第150話 龍と精霊、のちミーア

「エリー殿、ミルランディアになんてことをしてくれたんだ」

「何をいきなり、騒がしいわね。ってドラーガ殿ではありませんか」

エリーって言うのが精霊神様で、ドラーガが龍神様。スティルガノ様は「龍」、「精霊」って呼んでたけどね。まぁ長い付き合いだから。

「ミルランディアが大神様に消されるところだったんだぞ」

「そんなことになってたの?」

「お前さんが与えた加護が大きすぎたんだよ。それに心に細工もしただろ。それにまぁウチの問題でもあるんだが、あの娘の寿命が延びたこともあってな、大神様に危険なものと目を付けられたってことさ」

「大神様には謝ったわよ。許しも得たし」

「でも許されたのは精霊であってミルランディアじゃない。実際に何度か消されかけたんだ魔物の異常発生や流行り病でな。ミルランディアが何とか切り抜けたからよかったものの、大変なことになるところだったんだぞ」

「知らなかった。大神様にお願いに行かなきゃ」

「もう話はついている。俺とお前であの娘の面倒を見ることになった」

「あ、ありがとう。妖精族としても助かったわ」

「それはあれか、ミルランディアの心のことか」

「あの娘の心はとても大事なの。今、あの娘に勝るものはないわ。この世界の全ての精霊がそう言ってるの。だから余計に怖かったのよ。邪な心が芽生えるのが」

「まぁ過ぎたことだ。まさか他にはいないだろうな」

「加護を与えた人はここ数百年いないわよ。今はあの娘だけ。祝福をした人はかなりいるけど、あの子ほどじゃないわ。1つか2つよ」

「一体ミルランディアにどれだけの祝福をしたんだ」

「はっきりわからないわ。数百、いや数千かも」

「よく無事でいられるな」

「清いだけじゃない、とても強い心の持ち主なのね」

「綺麗で強い心か。分からなくもないな」

「ところでさっき言ってた『寿命が延びた』って言うのは?」

「それはな、竜の血に寿命を延ばす効果があることを知っているか」

「聞いたことがあるわ。『竜の血は癒しの力がある。白き竜は長い時間を与える』だったかしら」

「そうだ。だがそれには続きがあるのだ。あまり知られてはいないがな。『輝く竜は永遠の時間を授ける』と言うのがあるのだ」

「輝く竜って言うのは?」

「虹竜、そして聖銀竜のことだ。俺は虹竜だ。そしてミルランディアに血を与えたのが聖銀竜なのだよ」

「じゃぁあの娘は永遠の命、不老不死って事なの」

「実際には不老不死と言う事ではないがな。永遠の時間と言うのは血を与えたものと同じ時間と言う意味なのだ。だが血を与えたエルフィと言う聖銀竜はまだわずか100歳に過ぎない。2万年とも5万年とも言われる輝く竜の寿命の中でエルフィは余りに若すぎる。そしてエルフィと同じ時間を貰ったミルランディアにはあまりに長すぎる時間だ」

「エルフィって子は知ってたの」

「知らなかったのだと思う。だからエルフィもミルランディアも寿命は2000歳ぐらいだと思っている。だがこのことはきちんと伝えなければならない。それは俺の役目だ」

「私もあの娘にちゃんと伝えるわ。そしてみんなで生きていきましょう」




**********




私は今軍艦の貴賓席に座っています。なんでこんなところにいるのかって?それは陛下に言われたカルセア島の視察ですよ。

まぁ視察と言う名の土木工事なんですけどね。港も無ければほんと何にもない無人島ですから。小さな漁船が泊まれる程度の港らしきものはありますけど、大型の船が入れるような港なんかあるはずがありません。


サウ・スファルもこの島は放置していたっぽいですね。本土から遠く離れた沖合に浮かぶ島。地図にも載っていない島を偶然漁民が見つけてサウ・スファルが領地にした。しかし開発をしようにも本土との距離という壁が立ちはだかって全く進めることが出来ない。恩賞でこの島の領主にすると言ってもみんな辞退。そりゃそうよね、人っ子一人居ない無人島。居るのは魔物だけの島の領主なんてただの罰ゲームだもんね。だからこの島については碌に調査もしていない。小さな港は漁船の待避所みたいな感じだったのかな。

そんなお荷物不良債権ともいえる島を払い下げと言う形でヘンネルベリに譲渡することについて反対はなかったそうだ。「開発できるもんならしてみろ」と言わんばかりに。

ところが出来ちゃうのよね。うちヘンネルベリに船はあるからねぇ。帆船じゃなく魔導エンジンで動くやつが。人も物も大量に運べるし、その船を護る船もある。後はカルセア島に何があるかだけね。


「見つかって欲しいのは鉱山かな。逆に見つけたくないのはダンジョンね」

「そうですね。大きな鉱脈でも見つかれば喜ばしい事です。本土からこれだけは慣れていれば流刑地としても適していますから」

「確かにね。逃げ出そうにも無理だもんね。でもまぁ調査してのお楽しみですね」


ポルティアを出港して3日目、今は島の周りをぐるぐると回っています。港に適した場所を探すためにね。

急げば1日で着くところだけど、今回は周辺の調査も込みだからゆっくりです。船には30人の調査員と護衛のための兵士、その他合わせて100人ぐらい乗ってるんだけどね。


「港の候補地はいくつか見つかったわ。一度上空から見てみるから全艦この海域で待機して」

「姫様、私めの同行をお願いいたします」

「私も」「私も」「……」

「皆さんはここで待機です。上陸は3日後、その間に調査グループの打ち合わせと護衛の兵士との調整をお願いしますね。特に調査員の方々、あなたたちは調査となると周りが見えなくなります。進退の判断は護衛の方に任せるのですから、その辺りはしっかりとお願いしますよ」

「承知しました」


島に飛んで行った私は急ぎ港の建設です。港自体はポルティアで経験済みなので大変なことはありませんでしたが、ここでも工事をするとは……

大型船が4隻、中型船が2隻泊まれる埠頭と波除けの防波堤、海底の浚渫に乗組員が上陸して寝泊りできる建物などが出来たのは、予定通り3日後でした。手伝ってもらわなかのかって?こんな工事誰が手伝えるというんですか。こんな真似誰もできませんって。


「さあ、上陸よ!」



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