第175話 出撃!海軍第一航空隊
「あー、ダメだわ」
「ミルランディア様、どうしたのですか」
「汽車よ。マニグで走らせてるやつなんだけど、トラブルが多くてね」
「一体どんな」
「魔物が通路となる鉄の道を壊すのよ。魔物対策は出来そうだからいいんだけど、実際この汽車を国中や外国と繋いで走らせようとした時に、盗賊の襲撃から守り切れないのよ」
「盗賊ですか。確かに連中は厄介ですね」
「汽車は決まったところしか走れないから、狙われやすいのよね。せっかく大量輸送ができるようになると思ったのに」
「止めるのですか?」
「マニグでは使うわよ。汽車の道に結界の魔道具を組み込んで安全を確保するわ。あそこは盗賊がいないからね。あと鉱山の中の小さい汽車は他の鉱山でも使えると思うから、売り込むわよ。あとはカルセアの農場と港の間かな。あそこは魔物もいないし、逃げ場のない島で盗賊行為なんてやったらどうなるかが容易に分かるからやる人なんていないし」
「カルセアのリゾート計画はどうしました」
「進めてるわよ。海を臨む一帯と湖の周辺を専用地として開発してるわ。大型の商業施設のできてるしね。お屋敷は建ててもらわないといけないけどね」
「港とリゾート地などを結ぶ汽車を走らせては如何です?」
「それもいいわね。農場と港だけを考えてたけど、それなら人も乗せられるし島の観光にも生かせそうね」
汽車の計画は立ちました。大幅な縮小ですけど。安全第一ですからね。
少しミルランディア領でやってる事業が多くなりすぎてきました。ここいらで一度整理した方がいいかもしれませんね。
と言うことで整理です。
先ず、バイクとクルマの工房を合わせて1つにします。新しいクルマ工房ですね。ここではクルマ、魔導バイク、バイクの製造と、それらの魔導エンジンなどを製造します。場所はフロンティーネです。工房ですから作るだけですけど。販売は別に作ります。
次は造船と飛行機の工房を合わせて重工工房にします。ここでは船と飛行機、汽車を製造します。それに伴うエンジンと汽車用の鉄の道もここで造ります。こちらはポルティアですね。ここのは一般販売しませんから、製造の計画は領政府が行います。
スラ研はそのまま研究と素材の確保をしてもらいます。
魔道具工房は製造部門と開発部門に分けます。製造部門では主に魔素魔力変換ユニットの製造です。最近小さいものの需要が増えてますので、それに応えられるようにするためですね。飛行ユニットは重工工房に移します。開発部門は新しい魔道具の開発と生産に移した時の行程の策定です。魔道具のギルドで作れるものは製造を委託します。そうしないとパンクしちゃいますから。
マニグの鉱山はそのままです。
で我が領最大の事業、農場です。基本的にはそのままですけど、資源保護と採集もここに統合します。
最後がミル薬局。ここは最初王都のお屋敷から街に出るための隠れ蓑のお店だったんだけど、今ではウチの領のものを何でも扱う公式のアンテナショップです。なのでここを総合商会にするんです。もちろんアンテナショップとしての機能は今まで通り続けますが、他領や他国への製品や素材の販売、買い付け、卸など、商売っぽいことは何でもやります。
新たに編成したのが維持のグループです。ここは道や壁が傷んでる所の修復や新たな舗装、街の美化などを行う所です。主にスラムなどの貧しい人の救済ですね。仕事がなくて犯罪に走ったり借金に苦しむ人が少しでも減らせるようにとのことです。
で、最後にクルマ工房と魔道具工房の製造部門を独立させました。私と領で出資はしてますけど、原料の仕入れや従業員の給金などは自前でやってもらいますし、ミルへ卸すのもやってもらいます。工房のトップは私ですから、経営に絡みますしもちろん注文も出しますよ。
ホントうちっていろんな事やってたのね。ここに暮らしている人たちがみんな幸せそうだから、頑張った甲斐はあるんだけどね。よしっ、まだまだ頑張るぞ。
「ミルランディア様、姫様の所の航空隊の派遣を要請します」
「どういう事ですか。詳しく説明してください」
「先ほど、ガルシアから救援要請が届いたのです。ガルシアはドレンシアの東の国で、共栄圏に参加している国です」
「救援要請って穏やかじゃないわよね」
「なんでもガルシアの東側国境付近の街で空からの攻撃を受けているとのことなのです。空からの攻撃なので地上からの攻撃では埒が明かず、被害も次第に増えているとの事」
「空からってワイバーンとかじゃないの。高ランクの冒険者で魔法使いでもいれば何とかできるでしょうに」
「そこらへんがはっきりしないのです。とにかく向こうは『空からの攻撃を受けている』とのことで、混乱しているのではないかと。ただ『魔物による襲撃ではなく飛行機による攻撃』との話もあるそうです」
「飛行機による攻撃?ねぇ、飛行機を開発したって話、ウチ以外で聞いたことある?」
「ありませんね。トルディアやモルーマからも開発したという話は聞こえてきませんでしたから」
「なら一体何が……。分かりました。私が第一航空隊を率いて向かいます」
「姫様も向かうのですか」
「私が行った方がいいでしょう。ガルシアとの話もあるでしょうし。軍人にはできない話も私ならできますからね。それに私が行けばすぐに現地に着きますから」
「国軍の航空隊も必要ですか」
「向かわせてください。収まるまでは向こうで待機しなければならないと思いますけど、ウチのはあくまで領軍ですから。ここはヘンネルベリ国軍として対処した方が、国として共栄圏に対しての発言力が変わってくると思うんです。それから国軍は都の周辺の防衛にあたってください。ガルシアにはそのように話をします。当面の脅威は私の方で対処します」
「それでは姫様、お願いいたします」
急ぎフロンティーネに戻り、幹部たちを招集します。
「私と第一航空隊はこれからガルシア国へ向かいます。こっちのことは任せて大丈夫ね」
「問題ありません」
「数日は開けることになると思うから。この先は第一航空隊への指示ね。
ガルシアに現れた脅威は空からの攻撃を行うらしいの。その脅威が魔物だったら殲滅しちゃって。もし魔物ではなく飛行機によるものだったら、地上への攻撃の妨害をして。向こうから攻撃をして来たら応戦は構わないけど、撃墜は出来るだけ避けて。出来れば不時着でもさせて鹵獲したいから」
「了解しました」
「初めての実戦になるけど、訓練の成果を信じて。さぁ、行くわよ!」
ウチの第一航空隊は、言わば精鋭部隊です。飛行機によるワープゲートへの突入は、まだこの部隊しかできません。
「ミルランディア領海軍第一航空隊、発進!」
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