第161話 飛行隊創設(前編)
「ドラーガ様、モルーマの調査って知っててやったんですか?」
「悪いな、お前以外に出来る者がいなくてな」
「そうならそうと言っておいてくださいよ。死ぬところだったんですよ」
「ミーアなら死にはしないだろうからな。特に問題はなかろう」
「……(はぁ)
ドラーガ様、今度飛翔具を実用化しようと思ってます。一応報告しときますね」
「飛翔具とはあの空飛ぶ魔道具か」
「はい。一応移動用として作りますけど、すぐに戦力として組み込まれるでしょうね」
「それでいいのか」
「どのみち兵器としての運用が始まるのであれば、先にウチで運用の方法を固めてしまおうと思ってます。海軍もそうですけど防衛戦には出動しますけど侵攻戦には参加しないと言ってあります。国軍に編成される場合は侵攻戦には使わないという約束はさせますけど、先の事は分かりませんから。でもハイデルランドで見つかった遺物を調べればこれぐらいのことは出来そうなんです。それに旧文明世界で飛翔具のようなものがなかったとは思えないんです。もしそれが見つかって、現代の技術に置き換えて使うのでしたらまだいいんですけど、そのまま使うとなれば何が起こるか分からない。恐らく見つかる飛翔具は武器でしょうから、こちらとしても対応策を講じる必要はあります。私の作った飛翔具が武器として使われるのを恐れて何もしないよりは、平和を守るための力って言うのもありなのかなって思うようになったんです」
「きちんと考えているのであれば私からは何も言うことはない」
「それから異界の機械技術を使うのは暫く封印しようと思います。あれ、危険すぎるんで」
「そうか。好きにすれば良い」
今回の開発のポイントは魔石に直接刻印していた魔法陣を分けること。魔石に刻印することによって高い出力が得られるのに対して、魔法陣だとどうしても出力が下がります。そこで遺物にあった少ない魔力で強力な結界を張り続けていたやつがあったじゃない、あれを応用しようと思って。別に少ない魔力で飛ばしたいわけじゃないんです。そこそこの魔力を使っていいから高い出力が欲しいんです。
それにしてもあの時代の魔法陣は惚れ惚れします。いくら魔法陣の技術が廃れている現代だとしても、私はナビちゃんに魔法陣についての知識はかなり貰ったはずです。それに魔法陣の改良もかなりできると思っていました。浅はかでした。大人と子供です。Aランクの屈強な冒険者に3歳の子供が棒切れを振り回している、そんな感じ。チョッと言い過ぎたかな。
美しく機能的で効率的、恐ろしいです。何がかってそれはね、これが魔法陣っていう事ですよ。特性を持っていなくても魔法が使えるようになる。この技術を持つ人が驕り高ぶれば、神をも恐れなくなるのも分かるような気がします。神によって与えられた力であることを忘れてね。だから大神様は怒ったのね。
今は通信の魔道具を始め多くの魔道具に魔法陣が使われています。昔に比べれば稚拙なものですけど、それでも欠かせない技術です。今更魔法陣をなかったことにはできません。と言うことは腹をくくるしかないという事ですね。
もう一つ分かったことがありました。魔法陣を刻んでいたものです。今は銀の板に魔法陣を刻んでいます。ホントは
更にこの特殊魔鋼の板の両面に魔法陣を刻むことで相乗効果が得られることも分かりました。
これで材料は出揃いました。
「ポルティアの造船工房の奥って空いてたわよね」
「空いてますけど。今はいろいろなものが置いてありますけど、どかしてかまいませんから」
「じゃぁそこ使うわね」
「また何か始めるんですか?」
「またってねぇ…。新しい工房を作るわ。バイク、クルマ、魔道具、造船の各工房から異動させる人を選んでおいて」
「何を作るんです?それが分からないと選びようがありませんけど」
「飛翔具を作ります」
「飛翔具ってミルランディア様がアズラート戦で使われた空を飛ぶやつですか」
「うん。あれが作れる目途が立ったの」
「なら私もそれに乗れば空を飛べるのですか」
「もちろん。って、飛びたかったの?」
「大空を飛ぶって言うのは夢ですからね。ミルランディア様は自由に空を飛び回ってますから実感がないでしょうけど」
「私も最初に飛べるようになった時は嬉しかったからね。人選よろしくね。あと新しく領軍兵士になりたい人も募集しておいて。飛翔具も軍で運用することになるから」
実際に作り始めてからは早いですよ。私が陣頭指揮を執って魔法陣の設計、魔道具部品の作成、機体の設計、様々な試験をやる訳ですから。違うタイプだったけど作ったことがあるっていう事は大きいね。
『ねぇナビちゃん、昔の文明時代にもこういう魔道具あったんでしょ』
『あったわよ。まぁほとんどのものがあのころのものに比べると劣ってるけど、ミーアの作ったこの飛行機は性能から何から上回ってるわね』
『昔は飛行機って言ったんだ』
『空飛ぶ機械だからね』
『その名前使おうかな。で何、これってそんなに良くできてるの?』
『速度も速いし、形もずっと洗練されてると思うわ。機体の材質といい、飛ばすための仕組みといい申し分ないと思うわよ』
『他にはどんなのがあったの?』
『クルマも船もあったわよ。クルマはもっと速いのもあったし、船ももっと大きいのがあったわ』
『クルマはこれ以上速くならなくっていいかな。これ以上速くなると危ないからね。大きな船か、速さと強度の問題があるのよね。大きな船だとかなり強くしないと波の力で壊れちゃうから。強くすると重くなって速度が出なくなるのよね。そういう点では今のは丁度いい感じだと思うわよ』
『そうだね。あの時はみんな競って速くしたり大きくしたりしてたからね。それから汽車って言うのもあったよ』
『汽車?』
『汽車だけが通る鉄の道を沢山のクルマを引っ張って走るの。人やモノが沢山一度に運べるのよ』
『それよっ!今度それの事、もっと詳しく教えてね』
『いいけど、どうして?』
『詳しいことはその時ね』
(陛下とあんな話をしていたんだから、ナビちゃん知ってると思ったんだけどな)
ナビちゃんはミーアの独り言は聞いてるけど、誰かと話している時は聞かないようにしているんです。
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