第169話 VS トルディア(その5)
さて、そろそろ行きますか。
その前に、ごみ箱はどうなったかな……、って酷いねこれ。正に地獄だね。
それを作った私を鬼って言うのかい、それはあんまりじゃないの。『仲良くしなさい』ってあれだけ言ったんだから、それを聞けないあいつらが餓鬼なんだよ。
「おはよう」
「貴様……ぬけぬけと」
「これから行くけど、アンタどうする?よかったら連れてってあげるけど」
「うるさい。それよりお前、最強のトルディア軍と戦うのが怖いからそのような尊大な態度を取っているのだろう。正門を壊す?わが軍を恐れる貴様の戯言など聞く気にもならんわ」
「あーはいはい、そんなに戦って欲しいんなら、しょうがないから相手になってあげるわ。門の外で12時半に待ってるわね。せいぜい腰抜け部隊を集めてきたらいいわ。じゃぁねー」
ジャルフィーもバカだったけどこいつも大バカだね。プライド先行で正しい判断が出来ない。力量の差がつかめない上に現実を突きつけられても認めようとしない。トップがこれじゃ下の連中が可哀想だよ。でもこれやったらそっちからの降伏はさせないよ。
じゃぁ行きますか。
「ほほう、これだけの大部隊を前にして逃げ出さなかったことは認めてやろう。どういう気分だ、死にに行く気分と言うのは」
「えぇといいですか?彼らを殺さない方がいいんですよね。それからこんなことしたからには降伏の申し入れは聞きませんからね」
「はっ、そんなことより自分の心配をしたらどうなんだ。怖気づいたのか」
「そこまでおっしゃっるんなら、こちらもそれなりに行かせてもらいますね。始めていいですよ。サッサと終わりにしましょう。初手はお譲りしますんで、どうぞ」
「言わせておけば……。全軍かかれっ!」
ちなみにタンクトップにホットパンツじゃないわよ。いつものミスリルのやつね。さすがに1万人ぐらいいますからねぇ、自称精鋭部隊。あのカッコじゃ舐め過ぎかなって。あれでも負けはしないんだけどね。
魔法、矢、槍、剣が次々と私に襲い掛かります。私は何もしていませんよ。鉄壁のシールドに守られて部隊の真ん中へ向けて歩いてるだけです。
「ブラストウィンド!」
手を払うのに合わせて派生した爆風で兵士たちが薙ぎ払われていきます。ほら、殺す訳いかないから火とか使えないじゃない。それにパラライズミストって効果的なんだけど地味なのよね。徹底的にやってしまうつもりなんで、見た目に分かりやすいやつを選んだってことで。
次々とブラストウィンドを叩き込んで戦闘不能にしていきます。
沈黙するまで10分。
「あいつ化け物か。一体どれだけの魔力量があるんだ」
そろそろ第2ラウンド行きましょうか。全員をエリアヒールで回復させます。
「元気になったでしょ。続き始めますよ」
同じことを4度、5度と繰り返していきます。なぎ倒されては立たされ、再びなぎ倒されては立たされる。永遠とも思えるその繰り返しに、対峙している兵士の中には逃げ出すものも出てきました。
皇帝の顔は恐怖で歪んでいます。
「まだ続けます?私は構わないんですけど」
皇帝は何も言えません。そりゃそうですよね、あれだけの啖呵切っておいて、今更『負けました』なんて言わる訳がないですから。
「あなた達もまだやりたい人だけ残るといいわ。何度でも付き合ってあげるから」
流石最強の兵士たちです。蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなってしまいました。
「これで終わりってことでいいですかね。それともご自身で決着つけますか」
「………全軍、退け」
誰も残っていない原っぱに皇帝の声が虚しく響きます。
「ではお約束通り、正門の撤去に移らせていただきます。大事なものは持ち出してありますね。中にある価値のある物はみんな没収しますからね。それから……まだ人がかなりいるじゃないですか。フジュのゴミ箱に棄てられたいというのなら止めませんけど、あそこ今悲惨なことになってますよ。ご覧になりますか」
フジュの様子を城壁に映し出します。映し出されたものは………
酷いけがを負って蹲る者、中には既に死んでる人もいるかもしれません。殺したのはあそこにいる人たちですから。
犯され、嬲られ、気を失ってる女性。その横で犯し続ける男。
食べ物を巡って殴り合いを続ける者たち。
生き地獄があるとするならあそこかもしれません。
「皇帝さん、あれが誇り高きトルディアの兵士の姿です。立派に成長した姿が見られて誇らしいんじゃありませんか」
「………」
「それからまだ門の中にいる人たちに警告です。今から10分、10分後までに赤い線の外側に出てください。出てこない人は漏れなくあそこへ行ってもらいます。あの姿にしてね」
非戦闘員とみられる女性たちが慌てて飛び出してきます。あんな人たちまで残していたんですね。
その後もぞろぞろと出てきます。結構いましたね。5~60人いたんじゃないでしょうか。
「彼らは私の警告を無視して居座った者たちです。約束通りフジュの街に送ります」
指をパチンと鳴らして、彼らと同じ姿にします。下着姿ってことね。そして目の前から消えた彼らは、フジュの様子を映し出す中に現れたのです。
「な、何をしたんだ」
「送り込んだだけですよ。私が言ったとおりにね。未だ本気にしていない人がいるようですから」
門ですか?圧縮崩壊で粉々です。圧縮崩壊が分からない?森の中の施設を潰したやつですね。思い出しましたか。
「ねぇ皇帝さん、フジュの様子、街中でも流しましょうか」
「……早急にフジュの連中の解放に向かえ。全員連れて帰って来い」
「はっ!」
「ねぇ、昨日言ったわよね、疲れてるから早く終わりにしたいって。人は全員避難させておいてって。まぁアンタが私のいう事なんて聞かないことぐらい分かってたけどさぁ。明日はお休みしてあげるから。また明日の夕方宮殿に行くんで、その時ね」
「俺は……この国は……どうなってしまうのか」
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