第157話 回収!機械兵器

「ミルランディア、どうであった」

「モルーマの都の跡はひどいものね。人っ子一人いないわ。多分だけど大きな歪がいきなり街中に出来て、それで町が崩壊したんだと思う。大きな街だからそれだけで都全てが全滅はしなかったんだろうけど、その後多分裂け目から現れたものだと思うんだけど、機械兵器が沢山あったわ。この機械兵器が町を破壊しつくした。モルーマの都が亡んだのはこうだと思うわ」

「機械兵器か」

「ええ。まだ詳しくは調べ終わっていないんだけど、その機械兵器を動かすのに魔素が大量に必要だったんだと思われるの。いくつか動きを止めたやつがあるんだけど、魔素をエネルギーに変える仕組みがあったわ。あまり効率が良くないのか、異界と魔素の質が違うのかはわからないけど、大量の魔素を必要としたみたい。それで歪周辺で魔素の枯渇が起きたみたいね。いまでも普通のところの十分の一ぐらいしかないわ。

あとワイバーンのことだけど、多分その機械兵器に撃ち落とされたんじゃないかな。私の飛翔具も撃ち落とされそうになったし。それも光学迷彩を使ってる状態でよ。信じられなかったわ。そう考えるとワイバーンを落とすことぐらい簡単じゃないかな」

「この後はどうするんだ」

「これで終わりって訳にはいかないでしょ。最後までやるよ。特にあの機械兵器は厄介だからね。今のこの世界には技術的にもあっちゃいけないものよ。全部回収するつもり」

「そっちはミルランディアに任せていいか」

「いいわよ。そのつもりだし。機械兵器の回収が進んで魔素が戻ってきたら歪の方はよろしくね。あっちはどうやっても私の手には負えそうにないから」

「回収したものはどうするんだ」

「収納の肥やしよ。特に兵器の部分は出すわけにはいかないでしょ。ここだけはスティルガノ様に余計な力を持ったと思われても譲れないところよ。使えそうなところは小出しにしていくけど。ヘンネルベリの為じゃなくってこの世界のためになるものをね。ヘンネルベリから広がっていくのは仕方ないけど」

「ミルランディアのことだ。間違いは起こさんだろう」

「でもあの機械兵器、少し変なのよね。そもそも歪って言うか裂け目から機械だけが出て来るっておかしいじゃない」

「機械だけではなかったのだろう。異界の生き物も一緒にこの世界に来はしたが、環境に適応できずに死んだ。ただ機械に死はないのでそれだけが残った。そういう事であろう」

「なるほどね。一応気にはしておくけど異界の生き物については大丈夫ってことでいいかな。機械兵器の回収を始めるんだったらすぐに取りかかった方がいいわね」

時空の歪みが出来てからすでに半年近くの時間が過ぎています。その間に裂け目から出てきた機械の数、モルーマ全国に広がっているわけですから、数万、もしかしたらそれ以上の数の機械兵器が広がってるかもしれないんです。一つ残らず回収するのにどれだけの時間がかかる事やら。


**********


「ミルランディアを見かけた者はいないか」

「ミルランディア様ですか?ここのところ見かけてはいませんが」

「通信機で呼びかけてみてはいかがですか」

「そんなことはさんざんやってるよ。ほら」

『……………ただいま出ることが出来ません。時間をおいてかけなおしてください』

「何なんですかこれは」

「あいつ自分の魔道具を改造してるんだよ。魔道具を作ったのも通信機の仕組みを作ったのもあの娘だからな、ダメとも言えんからな。しかし必要な時に連絡が取れないのも困りものだ」

「前に使っていらっしゃった魔道具は如何されたのですか」

「あれはこの魔道具が出来た時に回収されたよ。こっちの方が便利だからな」

「どうかしたんですか?」

「農政大臣から報告があってな、今年は全国的に不作、北へ行くほどその傾向が強くなるとのことで、ミルランディアと相談がしたかったのだ」

「陛下はミルランディア様を頼り過ぎじゃありませんか」

「分かってはいるんだが、特に農作物についてはなぁ。中央政府が間に入らないと価格が目茶目茶になるのだ。供給を渋られたり買占めによる価格の高騰を招いたりとな。事前に集めておけば対応もできるのだが、常に余裕があるのはミルランディアのとこぐらいだからな」

「他に余裕のある所はないんですか」

「ミルランディアのところが特殊なんだよ。商会を介さないで作物を全て領政府が集める。農地が全て領政府のものだからな、それが可能なのだ。農民には毎月の給金を支払う。農民であっても基本的に農作物は買うのだぞ。他がどうなっているかはわかるだろう」

「そうですね。自分で開いた畑で自分達が食べるものと次に植えるための種の分を除いて商会に売る。売ったお金で税金を払い、領政府は集めた税金で必要な食料を商会から購入する。これでは儲かるのは商会だけではないですか」

「そうだ。足元を見て買い叩き、価格を釣り上げて販売する。商売だからある程度は仕方ないにしても、あまりにひどい場合は始動するように言ってはある。ただその酷い商会と言うのが領主とつるんでいることも多くてな、なかなかうまくはいかない。

その点ミルランディアのところは農作物が全て領政府の下にあるので、他領に売るのも商会に売るのもいくらでも自由が利くのだ」

「他でもそうすればいいのでは」

「実験的に始めたところもあるが、あの方法は規模が大きくないと厳しいらしい。軌道に乗るまでにかかる費用もバカにならないしな。だからミルランディアのところに頼ることになるのだ。ミルランディアが捕まらないのであれば仕方ない。財務、農政、商務局でミルランディア領との交渉に臨ませよう」

「ところでミルランディア様とはどれぐらい連絡が取れていないのですか」

「かれこれ半年近くになるかな」

「半年ですか………。心配ではありますね」


**********


半年の間どこをほっつき歩てるのかって?今もまだそうなんだけど、旧モルーマを飛び回って機械兵器の回収ですよ。やたら広いからね、ヘンネルベリとその周りの4つの国を合わせた以上に広いから。裂け目はいろいろな所にできたみたいで、回収するったって大変なんだから。最初に歪の周辺を片付けたから3カ月ぐらいしたら歪も直ったし、歪がなければ裂け目もできないから、あとはひたすら回収っと。


「ミーア、どれぐらい集めたの?」

「数えていないけど、たぶん7~8万ぐらいじゃないかな。でももう終わりよ。動いている機械ももうないし、壊れてた機械も集めたからね」

「じゃぁこれで帰れるんだ」

「そうだ、帰るって連絡しとかないと。ってなにこれ、リオおじさん陛下からの連絡が凄い事になってるんですけど。しょうがないわね」



半年ぶりに帰ったよ。陛下には小言をたっぷり頂いたけど。




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