られてしまったのだろう。


 その後、アグニはキエダがいつまで経っても戻らない僕らを心配して迎えに来るまで檻から離れることは無かった。

 幸いにもコカトリスたちは眠ったまま目覚めることも無く無事で済んだが、アグニにはもうここには近寄らせないようにしなければと心に誓ったのだった。

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