第137話 女王の初仕事
『一、病に罹った人は外出を禁止する』
『一、病に罹った人は速やかに教会に届け出ること。支援が必要な場合は申し出ること』
『一、教会は病に罹った人を助け、必要であれば支援を行う事』
『一、パーティーや祝勝会など大勢で集まることは控えること』
『………』
……とりあえずこんなもんかな。
流行り病について対策を王国全土に発令しました。収まるとは思いませんけど急激な広がりは何とかなるかも知れません。でもこんな対策、もって半年だと思っています。その間に薬を何とかしなければ……
というものの、薬の材料が大変です。魔茸とユニコーンの角については私が集めるとして、それ以外の薬草なども種類が多いのです。しかも採れる地方がバラバラなのですから……
「ジャスティン、冒険者ギルド本部のマスターを呼んでくれる?」
「分かりました。薬草ですね」
「そう。調べたら採れる場所もバラバラだし、何より量が必要だから。国中のギルド総出で採集をしてもらわないと」
すぐに緊急依頼を出してもらいました。全部で20種類近くの薬草ですから、多少時間がかかるのはしょうがないですね。その間に私の担当の2種類を揃えますか。
採取された分は毎日ギルド本部に報告が上がるようになっているそうです。取りに行くのはすぐですから。
……アインの所から行こう。
カルシュクはまだ少し引っかかります。もう大分時間は立っているはずなんだけど……
「ごめんください、アイン様いますか?」
エルフィとウィンが一緒です。どう考えてもその方が話が簡単そうだからね。
「これは聖竜様、ようこそいらっしゃいました。お前も元気だったか」
「うん。それとね、こんなこともできるようになったんだよ」
ウィンは人の姿に変化しました。
「凄いじゃないか。どうしたんだ」
「えぇとね、ミーアがね出来るようにしてくれたんだ」
「そうか。楽しんでいるんだな。ところで何の用なんだ」
「えぇとすみません。お願いがあってきました。今、人間の世界で病が流行しています。私の国、この国もその病が広がっていて、薬を作るのにユニコーンの角が必要なのです。どうか私たちに角を頂けないでしょうか」
「聖竜様とミーアの頼みなら別に構わないけど、もう少し詳しく教えてくれない?」
病気ことや前にあった流行り病の時の薬のことなどを説明しました。
「ふーん。まぁ私たちにとっては角なんて生え変わるものだからね。奥に山ほどあるから好きなだけ持って行っていいわよ」
なんかとんでもないことを言われたような気がします。だってあの幻の薬の元とも言われるユニコーンの角を好きなだけ持って行っていいなんて言われたのですから。
「……あ、ありがとう。とりあえず20本いいかな」
「そんなんでいいの?遠慮しないでいいのよ」
「あんまり沢山一辺に持っていくと、いろいろ説明が大変だからね」
「でもミーアならあの収納に入れておけばいいじゃない」
「それもそうなんだけど、……うーん」
「いいから全部持って行っちゃってよ。無くなったら来るっていうのものも大変でしょ」
結局みんな持たされました。全部で300本ぐらいあったかな。
「足りなくなったら……「足りなくなるなんてことないと思いますから」」
「でも、全部貰っちゃったのに、どうするの?そんなに簡単に生え変わるものじゃないでしょ」
「他の里からもらってくるのよ。どうせ使い道のないゴミみたいなものなんだから」
「角をゴミだなんて……。でも他にもここみたいな里があるんだ」
「そりゃあるわよ。っていうか、結構いろんなとこにあるわよ。まぁ結界で守られているから簡単には分からないだろうけど。それにユニコーンがここにしかいなかったら、何かあった時に途絶えちゃうじゃない」
「それもそうね。じゃぁアインのお言葉に甘えて、何かあったらまたよろしくね」
「聖竜様とミーアならいいわよ」
ギルドに特別依頼を出してから2週間、多少のばらつきはあるものの薬草が集まってきました。もちろん魔茸も回収済みです。
一方患者はと言うと、一時期の急激な増加は収まってきましたが、それでもまだ増え続けています。それだけではなく、死者が増えているのも気になるところです。
先週、ファシールの受け入れ態勢が整ったので、少しずつ移し始めました。ここでもひと悶着あったんですけどね。
とある貴族、子爵だったか男爵だったか覚えちゃいないけど、そこの当主が罹ったのよ。一応ファシールには平民優先で移しているんだけど、「平民など後回しでいいから先に儂を連れていけ」などと言い出す始末。予め言ってはあったんだけどねぇ、聞き分けのない人は一定数いるみたいで、『自分は下賤な者どもとは違う優等種なのだから全てにおいて優先されなければならない』などと考えている輩がね。私が女王だと分かったらコメツキバッタみたいになるんだろうけど。
そんなのは放っておいて症状別に500人ぐらい送りました。あまり裕福ではない平民を中心に。
ファシールで何をするかと言うと、薬の効果を確かめるための試験なのです。もちろんファシールに移ってもらう人には説明はしてあるし、納得してもらっていますよ。騙して連れて行って
「ナビちゃん、薬の効果を調べるのはどうしたらいいのかなぁ」
「前の時は血液の中に毒素があったから、薬でその毒素を消すようにしたみたい」
「じゃぁ今回も血液で調べればいいのかな」
「そうね。ただ前の時は症状はよくなったけど、病気に罹る人は減らなかったの」
「具合が悪くなるのと、他人にうつすのは別ってこと?」
「そう考えて間違いないみたいね」
「ということはこの病気の原因は毒を作る何かがあって、その何かが人から人にうつっていくって事なのね。その何かを探してどうにかしないと、この病気を治したことにはならないって事か。その何かはどこにあるんだろう?」
「前もそうだし今もそうなんだけど、病気に罹ると息がしにくくなるじゃない。だから多分そこらへんに原因があるんじゃないかなぁ」
「そうね。息とか唾とかも調べた方がいいかもね。ところで、私ってこの病気に罹らないかな」
「ミーアは大丈夫だと思うよ。毒無効もあるし、竜の血が病気に対して強い耐性があるから。この病気だけじゃなくって大概の病気には罹らないと思う。ついでに怪我からの回復の力も増えてるからね。傷の治りも普通の人よりずっと速いし、体力の回復もね」
後半はホント知らなくていい情報でした。聞いたのは私なんだけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます