第165話 VS トルディア(その1)
「皇帝陛下、龍神様よりお言葉を頂いたのですが」
「神の言葉か、でその中身は」
「はい、僭越ながら神の言葉通りにお伝えします。
『トルディアの民よ。其方らが得たものは其方らの身に余るものであり、其方らを滅びに導くものである。我は其方らの行いを見過ごすわけにはいかない。今すぐに手放せよ』
とのことです」
「戯言を。たかが蜥蜴、こちらに来たとて返り討ちにしてくれよう。そのようなもの捨て置け」
「分かりました」
「(この力があれば神など恐れるに足らん)次の作戦を立てるぞ、皆を集めよ」
「はっ」
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「ドラーガ様、全く聞いてませんね。ドラーガ様の事『たかが蜥蜴』って言ってましたよ」
「小童めが、後で泣いても知らんぞ」
「ねぇ、泣かす役って私ですよねぇ」
「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「いいえ、もういいです」
「変な奴だなぁ」
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サクッと取り上げるだけなら簡単なんですけど、ここは神に逆らった罰と言うのも受けてもらわなければなりませんからね。とりあえず行きますか。
これって神様対トルディア帝国の戦争だよね。神軍の大将がドラーガ様で副将がエリーさん。総大将のスティルガノ様もいらっしゃるけど興味ないみたいだし。じゃあ私は神軍の兵隊ですか?一人しかいない兵隊を戦地に送り込むそんな大将いますか。
街に入るなんて簡単ですよワープで飛び込んじゃえば検問なんて関係ないですしね。それに魔法が何でもありになった感じなんです。古代魔法が使えるようになったのと精霊の神様エリーさんに会った頃からですかね。ナビちゃんの素早いサポートもあるんでしょうけど。
気配の遮断で気づかれなくなるだけじゃなく、自分に隠蔽の魔法もかけられるんですよ。かけたらどうなるかって?見えなくなっちゃうんです。気配もしないし見えもしない。挙句に鍵も開け放題。飛行で浮いていれば足跡さえつかないんだから。あんなとこでもこんなとこでもどんなとこでも行っちゃいますよ。あっ、男の人と女の人があんなことやこんなことをしているところは遠慮しておきます。私の知らない世界ですから。えっ、かまととぶるんじゃないって。失礼ね、私が知らないって言ってんだから、はいそうですかって言うのがマナーってもんじゃないの。ついでに男の人のお風呂場とかも遠慮しとこうかな。
「あなたが皇帝ね、神をも恐れないと言われる。私は神に遣わされし者。神に代わってここに来ました」
今どういうシチュエーションかって?今いるのは皇帝の執務室。付き人は隣の部屋でお寝んね中。執務室には防音の結界を張ってあるので中の音は外に漏れません。どんなに大きな声を出してもね。私は亜空間シールドを展開してその中にいます。安全第一です。気配遮断と隠蔽を全開にしてあるので私がいることには誰も気づきません。
その状態で少しずつ気配遮断と隠蔽を解いていきます。何という事でしょう、私の存在が少しずつ明らかになるではありませんか。
「貴様、何者だ。衛兵、何をしている。衛兵!聞こえないのか!」
「無駄ですよ。中の音は外には届きません。それにあなたの攻撃も私には届きませんから」
「貴様……一体……」
「私は神に遣わされし者。神に代わってあなた方に命じます。あなた方が手にした未知の力、その身に余る力はあなた方を滅亡へと導くことでしょう。今すぐ手放しなさい」
「何を言うかと思えば蜥蜴の戯言と同じ事か。あれはな、天が私に与えた力なのだよ。天は私に道を示したのだ、この力を使い世界を平定せよとな。貴様は私の邪魔をすると言うのか」
「邪魔はしませんよ。ただあの力はあなた方が持っていていいものではありません。大人しく手放しなさい」
「何を言う。あの素晴らしい力を以ってすれば神とて私の前に跪くであろう。では問おう、なぜそのような素晴らしいものを、自ら、むざむざ手放さねばならぬのだ」
「……どうあっても手放す気はないと」
「無論」
「仕方ありません。あなたの言う素晴らしい力と言うのを私が取り上げるのは容易いことです。しかしながらあなたは、あなた方は、トルディア帝国は神を冒涜しました。この世界が更なる厄災に見舞われぬようにという神の思いを無碍にして。
私は神に遣わされし者。神に代わってあなたに罰を与えねばなりません。明日から一つずつこの国の軍関連施設を潰すことにします。あなたのご自慢の武器も私の前では無力ですから、残念ですね。あなた方では私に傷一つ付けることなどできませんよ。今日のところはご挨拶まで。また明日、楽しみましょう」
再び気配と姿を消して結界とシールドを解除してワープで脱出です。
ね、演出って大事でしょ。これを正面から訪ねて会わせてくれって言ったって無理だろうし、会えたにしてもこんなこと言ったら大騒ぎになること間違いなし。神の遣いならそれっぽくするのも大事なことなんですよ。
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「賊の侵入を許した。誰か見た者はいないのか」
「いえ、私たちは誰も……」
「そうか。まぁそれは一旦置いておこう、済んだ話だ。そいつが言うには明日からこの国の軍関連の施設を潰すというのだ。警戒を厳重にしろ。このようなことをする奴に心当たりのある者はいないか」
「チャグルの残党と言うことはないでしょうか」
「奴らにあのようなことが出来るのか」
「あのようなこととは」
「スーッと表れて、話が終わった後再びスーッと消えたのだ」
「本当に神だったのでは」
「見たところまだ若い女だったぞ」
「神は自在に姿を変えられるとも言いますし」
「神など何だというのだ。ゴチャゴチャと偉そうなことを言うだけではないか。だが私は違う。この世界を我が物にすると言い、そして実行に移し成し遂げる者だ。奴が何物かは知らぬが恐れることはない。返り討ちにしてやるのだ。3つの新兵器の守りを厳重にしろ。何があっても死守するのだ」
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私が向かうのは帝国西側の国境近くにある駐屯地。その前に行くところは教えてあげたけどね。でも遠いから間に合わないかもしれないね。
兵隊をできるだけ傷つけないようにしながら武器防具を全て没収。もちろん食料も全てね。だって燃やしちゃうのもったいないじゃない。焼き払うぐらいなら貧しい子供たちに分けてあげるわよ。
「今から兵舎を始め全ての建物を破壊します。死にたくなければ建物から離れなさい」
優しいでしょ、ちゃんと警告してあげるんだから。
兵隊が出てきます。私ですか?シールドに守られながら空中に浮いていますよ。
おっ、まだ武器を持ってる人がいますね。危ない玩具は没収です。
建物の潰し方ですか?では本日の兵舎の潰し方についての解説です。
今日使用する魔法は2つです。一つはおなじみのファイヤーボールですね。炎は赤いのじゃなくって青白いのにしてくださいね、温度が全然違いますから。大きさは少し大き目でお願いします。今日の目標は建物ですから、大きくて動くこともありません。従って魔法が外れるということは考えなくていいでしょう。ファイヤーボールですけど数は30から50ぐらい用意しておくとよいでしょう。
次に使う魔法はグラビティと言う重力魔法です。あまりなじみのない魔法ですから知らない方も多いと思います。この魔法の効果としましては、かけた対象に超重力を科すというものです。上から押さえつけられるという感じですね。ファイヤーボールで脆くなったところを上から押しつぶしてしまおうという作戦ですね。グラビティ程ではありませんが風魔法にウィンドプレスというものがあります。これは空気の力で押さえつけるものです。頑丈な建物ですとファイヤーボールで脆くなったとしても潰すことは難しいかもしれません。
では実際にやってみましょう。用意したファイヤーボールを次々と撃ち込んでくださいね。偏らないようにしてくださいね。まんべんなく撃ちこむことがポイントです。全弾撃ちこんだら暫く待ちましょう。ファイヤーボールによる火災の効果を引き出すためです。青白い炎は温度が高いと先ほど説明しましたね。木でできた建物であれば赤い炎でも延焼しますが、石造りの建物だとそうはいきません。青白い炎でも燃やすことは出来ませんが、石を脆くすることは出来るんです。ですから出来るだけ青白いのでお願いしますね。まだ青白いファイヤーボールが出来ない人は繰り返し訓練することです。ポイントは空気を沢山取り込むイメージをすることです。頑張ってみてください。
そろそろいい感じに燃えてきましたね。屋根も崩れてきたみたいですし壁も剥がれてきましたね。それでは仕上げのグラビティです。今回は5倍の超重力にしてみましょう。魔法をかけたらすぐに崩れるのでちゃんと見ていてくださいね。それでは行きます、『グラビティ』。
(ドッゴーーーーーン!!ガッシャーーーーーン!!)
はい、これで終了です、見事に潰れましたね。まだ火が燻っていますから近づかないでくださいね。
続けて他の建物もやってみてくださいね。本日はこれで終わりにします。それではまた。
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「宣言通り西側の駐屯地を潰しました。明日は旧モルーマに出張っている部隊を潰しに行きますのでよろしく」
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