第129話 魔道具の現状

『魔道具』

魔力を使って動く道具。灯りをともす魔道具、水を出す魔道具、火を起こす魔道具など。

もちろん魔法を使ってもできる。でもいろんな属性の魔法を自由に使える人は殆どいない。使えても2種類ぐらいだ。そんな人でも魔道具を使えばいろいろなことが出来るようになるんです。

でもその魔道具を作れる人、魔道具職人って言うのが少なくって、どうしても高価になってしまうんです。

火をつけるとか水を出すっていうのは簡単だから安いんだけど、温かいお湯を出すっていうのは一気に複雑になるから高価になるって感じね。


魔道具を作るには錬金術を使うんだけど、この錬金術のスキルの認識があまりよくないのも原因の一つね。錬金術って言うとポーション作り程度にしか思われていなくって、でもそのポーションの需要が多いもんだから一度始めちゃうとそればかりに追われることになっちゃうの。だから黙っている人も多いわ。もう少し錬金術師の地位向上を図った方がいいかもね。


魔道具の仕組みは大きく分けて2つ。1つは魔石をそのまま使うもの。そのまま使う場合はその魔石の属性にあった効果が得られるの。それをコントロール仕組みを付ければ完成ね。でもこれだとあまり複雑なものは作れないわ。その代わり錬金術師じゃなくても作れるもののあるの。

複雑な効果を使った魔道具は、魔石に魔法を発動させて使うの。この間作った通信の魔道具がその例ね。

あの魔道具は『遠隔通信』って言う魔法を発動させてるんだけど、そのためには魔法陣が必要なの。でもこの魔法陣って言うのが厄介で、今ではほとんど廃れてしまっているから技術が失われちゃっているのね。私には『世界樹の記憶ウラワザ』があるからいいんだけど。

私は魔石に魔法陣を直接描けるけど、そんなこと出来る人なんて他には知らないわ。エルフの技術とかドワーフの技術って言われるけど、ヘンネルベリではあまり見ないからね。なのであれを作った時は別に魔法陣を作って動かしているのよ。ただ効率が果てしなく悪いから多くの魔力が必要になってしまったけどね。でもそのおかげで高度な技術を持つ錬金術師じゃなくても作れるようになったけどね。


あっ!そういえば私の魔法のカバンだけど、あれは魔道具って訳じゃないから。ごく普通のカバンに魔法をかけ続けているだけだから。ほら、剣士が自分の剣に炎を纏わせるのと同じだから。



何でこんなことを言ってるかと言うと、森の一件以来冒険者ギルドのギルドマスターが魔道具に興味を持って、今日も来てるんです。

「姫様、商業ギルドのマスターと話したのですが、魔法の袋は作れないのでしょうか。冒険者や商人の間でも荷物の問題が大きくて」

「あれって常時魔法を維持してないといけないんですよ。実際そんなこと出来ます?」

「そうなのですか。姫様はいつも使っていらっしゃるので、出来るのかと」

「私だっていつも魔法を維持してますけど。それこそ寝ている間も」

「そんなことを……」

「訓練次第ではできるようになるかもしれませんけど、他のこと出来なくなりますからあまりお勧めしません。それこそスキルでもないと」

ホントの事言うと、出来ないことはないんです。ただ効率が重要なので魔石を空間属性にしなければなりませんし、魔法陣を直接描かなければダメなので普通の錬金術師では無理なのです。更に魔力供給用の魔石も必要になるのでそれだけでも結構な代物。更に時間経過をいじれるようにしたり、使用者を限定するようになんてしたら、王都の一等地に大きなお屋敷が買えるぐらいになっちゃいます。まぁ言い替えればそれだけ空間魔法って便利って事なんですけどね。


あと、あの偵察に使った魔道具、あれもねだられたんだけど、あれは決定的にダメなことがあるので諦めてもらいました。何と言ってもあれはお人形さんですから。


「それより魔道具を扱うギルドってないんですか」

「生産ギルドの中に魔道具の部門はあるんですが、開店休業って言うか活動はしていませんね。そもそも人が少ないんでどうしようもないんです」

「魔導ギルドで魔法陣の研究は?」

「それもないですね。そもそも魔法陣自体が失われた技術なので、今では知らない人も結構いるぐらいですから」

「でも姫様のおかげで少しずつですが動き始めたんですよ。あの通信魔道具の衝撃は大きかったんです」

「あれはね。みんな頑張っているみたいですし」

「姫様の設計がしっかりとしていたので、何とかなっています。新たに魔道具工房を起こした人もいるぐらいですから」

「そこで姫様、あの映像を送る技術の公開の方は……」

「あと音と映像を記録する魔道具の方もお願いします」

「今すぐはちょっと難しいんで、整理出来たらですね」

「期待して待ってていいんですね」


魔道具の置かれているとこがなんとなくわかったような気がします。上手に使えば便利になるのに少しもったいないような気がしました。

協力をすることは構わないんだけど、戦争や人殺しに使われるようなものや、魔石の魔法陣加工、それはダメね。アズラートとの関係が一段落した今では、ヘンネルベリが戦争の脅威に晒されることは少ないと思うけどね。




そういえば言ってなかったっけ?今うちの使用人の間で結婚ラッシュなのよ。主人である私を差し置いて。

メイドさんと警備の人とか、もう5組ぐらい成立したかな。その中でも特筆しなきゃいけないのが、ジャスティンとマリアンナが結婚したこと。羨ましいぐらいいいカップルよね。ジャスティンは家宰として公爵家を支えてくれているし、マリアンナはそんなジャスティンをしっかり支えてたから。


でもあのエレン一派のマリアンナがねぇ。どうなっているんだろう。気になんかならないよ。聞きもしないし、覗きにもいかないから。捕まったら私が危ないもん。


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