第163話 チャグルの惨劇

『ミーア、異界の兵器が使われたみたい』

『……っ!それどういう事!』

『一旦落ち着こうよ。ちゃんと話するからさ』

『落ち着いてなんていられないって。だってあれ、全部回収したよね』

『だからね、話するから聞いて。使われたみたいって言うのは精霊からの報告なの。ただ詳しいことは分からないわ。使われた場所はチャグル国。知らない力でいきなりメチャメチャになったらしいわ』

『この事龍王様は知ってるの?』

『多分知ってるわね。もちろん精霊王様もね』

『3人で話せないかな』

『大丈夫だと思う。ミーアは龍王様のところには行けるんでしょ。精霊王様にも来てもらえばいいだけだから』

『そんなに急に来てもらえるかな』

『ミーアが急ぎの用だって言えば来てくれるでしょ』

『とにかく行きましょう』



「ドラーガ様、異界の兵器が……」

「まあ待て。今エリーも来るから」

「そうですね。ここで焦ったってどうしようもないですからね」

「そうじゃ。おっ、来たようだな」

「エリーさんお久しぶりです」

「ミーア聞いたわよ。なんか大変なことになってるみたいね」

「ええ。歪から出てきた異界の兵器が使われたらしくって」

「私も詳しくは分からないんだけどね、あのあたりにいた精霊が知らない力を感じたんだって。その近くに行ったらメチャクチャになってたそうよ」

「でもモルーマにあった異界の兵器は全部回収したわよ。それこそ壊れて動かなくなったのまで全部。歪が無くなって裂け目が出来なくなってから隅々まで探し回ったわ。もうモルーマには一つもないって確認したのよ。それがなぜ」

「詳しいことは分からないけど、ミーアちゃんちょっと見てきてもらえないかな」

「いいですよ。私も気になって仕方ないですから」


**********(side トルディア帝国)


数か月前の出来事です。


「陛下。例の兵器ですが修理が終わって動かすことが出来るとのことです」

「ほぅ、それはいい知らせだな。ここで見ることは出来るのか」

「何分どのようなものか分かりません。万が一被害が出ては大変なことになりますので、ここで試されるのはお止めになられた方が良いかと」

「それもそうだな。ところでチャグルはどうなっている」

「例の件については払うものは払ったのだから済んだことだの一点張りです」

「ほう。俺が礼を述べに来いと言っているのを知ってと言うことだな」

「その通りでございます」

「帝国が力を貸さねば何もできぬ小国の癖に態度だけはデカいのだからな。身の程をわきまえさせるためにも少し痛い目に合わせるか」

「ではその場で使われるというのは如何でしょうか」

「そうだな。ダメならダメで構わないしな」


**********(side チャグル)


「何?帝国が攻めてきただと」

「はい。フジュの街が包囲されてるとのことです」

フジュの街と言うのはチャグル国第2の都市と言われる大きな街で、首都チャングより栄えているとも言われている。

トルディア帝国侵攻の一報を受け、国軍の主力部隊が既に展開してにらみ合いを続けています。

「チャグルを守るのは我らだ。一歩も退くのではないぞ」

「「「おぉーーーーー!!」」」


(ドッ、ゴーーーーーンっ!!!)



(……………)


**********(side トルディア帝国)


「そろそろ頃合いだな。始めろ」

「承知しました。例の兵器は向こうの陣から撃ちますので、陛下はこちらでご覧になっていてください」

「うむ」

「全軍、作戦開始」


「発射許可が出た。陛下も結果については問わないとおっしゃって下さった。誰もどうなるかなんてわからないものだ。撃つぞ」

(ドッ、ゴーーーーーンっ!!!)


「どうなった」

「まだ砂ぼこりで何も見えない」

「あれなら無事と言うことはないと思うが……」

「晴れてきました。………街が…街がありません」

「凄い威力だ。おいっ、壊れてはいないか」

「問題なさそうです。エネルギーを貯めるのに時間がかかるとは思いますが」

「壊れていなければよい」


「報告いたします。フジュの街、消滅です」

「そのようだな」

「兵器の故障はないとの事。エネルギーの補充が済めばまた撃てるとのことです」

「分かった」



「素晴らしいな、天が私に与えた力。この力があれば世界の征服など容易いか」

「陛下、この後は」

「チャグルに使いを送っておけ。今日からチャグルはトルディア帝国の奴隷だと」

「承知いたしました」


**********


そもそもチャグルって言うのが遠いのよね。

焦っていっても状況が変わることはないということで、私の専用機をフル改造しました。魔力供給は魔素で賄い、予備の魔石は積んでいますけど無制限に飛べるようにしました。飛行用の魔道具飛行ユニットもフルチューンナップされたものを2基、領軍機が玩具のようです。そのおかげで完全に私専用になってしまいました。訓練された兵士でもこの機体で飛ぼうとすると気絶する始末です。兵士が情けないんじゃなくってそれだけじゃじゃ馬モンスターマシンって事です。私の事じゃないからね。もちろん今回は武装もしています。火、土、雷、光などの魔法陣を組み込んだ魔導砲です。金属の塊や火の玉を撃ちだしたり、雷や熱戦を放つことが出来ます。今回はある意味ちょっと怒ってるからね、攻撃されたら反撃しちゃうよ」

今どこにいるのかって?モルーマの都からチャグルに向けて飛行中です。フロンティーネを飛び立ってすぐにワープゲートを開いてみたんです、モルーマの都に。そしたらなんか普通に行けたんですよ。それでチャグルに向かってると。


『ミーアの飛行機っていろんなものがついてるよね』

『うん。飛行機ってさ下の様子が見られないのよね。だから機体のいろんなところにカメラを付けて見えないところがないようにしてるの』

『今はどうやって飛んでるの?ミーア操縦してないよね』

『自動操縦よ。まっすぐ進めとか、どこどこへ向かえとか、旋回しろぐらいの簡単なことならできるようにしてあるわ。もちろんこの機体もドール化してあるからマルチさんに操縦させることも可能よ』

『魔導砲も積んでるんでしょ。こんなの一国の軍隊より強いわよ』

『武器はあんまり使いたくないけどね。実際に魔導砲を撃つより私が魔法を放った方がいいからね』

『ここからどうやって魔法を使うのよ』

『この珠に手を置いて魔法を唱えると機体の外側についている杖の先のようなところから放たれるようになってるの。この機体は前と後ろ、横と下と上に放てるようになってるわ。領軍機も前と下には放てるわよ』

『こんなの作って大丈夫だったの?』

『普段は魔導砲なんて積んでないし移動にしか使わないもん』

『でも強すぎよね』

『そんなことないと思うわよ。囲まれることはないと思うけど、墜落したらお終いだからね』

『でもミーアなら何とかしそう』

『ワープして体勢を立て直すぐらいかな』


そんなことをしている間にチャグル領に入ったようです。暫く飛んでいると目の前に異様な光景が広がりました。

「これは……」

瓦礫の山です。モルーマのいろんな街で見た感じと似ています。魔素の量は……変わっていません。

「兵器が使われた場所と言うのはここで間違いなさそうね。でも一体誰が……」

ここはモルーマからはかなり離れています。それに近くにあの機械の形跡はありません。

「とにかく誰かに話を聞いてみないと……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る