第134話 美少女ウィン(王都の異変)
「ところでウィン、アナタ人の姿にはなれないの?」
「うーん、分からない。やったことないし」
「試しにやってみてよ。もしできるんだったら、その方が安心だから」
「安心って?」
「この間の街での事みたいのがあると心配なのよ。人の姿になって私の傍にいてくれれば守ることが出来るからね」
「ミーアが言うならやってみるけど……。うーん…………。無理っぽい」
「出来ないのかなぁ。そっか、そういうときこそナビちゃんよね」
困った時のナビちゃんです。まぁ大概のことは教えてくれますからねぇ。
「ナビちゃーん。ナビちゃーん!」
「あっ!ミーアだ」
「あのさ、ウィンって人の姿になれないのかなぁ」
「ウィン?」
「あっ、ウィンって言うのは私の友達のアリコーンよ」
「アリコーン……。アリコーンっ!神獣の?」
「そうよ。そのアリコーンよ。ユニコーンの角とペガサスの翼を持った」
「神獣なら人の姿になることは出来ないこともないわね。やり方はっと……」
「ねぇウィン、人の姿になれるかも知れないって」
「そうなのっ!ならご飯も一緒に食べられるの?」
「そういう事よ」
「ん、わかったよ。ミーア、そのアリコーンの頭に手を当ててくれる」
「こう?」
ウィンの額に優しく手を翳しました。私の手が光り始めました。
「これって……」
「静かにして」
「………」
「うっ……うゎっ!」
「ウィン、大丈夫?」
「平気よ。なんか頭の中に一辺に入ってきたみたいな感じだったから」
「終わったよ。もう手を放して大丈夫」
「ナビちゃん、何したの?」
「
「じゃぁウィンは、いろんなものに変化できるって事?」
「そうね。でも知らないものには変化できないけどね」
「どうすればいいの?」
「変わりたいものを強く意識して、
「ウィン、やってみて」
ウィンは可愛らしい女の子になりました。見た感じ12歳ぐらいかな。とってもかわいいよ。胸も慎ましいし。
『よしっ!私の勝ちね』
何に勝ったのかは知りません。見た目12歳ぐらい年下の女の子と勝負なんて……。でも仕方ないじゃないですか、エルフィには完敗だったのですから。
やっぱりというか、当然と言うか、ウィンは何も着ていません。慌てて簡単な服を出してあげました。実はエルフィの時もそうだったから、なんとなくそんな気はしてたんですけどね。
「とりあえずこれ着ててね。裸って訳にはいかないから」
「わかったわ」
「新しい服を作るけど、どんなのがいい?」
「どんなのでもいいよ。ミーアが作ってくれるんでしょ」
「そうよ。今は旅の途中だから、動きやすい服よね。可愛いのは町に着いたら作ってあげるから。ところでエルフィ、エルフィの服ってどうなってるの?」
「
「最後に着てた服ってこと?」
「それもそうですけど、
「不思議ねぇ」
「だからこんなこともできるんですよ」
エルフィが人の姿に代わりました。驚いたことに着ていた服はウチの屋敷でメイドが着ている制服でした。
「それ、どうしたの?」
「
「それは何かもう……凄すぎて分かんないや」
「じゃぁ私も」
ウィンはくるりとターンすると、可愛らしいピンクのドレス姿になったのです。
「うん、これなら一緒にいられるね。3人でご飯食べたり、お買い物したりしてさ」
「ミーア達とのご飯、とっても楽しみ」
まぁ、にぎやかになったのは確かね。ほら『女三人寄れば姦しい』とか言うじゃない。その例から外れることはないんだろうな。
**********(side 王宮)
遡る事2カ月前……
「ヴォラント様、お耳に入れておきたいことが」
「なんだ」
「バオアクで病が流行しているとのことです」
「流行り病?」
「ええ、そのような報告が。ただ、広がりが急らしく、バオアクが麻痺しているとも」
「ギルドを通じて詳細を」
「はっ!」
「調査の方はどうなった」
「はい。病の勢いは収まる様子がありません。それにかなりの数の死者も出ているようでして……」
「症状の方は」
「高熱に息苦しさです」
「それにしてもバオアクか。まずいな」
「如何いたしましたか」
「いやな、バオアクという街がな。……うむ、仕方あるまい。バオアクからの人は王都への立ち入りを禁止する」
「それですと王都の経済が」
「今は病を王都に入れないことの方が大事だ。食糧はミルランディア領から融通してもらう」
「分かりました。各門に通達を出します」
しかしこの時既に、王都に病が入り込んでいたのだった。
**********
「ジャスティン殿か」
「ヴォラント様、如何いたしました」
「王都で一大事だ。国王陛下を始め主だったものが流行り病で倒れた」
「ヴォラント様は」
「私もだ。今この国の中枢はマヒしている。悪いがミルランディア様を」
「分かりました。ただもう少し詳しいお話を」
**********
「ミルランディア様、ジャスティンです」
「あれ、どうしたの?いつもより早いじゃん」
「申し訳ございません。王都を流行り病が襲いまして、すぐに戻ってきていただきたいのです」
「流行り病?もう少し詳しく」
「はい。初め西側のバオアクの方ではやり始めたのが王都に広がったのです。高い熱が出て、死に至る場合も」
「陛下の他は誰が罹っているの」
「王太子様、グランフェイム様、大臣もかなりの人が。王宮の使用人も半分以上は罹っています」
「街の様子は」
「分かりません」
「ところでジャスティンは今どこにいるの」
「フロンティーネですが」
「それならすぐに王都に向かって。クルマ使っていいから。それからトンネルを封鎖して。フロンティーネに人を入れないように」
「分かりました」
「私もすぐに戻るから」
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