第127話 ダンジョン(前編)

「見つけたっ!」


掃討作戦を開始して二月近く、ようやく森の中にダンジョンの入り口を見つけました。一見何気ない洞穴のようですが、魔素に注目したところ大量の魔素が勢いよく噴出していたのです。


「ここがそのダンジョンですか」

「そのようね。こうやってみるとただの洞穴だけど、確かに魔素は噴出しているわ」

「ここは森のどのあたりなのですか」

「このあたりよ」

森の地図で見つけた穴に場所を刺しました。入口からかなり離れたところで、冒険者の足でも5日はかかるでしょう。

「……こんなところに。どうしますか。冒険者を向かわせるのですか」

「冒険者は無理ね。今の森で野営なんかしたら、それこそ全滅よ。それに多分近づけないと思うの。あれだけの魔素を浴びたら死んでしまう可能性もあるからね。放っておけば収まるって事らしいんだけど、それじゃぁいつになるかわかんないんで、前に話したようにドラゴンを使うわ」

「姫様のドラゴンですね」

「私のって訳じゃないんだけど。その前に中を調べてからだけどね」

「いよいよ終盤ですね」

「そうね。もう一息、皆さん大変だとは思いますけど、お願いしますね」


間引きはまだ終わっていませんが、優先順位が変わりました。ダンジョンの探索です。久しぶりに全開のマルチさんでの迷宮探索です。


『かなり広いわね』

マルチマップは私の意識(マルチさんのいるところ)のマップは展開できます。どこまででもという訳にはいきませんが、ダンジョンのワンフロアぐらいなら問題ありません。

迷路のような通路に大小の部屋、隠し部屋もあるみたいです。下に降りる階段を探します。

『これは骨が折れそうね』

マップを頼りにマルチさんによるローラー作戦です。外程ではないにしても魔物も結構います。外ではほとんど見なかったスライム系がいます。

『後で回収したいわね、スラ研の為にも』

どうやらこのフロアには罠の類はないようです。探索を続けると、階段が見つかりました、4つも。そのうち1つは上に上がる階段、つまり地上に戻る階段でした。他のは降りる階段です。

『厄介なダンジョンね』


今日の所は一維持中断です。対策メンバーと情報の共有です。

「一応最初のフロアだけ調査したわ。その内容を話すわね。まず広さなんだけど、かなり広いの。慣れたパーティーでもフロア全部の探索となると4~5日かかるんじゃないかな」

「1階だけでですか?」

「そう、最初の階だけで。とにかく道が入り組んでいて袋小路も多いし、見通しが聞かないから警戒も大変なの。それにそこそこの数の魔物もいるから。この階は大したものはいないようだったけど。で、問題になりそうなのが、階段が沢山あるって事。降りる階段が3つ、上る階段が2つあったわ」

「別の入り口があったって事ですか?」

「そういう事ね。別の所に出たから。降りる階段はまだ調べていないわ」

「だとするとこのダンジョン、ヘンネルベリの中でも最難関級、いやこの大陸においてもそうなるかも知れませんね」

「ギルドとしてはこのダンジョンどうしたいの?」

「沈静化が出来れば冒険者に開放していただきたいと思いますが」

「森の開発はしばらくは無理よ」

「そこが問題ですね。何せダンジョンまでの往復だけで10日、さらに第1階層だけでも探索に時間がかかるとなると、今の冒険者では難しいですね」

「とりあえず沈静化させてから考えましょう。あとダンジョン内の魔素ですけど、思った通りかなり濃いです」

「その魔素の濃いところが上位種を生み出す鍵なんだろうな」

「明日以降続きの探索を行いますので」

「ところでダンジョンの中はどんな感じなのですか?」

「どんな感じかと言いますと?」

「床や天井、壁の感じや、明るさとか」

「綺麗ですよ。つるつるという訳じゃないですけど、床は山道ぐらいの感じです。壁や天井は崩れてくる感じはありませんでしたし、ぼんやりですけど周りは見えました。これについては魔素の影響があるかも知れませんけど。あと、罠はこの階にはないようです。フロアボスみたいのもここにはいないようでした。安全地帯については分かりません」

「この状況で安全地帯は期待できませんから」

「入るだけで命の危険があるというのに、安全もへったくりもないわな。ミルランディア様、引き続きよろしくお願いします」



その後10日ぐらいかかってようやくダンジョンの全貌が分かりました。全部で18階層。2階から先にはフロアボスと思わしき魔物がいました。面倒だったのが、ただ下に降りるだけではだめで、一度上ってから降りるところなどがいくつもあったところです。冒険者殺しですね。基本ダンジョンは下に降りればいいと思っていますから。下に降りる階段がトラップと言う所もありました。降りたらモンスターハウスみたいな。


「エルフィ、ちょっといいかな」

「何?ミーア」

「エルフィって魔素を正常化することってできる?」

「多分できると思うわ。私たち竜は魔素をいかようにも使うからね。でもあんまり多いと大変かな。でも何で?」

「北の森でね、魔素が溢れ出すダンジョンが見つかったのよ。そのままにしておけないから何とかしたいんだけど、エルフィにお願いできないかなって」

「いいわよ」


エルフィにダンジョンの様子を話したところ、とてもじゃないけど一人じゃ無理って言われちゃいました。

応援を呼ばないとダメって事ね


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