第176話 ガルシア防衛作戦

「これは……」


ガルシアの戦闘空域に突入した私たちが目にしたのは、上空から爆弾のようなものを落とす飛行機とそれを護衛する飛行機達でした。

「飛行機……みたいですね」

「そのようね。素性を調べる必要がありそうだから、鹵獲を優先。この空域から離脱するものは無理に追わなくていいわ。第一部隊は護衛の機体の相手をして。その他の部隊は爆弾を落とさせないようにして。私は都の方に行って説明してくるから、こっちは任せたわよ」

「「「了解っ!」」」


都も混乱していました。私の機体を広場に下ろして警備フェアリー隊を出しました。悪戯はダメよって事で。

「ヘンネルベリ王国のミルランディア・ヘンネルベリ国王代理です。要請を受けて参りました」

「ヘンネルベリから、来ていただけたのですか。お、お一人ですか?」

「いいえ、既に脅威の排除を始めています」

「それは…感謝いたします」

「詳しいことを教えていただきたいのですが」

「こちらでお話いたしますので、お願いいたします」

ガルシアの指導者と言うか、今回の件の関係者が集まった場に通されました。

「こちらが、ヘンネルベリ王国のミルランディア国王代理です。この度我々の要請に応じていただいた」

「ミルランディアです。共栄圏の一員であるガルシアを守るために来ました。私と共に来た航空隊は既に脅威の排除を始めています」

「今回攻めてきた部隊は、ラディアスを名乗っていました」

「ラディアスですか」

「我が国の東方に位置する軍事国家です。3日前に東側の国境の街に攻撃を仕掛け、昨日ここに書簡が届きました。降伏してラディアスの下へ集えとのことでした」

「初めの攻撃は陸上の部隊だったのですか?」

「最初から飛行機による爆撃でした。先だってヘンネルベリ王国で飛行機を見ていましたからあの攻撃が飛行機によるものと分かりましたが、知らない者は混乱したそうです」

「ラディアスとはどのような国なのですか」

「以前は王制の国でした。何年か前に軍部が実権を握り、今は軍政が引かれています」

「私も先ほど見ましたが、あの飛行機はラディアスで開発されたものなのでしょうか。ヘンネルベリ以外で飛行機の開発が出来たという話を聞いたことがないものですから」

「あそこで開発されたものかは分かりません。ただ魔法の攻撃も届かないところから仕掛けてくるので、こちらとしては手も足も出ないのです」

「目的が侵略であるのであれば私たちはラディアスの航空戦力を叩きます。すぐに地上の部隊の侵攻が始まると思いますので、そちらはガルシアの方でお願いいたします。当面の脅威が排除された後は、ヘンネルベリ本国から国軍の航空隊が来ますので、そちらへ引き継ぐことになります」

「今来ているのは国軍ではないのですか」

「ええ。緊急と言う事でしたので、私のところの領軍を率いて来ました。領軍と言っても練度は十分ですからご安心ください」

「よろしくお願いします。陸上部隊の展開を急ぐように。ヘンネルベリが応援に来てくれたんだ。何があっても負けるわけにはいかないぞ」


ラディアスですか。軍政の国なら尖がった開発をしたとなればできなくもないのかな。

『あれは昔の飛行機よ』

『ビックリしたなぁ。急に出てくるんだから。昔のっていう事は旧文明時代のものって事?』

『そうよ。どこかの遺跡から出てきたんじゃないかな』

『そんなものを掘り出したんだ。もしかしてあの爆弾も?』

『恐らくね。飛行機も爆弾もまだあると思うわよ』

『当面は爆弾を落とす飛行機を止める事みたいね』


「こっちの状況はどう?」

「護衛機は1機撃墜、他の機体は大型機と共に撤退していきました。大型機の方は2機鹵獲に成功しまして、向こうの原っぱに下ろしてあります」

「こちらの被害は」

「ありません。武装も弱かったですし、速さに差がありましたのでほぼ一方的な展開となりました」

「撃墜した機体を回収してから鹵獲した機体の方に向かいます。第3、第4部隊は周囲の警戒に当たって。地上軍が展開されている可能性があるから。撃墜した人は回収を手伝って。他は鹵獲した機体と捕虜の警戒に当たって」

「「「はい」」」


「撃墜ってどうやったの?ファイヤーボールでも撃ちこんだ?」

「いいえ、アイアンバレット鉄の礫を数発翼に撃ちこんだら、バランスを失って不時着しました」

護衛機戦闘機の所に行くと、墜落の衝撃か乗っていた兵士は気を失っていました。魔法を使われないように封じた後、兵士を拘束します。いつもの所亜空間プリズンに放り込んで大型機爆撃機の方に行きます。

けっこう大きな機体ですね。ウチで飛ばしている100人乗りのと変わらないぐらいです。

これに爆弾を積んで、上からばら撒くのね。酷いことをするわね。下には戦争と関係のない人も沢山いるというのに。

ならこの捕虜たちからラディアスとやらの情報を聞くとしますか。


結論。ヤバい国でした。将軍が国王を暗殺して宰相を始め国の指導者を全員拘束、国の機能を完全に掌握したのち全員粛清したとの事。捕虜となった兵士たちは将軍派の兵士なので生きていられたそうだが、大臣派の兵士は軒並み殺されたとか。粛清の嵐は続いて、平民でも多少賢いと言われた人たちまで殺されたそうです。当然国力は大きく下がりましたが、軍が周辺の国を次々と攻め落とすことで矛先を変えているみたいです。当然それらの国にも粛清の嵐が吹き荒れますよね。そんな折モルーマが滅亡して大きな空白地が出来ました。当然のように侵攻を行い、そこで遺跡を発見したんだそうです。その遺跡から出てきたのが今回の飛行機で、その遺跡にはまだ大量の武器が眠っているそうです。おかげで、軍部の勢いは増すばかりなのだそうです。

勢いに乗ってガルシアを狙ったところ返り討ちにあってしまったとのこと。飛行機は自分たちだけだと思ってたらしく、まさかの事態なのだとか。ガルシアに航空隊の救援が来たということは向こうも知ったわけだから、次の作戦は注意しないといけないわね。ちなみに地上の部隊の多くは周辺の国の人たちで、ラディアス本国はたとえ全滅しても影響が少ないそうです。なんてこった。


うん、潰そう。これは共栄圏を脅かす外敵です。14か国の総意としてこの戦いに勝たなければならないわ。遠い国にとっては実感のない話でしょうけど、一致団結して向かわないとね。



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