第164話 丸投げですか
情報を集めるためにチャグルの首都チャングに来ました。
首都って言うぐらいですからかなり大きな街なのですが、なんていうか元気と言うか明るさと言うか活気がありません。
「どうしたんですか?」
「アンタ旅のもんか。それともトルディアの奴か」
「私はトルディアの人じゃありません。西の方の遠い国の旅人です」
「話が聞きたいんだったら、聞かせてやってもいいぜ」
「是非お願いします」
「なら飯と酒だ。それからアンタを抱かせろ」
グーパンです。身体強化の魔法を使って下半身をしっかり固定して、体の軸がぶれないようにして手だけにならないようにグッと力を込めて腰のひねりを使って拳に体重を乗せて、撃つべし。
(バキッ!!)
(ドガッ!)
あらま、吹っ飛んでっちゃったわ。のびちゃってるけど死んでないから大丈夫ね。
こんな
「誰か話を聞かせてくれる人いないかなぁ。食事ぐらいならご馳走するけど」
あれっ?みんなそそくさと帰ってしまいましたよ。私悪くないわよね、あいつの方から絡んできたんだから。
「貴女強いのね。もしかして冒険者?」
私が唖然としているところへ一人の女の子、いや女性だな、一人の女性が話しかけてくれました。
「はい。遠くの国の冒険者です」
「やっぱり。あの身体強化の魔法の使い方、そうじゃないかと思ったのよね。私はレミ、この国の冒険者。ランクはBよ」
「私より上なのね。私Cランクだから」
「嘘、私てっきりAランクだと思ってた。身体強化の魔法使ってバシバシ倒していく感じの」
「Cランクって言うのは事情があるんだけど、私魔法使いだから基本遠くから魔法撃つだけよ」
「貴女魔法使いなの。意外」
私この人にどんな風に映ってたんでしょうか。パンチ1発放っただけですよ。
「で、話聞かせてくれるの?」
「いいわよ。ご馳走してくれるんでしょ」
「お店とか知らないから任せるけど。それとも私が作る?」
「貴女の料理も気にはなるけど、私のお勧めでいいわね」
「ええ」
レミさんとの話で大体のことは分かりました。私が見た瓦礫の山のところにはフジュと言う大きな街があったそうです。攻めたのはトルディア帝国、新兵器の一撃で廃墟と化したそうです。その後一方的に奴隷国にしたそうです。
(トルディアの新兵器って言うのが異界の兵器みたいね。回収しないと大変なことになるわね)
「レミさんありがとう。いろいろと分かったわ」
「こちらこそごちそうさま。支払い大丈夫?ここ高いけど」
「これだけあれば足りるでしょ」
「(聖金貨?)も、もちろん。店ごと買ってもおつりがくるわよ」
「でもレミさんはこれからどうするの?ここにいてもトルディアにいいようにされるだけなんじゃないの」
「ホントはどこかに行きたいんだけど、今はもう国から出られないからね。そういえばどうやって入ってきたの?」
「飛行機で飛んできて、街へは門での検査が五月蠅そうだったから空間魔法で入ったんだけど」
「飛行機って言うのが何だかわからないけど、つくづくアンタって規格外よね」
「どうする?あなた一人なら出国の手伝いぐらいはするわよ」
「お願いしたいけどいいわ。仲間もいるから」
「じゃあね。もう会う事もないと思うけど」
「そうね。元気でね」
「お互いにね」
**********
「ドラーガ様、分かりました」
「ミーアよ、エリーの事はさんなのに、私は様なのか」
「ええ。龍神様に戻してもいいんですよ。私はまだ怒ってますからね、何も知らせずにモルーマに行かせたこと」
「あれは……、仕方あるまい。で、どうだったのだ」
「異界の兵器を使ったのはトルディア帝国ですね。街が一つ壊滅していました」
「兵器は見つかったのか」
「いいえまだです。持ち帰ったのだと思われます。街を破壊した後トルディアはチャグルを奴隷国にしたそうです」
「トルディアと言う所はこれでやめるのか」
「まだまだ続けるでしょう。あの国の野望は世界征服ですから」
「このようなことが続くのなら大神様の怒りがトルディアと言う所に向かうぞ」
「じゃぁ神罰で亡びるってこと?」
「そんな簡単なことじゃないのだよ。いいか、モルーマが特別だったのだ。そもそも神罰が下って一月かそこいらで亡びるなんてことはまずない。魔素溢れは竜が動くし、病気で亡ぶにしても長い時間がかかる。そうなった時にその国はどう動くと思う。被害を最小限に抑えながらその損害を補うためにさらに周りの国に襲い掛かる。神罰を待つなどと言うのはダメだ。神罰を起こさせないようにしなければならないのだ」
「それじゃあ回収しなきゃダメってことよね。でも『それ危険なものだから渡してください』って言って、はいそうですかって渡してくれるわけないじゃん。ってことは力ずくで奪ってくるしかないってことよね。下手すりゃ戦争よ。でもヘンネルベリは兵を出せないわ」
「そこはミーア一人でどうにでもなるだろ」
「ドラーガ様、また完全丸投げですか?」
「私にできることなどないからな」
「ドラーガ様は神の一柱ですよね。神託とか神の言葉とかで何とかしてくださいよ」
「やってはみるが期待はせんでくれよ」
実際ヘンネルベリと周辺4か国はトルディアと接してはいない。ゆくゆくは標的にされるだろうけど、さしあたっての対象は周辺の国々ですよね。でもさして親しくもない国にトルディアの脅威を説いて一緒に戦ってくれなんて言っても無駄でしょう。悔しいけど龍神様が言うように私一人で動くしかないようですね。
となれば始めますか。まずは情報収集からですね。マルチさん、お仕事の時間ですよ。
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