第151話 カルセア島の探索

「えー皆さん、これから調査に向かう訳ですが、期間は7日です。7日後の17時にはここに戻ってきてください。遅れた場合はこの島に取り残されるかもしれないことを覚えておいてください。それから前にも言いましたが、調査の続行、中断の判断は調査員の方々が行うのではなく、護衛の方が行うようにしてください。護衛の方は状況の把握を怠らないようにしてください。第一の目標は全員が無事に帰る事です。調査を進めるのはこれから先まだ何度でも機会があります。調査員の方が中断の判断を聴かずに進めようとした場合は、調査員を置いて戻って構いません。調査員の方もいいですね、あなたたちの勝手で調査団を危険に晒す訳にはいきません。いざというときに切り捨てられるのは自分たちであるということを理解しておいてくださいね。

出発の前にこの島のどのあたりを調査に行くのか、先ほどお渡しした地図に記入して提出して下さい。それから通信の魔道具を1グループに1台お貸ししますので必ず持って行って下さい。

準備ができたところから出発してください」


みんな早く行きたくてうずうずしてるんだもん。危険なことが起きなきゃいいけど。

私はその7日の間何やってるのかって?港の建設よ。

ここと同じ規模の港を島の反対側ともう1箇所造らないといけないから。1つしかないと何かあった時に大変なことになるでしょ。お願いされてたことだからね、『港は2つできれば3つ』ってね。

にしてもこういう仕事って特別補佐の仕事なのかな。


3つ目の港の傍には大きな洞穴がありました、ドックに使って下さいと言わんばかりに。ならば使うしかありませんね。

2か所の港を造るのに少し早くなって合わせて6日で終わりました。早くなってないじゃないかって?

ドックも造ったのよ。港関連が2日ずつ、ドックが2日。ねっ。

その間、本部になっている港に帰ってきた調査員は2グループ8人だけでした。5人のグループと3人のグループね。残りの22人は全員夜営。調査員って結構タフなのね。自らの欲望には忠実ってやつか。


今晩はみんなが帰ってくる(予定)の7日目、私がやることは地中の奥深くから資源や素材、宝石などを集めることです。根こそぎ持って行くわけじゃないですよ。そんなことしたら環境がおかしくなっちゃうかもしれませんからね。あくまで人が掘れないところにあるものを少し頂くだけです。

『やっぱりオリハルコンやミスリル、アダマンタイトなんかは深いところの方があるわね。あれだけの凄い力と高温でできるのかな。これは地上で作るのは無理ね。長い間かけてできたものが少しずつ上に上がってきてるのね』

魔法金属や宝石は地中深くの岩の中に多くあります。鉄や金などの金属はさらに深いところ、岩がドロドロに溶けている中から集めます。こっちの方が集める手間が少ないことが分かったからです。

気が付けばかなりの量、鉄なんかは大艦隊ができるぐらい集めてしまいました。

『もしこのまま私が死んじゃったら、亜空間の収納に入っているものってどうなるのかな?』

『ちゃんと元の世界に還元されるから、心配しなくても大丈夫だよ』

「ちょっとナビちゃん、ビックリしたなぁ」

『ゴメンゴメン。最近1人で悩んでいることが多いから、少しでも力になれればなってね』

「そっか。ありがとね」


「そろそろお昼ね。みんなちゃんと戻ってきてるのかな」

資源の収集はさして時間はかかりません。どこかへ出かける訳ではないですす、私の人間離れした魔力を惜しみなく注ぎ込むわけですから。

探索を島全体に広げました。ホントはあまりやりたくはありません。だって頭の中に入ってくる情報量がハンパないんですから。お人形さんやマルチさんで鍛えた多重処理を駆使したとしても追いつきませんって。


ミーアなら何でもできるんじゃないのかって?いやこんなただの小娘に何を期待しているんですか。えっ?ただの見た目詐欺?ホントはアラ(ピー)のロリババアの癖に?

ねえ、ファイヤーボール打ち込んでいいかな。特製の青白い炎の巨大な奴を。


普通探索は自分の周り100~200mぐらいか、決まった方向に400~500mって感じで使うものなのよ。全域纏めてなんて使うもんじゃないんです。

「2グループぐらい遅れてるわね。あれじゃ今晩中に着かないんじゃないかしら」

もうすでに戻ってきているグループもあります。そういうグループも調査の結果を纏めたりとか忙しそうですけど。


探索をしていた時、小さな違和感を覚えました。歳を重ねた女性の勘とでもいうのでしょうか。

(全くうるさいわね。歳のことは言うなって言ってるでしょ)

『この辺りを調査したのはジョンのところね。えぇと、ジョン達は………、戻ってるわね』

「ねぇジョン、ちょっといいかしら。あなた達が調査た辺りの事教えてくれない」

「あっ、ミルランディア様。どの辺りでしょうか」

「ここら辺なんだけど」

「えぇと、特に何もない所でしたね」

同行した別の調査員や護衛からも話を聞きましたが、何もなかったと言ってます。何かを隠している様子はありませんでした。

「どうかしたんですか?」

「気になることがあってね。これからちょっと行ってこようと思うけど、ジョン達の一緒に行く?空振りに終わるかも知れないけど」

「もちろん同行させていただきます。ですがあのあたりですと行くのに1日がかりですよ」

「そこは気にしなくて大丈夫。それじゃぁ行きましょう」

そうか、騎士団や各方面軍の人たちは私のゲートの呪文を知ってるけど、普通の人たちは知らないのね。



「この辺だけどなんか気づいたことある?」

「いえ、前と同じですね。特に気になるようなものは……。お前たちはどうだ」

「探査の魔法を使ってますが、何もありません」

へー、この人は探査の魔法を使うんだ。

「探査の魔法ってどういうものなんです?」

「地面の中の様子を調べる魔法です。私は余り魔力が多い方ではないので、あまり深いところまでは探せないんですけど」

と言うことは探索の機能限定版ってところね。なら私も……

ん?何だろう。探索が弾かれる、ぼやける、吸収される……。どれも違うわね。んー、無かったことにされる…、そう、無かったことにされるこの感じ、これは一体。

「ねえ、あなたの単さってどれぐらい深くのものまでわかるの」

「多分30メートルぐらいだと思いますが」

「30メートルか。それじゃちょっと足りないかもね」

「どうかしたんですか?」

「50メートルぐらい下なんだけどね、なんかちょっと変なのよ」

「50メートルだと無理ですね」

「分かったわ。じゃぁ戻りましょうか」

「えっ?何かあるかも知れないんですよね。放っとくんですか?」

「変な気がするってだけだから」

「それを調べるのが私たちの仕事ですよ。姫様がここまでお膳立てしてくれたというのにこのまま帰るなんてできませんよ。たとえ何もなかったとしても何もなかったという結果も持たずに帰るなんてありえません」

「じゃぁチョット待っててくださいね、穴掘っちゃいますから」

50メートルぐらいの穴を掘るなんて大したことありません、トンネル工事に比べれば。それこそ目を瞑ってたってできちゃいますよ。マルチさんが見てるから。

「穴を掘って壁を固めてと。壁に階段を付けてと。こんな感じでいいわね。それっ!と」

「えっ?ええっ?えーーっ!!」

あっという間に出来た竪穴に周りの人たちはビックリです。目は目玉が飛び出るんじゃないかってぐらいに見開いてますし、口も顎が外れたんじゃないかってぐらいに開いています。そんなに驚くことじゃないでしょ。ジャスティンやアルトーンなんかこの程度じゃ何の反応もありませんよ。

「ひ、姫様。何をされたのでしょうか」

「地下の調査だから穴掘っただけよ。潜らないと調査できないでしょ」

「それはそうですけど……」

「行くわよ」


下まで降りてきました。

何かありますね。あるということは確信しましたが正体はいまだ分かりません。

「探査してみてくれない」

「はい。………えぇと………。すみません、何も見つかりませんが」

隠蔽の魔法が掛けられている。そう考えるのが自然みたいですね。となると私の違和感、優れた熟練の女の勘って言うのも捨てたもんじゃないわね。

「こっちのほうに確かに何かあります。どうします?」

「姫様が確かと言うのであれば行かない理由がありません。どうやら私たちでは能力不足のようですけど、またとない機会です。行きましょう」

掘り進んでいくと違和感の正体にぶつかりました。

「結界……」

地下、地中深くに大きな結界に守られた何かがありました。

『ナビちゃん、この結界何とかなる?』

『出来るけど全部解除するのはやめた方がいいわね。一時的にそこだけ解除してもまた自然に戻るみたいだから、その方がいいわね』

『やり方教えてね』


「ここに結界が張ってあります。認識の阻害、恐らく物理攻撃、魔法攻撃も防ぐでしょう」

「これがですか。言われなければ何もわかりませんね。姫様は向こう側が見えていらっしゃるんですか」

「ぼんやりとですけど。今からこの結界を一部解除して中に入ろうと思います。皆さんはもちろん行きますね」



「これは……、遺跡」




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