第130話 再結成『金色の月光』
「ミルランディア様、ダンジョンの件なのですが」
「何かあった?一応あの後も調査は続けているけど、問題はないわよ」
「そうではなくって、あのダンジョンの情報を公開しないのでしょうか」
「そっちのことね。いいと思うわよ。ただ超難関ダンジョンの一つよ。通路は迷路だしトラップも多いし、下に降りるために一度上に上がらなきゃならないところもあるし。それよりも辿り着くことが大変なんだけど」
「『新しいダンジョン』として情報を公開すれば冒険者も増えると思うんです。北の森の一件で危ないっていうイメージがついちゃってますから、払拭するためにも是非ともお願いしたいところです」
「冒険者ギルドと相談してみましょうか。まぁあそこが止めるとは思いませんけど」
「そうですね」
冒険者ギルドよりミルランディア領で発見されたダンジョンの情報が公開されました。超難関ダンジョンとして。一応場所も公開してはありますけど、何せ森の中ですから。
階層情報などは非公開です。それは冒険者たちの稼ぎに繋がりますからね。頑張ってもらいましょう。
私は今、王国北部のドルア伯爵の所へ来ています。
「ローデ、久しぶり。どう?」
「ミーア、じゃない姫様か」
「ミーアでいいわよ。あんまり変わらないようね」
「おかげさまでね。ここでの仕事も、いろいろと任されることも増えてきたからね。充実してるよ」
「ねぇ、もう1回冒険してみない」
「冒険かぁ。未練がない訳じゃないけど、『金色の月光』もなぁ」
「カッチェとセリーヌには話してあるんだけど、ローデがやるって言えばだって」
「俺次第って事かよ。で、なにやるんだよ」
「ダンジョンだけど」
「ダンジョン?」
「最近ね、私の領地でダンジョンが見つかったのよ。そこに挑戦できないかなって」
「待てよ、ミーアの所のダンジョンって難しいんじゃなかったか」
「確かに難しいけど、ローデなら大丈夫じゃないかなって」
「でもディートがいないんだ。殿を任せられる奴がいないと……」
「やる気になってきたようね」
「そうじゃないよ」
「殿は私がやるわ。ディートは剣技が凄かったけど、殲滅力だったら今の私の方が多分上だから」
「それにしても前衛が足りない。もう一人前衛がいないと」
「エレンだったらどう?」
「エレンって、ベルンハルドのギルドの受付の」
「そう。私の護衛をやってくれてるのは知ってるわよね」
「あぁ」
「彼女は前衛だから問題ないと思うわ。実力的にも問題ないと思うし。ウチの若いのを鍛えているぐらいだから」
「じゃぁ、俺の仕事次第って事か」
伯爵から2週間のお休みを貰いました。これで心置きなくダンジョンに向かえます。
「すぐには行けないぞ。準備もあるし、それに俺たちは冒険者から離れてたからな。昔の勘を取り戻すのと連携を確認しないと危なくってな」
「それじゃぁ南の森で少し慣らしてからならいいわね」
ディート、カッチェ、セリーヌ、エレン、私の5人は南の森で魔物狩りの慣らしを行っています。
「でも不思議よねぇ。こうしてまたパーティーを組めるなんて」
「あの事件の後、もう諦めてたからね。パーティー解散なんて言われたから」
「でもミーアには感謝だな。こうして集めてくれたんだから」
「今回は私がダンジョンに行きたかっただけだから。どうせならみんなと一緒の方がいいかなって」
「でもこうしてまた会えたわけだし、エレンさんも入ってくれてパーティーとして動けるようになったからな」
「そろそろダンジョンに行ってもいい頃じゃない」
「じゃぁ必要なものを買って、明日にでも出発しようか」
「ねぇミーア、まさか森の中を進むわけじゃないわよね」
「ダンジョンの入り口までは魔法で行くつもりよ。森の中を進んだらダンジョンに着くだけで終わっちゃうから」
「そんなに遠いのか」
「5日ぐらいかかりそうね」
「超難関ダンジョンだけのことはあるんだな。着くまでも試練とは」
「ミーアがいないと攻略できないんじゃないの?」
「そこまでではないと思うけど。でもかなり大掛かりなパーティーで、準備をしっかりしておかないと厳しいことは確かね」
「じゃぁ、明日出発な。みんな頑張ろうぜ」
「「「「うん」」」」
「ここがそのダンジョンか」
あの時のように魔素が噴き出してはいません。ただぽっかりと口を開いた入口があるだけです。
「行こうか」
先頭はカッチェ。エレン、セリーヌ、ローデと続いて最後が私です。リーダーは私じゃなくってローデ、まぁ慣れてるからね。
「一応探索はするから」
「ミーアは探索が出来るのか」
「一応ね。このパーティーで私の役回りなんてサポートぐらいしかないじゃない。だから探索と荷物持ちは任せて」
「ミーアの魔法は頼りにしてるんだから」
「頑張ります」
「そう言えばこのダンジョン、通路は分かるのね」
「濃い魔素に晒された壁がぼんやりと光るらしいのよ。だからなんとなく明るいんだけど、でも見えるって程ではないのよね。ヒカリゴケと同じよ」
「ミーア、近くに冒険者はいるか?」
「いないわ。今このダンジョンに入っているのは私たちだけみたい」
「なら灯りは点けないで進もう。魔物との戦闘の時には点けるが、その時は眩しさ除けの眼鏡をするようにな」
「「「「了解」」」」
「カッチェ、覚えているか。迷宮の進み方を」
「忘れていないわ。見通しの悪いところでは小石を投げて様子を見るのよね」
「ならOKだ。セリーヌ、マッピングよろしく」
「うん、まかせて」
私たちの楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
結局3階まで探索を進めました。魔物も結構な数出てきて、ちょっとヒヤッてするところもあったけど、多くのドロップ品も集めることが出来ました。
「このダンジョン、超難関どころの騒ぎじゃないだろ。こんなの攻略なんて無理だから」
「そうね、ミーアがいたから行けたけど、ミーアなしでは無理ね。安全地帯もないから夜営にしても大変よ」
「その点、ミーアのなんだっけ、あの家……」
「ディメンジョンホーム?」
「そうそう、それ。あれはいいわね。とてもダンジョンアタック中とは思えなかったわ」
「あれが今回の一番の反則技かもしれないな」
「そんな反則技なんて……」
「でも実際、ミーアのやった探索と収納、それにディメンジョンホームがないと下には行けないかもしれないな。単純に戦闘力だけでゴリ押しは無理だ」
「でも私は楽しかったわ。みんなありがとうね」
「私も」
「またやる?」
「いや、もうないな。俺たちはそれぞれやらなきゃいけないことがあるし、ミーアだってそうなんだろ」
「まぁね。領主で、公爵で、王族で、国の仕事もしてるからね。今回だってエレンが来てくれたからできたようなもんだし」
「また集まるぐらいならできるよね」
「それなら問題ないな。街道がきれいになって、乗り合いのクルマが走るようになったから、どこに行くにも時間がかからなくなったしな」
「また会おうね。そうだ、ドロップは3人で分けていいから」
「ミーアはいいのか。ってかエレンさんの分はダメだろ」
「私の分は気にしないで。今回はミーア様の護衛兼見張りで、別で特別手当が出ることになってるから」
「ちょっとエレン、それどういう事?私知らないよ」
「ある筋からの依頼って事です」
王都に戻ってから、ドロップ品を分けました。みんな目を丸くしてましたよ、あまりの多さに。
「こんなには貰えないわ。ホントにこれ今回のドロップ?」
「そうよ。拾えるもの全部拾ったからね」
大きなお土産を持ってみんな帰っていきました。
「じゃぁまた会おうね」
王都のお屋敷で、お茶会でも開きましょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます