第131話 旅立ち
数年の時が過ぎました。特に何かあったわけではありませんよ。そうたびたび事件がある訳ないじゃないですか。もしそんなことがたびたび起きるようでは、国として終わってますからね。ヘンネルベリはまだまだ大丈夫です。
「宰相様、お話って何でしょう」
「フィルスラード殿下のことなんですが」
「えっ?何の問題もなく、よくやってくれていますけど」
「そう言うのではなくって、国王様とも相談したのですが、私の補佐の仕事をしていただこうかと」
「殿下が宰相補佐ですか。ミルランディア領としては少し痛いところですが、わかりました。いつからになりますか」
「来月からお願いしたいと思ってます」
「伝えておきますね」
フィルもいよいよ国王候補ですか。頑張ってくださいね。そうだ、キッシュの事も相談しておいた方がいいネ。
「ルイス伯父さん、キッシュの事なんだけど」
「何かやったのか」
「そうじゃないんだけど。っていうか、もうちょっと信用してあげなよ。一生懸命やってるんだからさ」
「そういう訳じゃないんだが、ジャルの一件があったからな。つい……」
「キッシュにミルランディア領の領主代理をやって欲しいと思って」
「ミーアはどうするんだ」
「暫くはこのまま領主の仕事をするけど、旅に出ようと思って」
「やはり歳の問題か」
「ええ。このところパーティーやお茶会も避けてるの分かるでしょ。同じ年代の人と比べると、最近やっぱり見た目がね」
「いっその事公表してしまえば」
「どう言うんです?『寿命が長くなりました』とでも言うんですか」
「直接的じゃなくてもいいんじゃないか。『死にそうになった時に、死の淵から戻った時の影響で、年齢と見た目の間に何らかの影響があるようです』あたりで」
「それでエルフィに何もなければいいんですけど」
「原因について聞かれても知らぬで通せば、問題なかろう」
「国王と言う話も困るんですけど」
「それも、『何が影響しているか分からないから国王に就くことは出来ない』でいいのではないか」
「それならいいのかなぁ……」
「まぁ考えておいてくれ。それからキッシュについては構わないぞ。奴で足りるのであればな」
「ポルティアが出来ているので、ミルランディア領でも大丈夫だと思いますよ。それに伯父さんが思っているよりしっかりしてますから。それにそろそろ公爵にしなきゃいけないんじゃないんです?」
「王族公爵な。それもある」
「フィルもキッシュもミルランディア領でも働きとしては十分だと思いますよ」
「なら、次回の王族会議の時に提案してみよう」
ミルランディア領の方も順調ですよ。フロンティーネはヘンネルベリ第2の都市として発展を続けているし、ポルティアはヘンネルベリの表玄関として交易の要になりました。
麦、豆、芋など十分な量が採れるようになったため、食べ物がなく貧しい生活を強いられる人が減ったことは大きな成果です。今のところミルランディア領には大きなスラム街がないのです。まだ王都のスラムを解消させるにはいってないですけど。
工房も計画通りだそうです。船は貨物船や大型の漁船に移行しました。軍用の船はしばらく無しですね。小型の漁船は作ってませんよ。あれはニールや他の港町にある工房が手掛けているので、邪魔しないことにしてるんです。技術協力はしています。この間も小型の船用の
クルマがねぇ問題なのよ。大型から小型、軍用のものなどいろいろな種類があるから、なかなか生産が追い付かないみたい。このところ貴族や商会からの注文も増えてきているようですし。工房広げた方がいいのかしら。
面白いことをやってるのがバイク。バイクに小型のエンジンを積もうとしてるみたいなの。まだ上手くいってないみたいだけど、出来たら面白そうよね。馬車の代わりにクルマ、騎乗馬の代わりに魔導バイク。頑張ってもらいましょう。
と言うことで、もうすっかり私抜きでも領の運営が出来てるんです。アルトーンがしっかりやってくれてるっていうのが大きいんですけど、アルトーンとキッシュの組み合わせでも十分じゃないのかな。
「……と言うことで、少し領を離れようと思います」
「行ってしまうのか?」
「行ったっきり帰ってこない訳じゃないですよ。とりあえず1年ぐらいしたら帰りますから」
「どこに行くんだ。王国内か」
「決めていません。だけど、王国の外に行く予定です」
「外と言ってもサウ・スファルとかじゃないんだろ」
「そうですね。海を越えて行こうと思ってますから」
「ミーアのことだから心配ないと思うが、気を付けるんだぞ」
「エルフィとウィンが一緒ですから」
「連絡ぐらいしなさいね」
「何かあったら通信の魔道具で連絡できると思いますから。でも、あんまり呼び出さないでくださいね」
「わかってる。みんなもいいな。特にキッシュ、お前はこれから大変だぞ」
「頑張ります」
「出発は叙爵式の後にしてほしいのだが」
「いいですよ。王族としての務めですから」
さて、どこへ行こうかな。行き当たりばったりになりそうだけど、気ままな旅だしいいかもね。
エルフィ、ウィン、行くよっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます