第85話 公爵領の帝国(前編)
『店は1棟に10軒もいらないね。2つか3つあればよさそうだな。店を3軒にしてあとは倉庫にでもしましょうか』
集落の視察を終えた私は仮設住居案の変更に取り掛かりました。畑の数も当初500区画ぐらい用意する予定でしたが、大幅に減らして160区画にします。1世帯1区画ですね。今までが40世帯で10区画ぐらいでしたから、これでもだいぶ広くなったはずです。
真ん中に大きな通りを作って、その両側に住居を2棟ずつ建てます。店は真ん中に集まるようにして、通りに面するようにします。倉庫の入り口は裏側ね。馬房は通りから見て建物の裏手。畑は建物の先に作ります。川から水を引いて、まぁざっとこんな感じでしょうか。
区画に合わせて塀を建てます。駐屯地ほど立派でなくていいので高さ3メートル幅1メートルぐらいで囲みました。入口の門は中央の通りに繋がっています。居住地と畑の間を柵で区切れば大体イメージができます。
同じように駐屯地の方も居住区、倉庫、馬房の予定地に柵を立てて分かるようにします。
それでは帝都に行くとしますか。
**********
「ヘンネルベリのミルランディアですけど」
「こちらへどうぞ」
あれだけ何度も門のところで衛兵とやり合ってたら、さすがにドルアさんが気を効かせてくれて、身分証っていうか通行証っていうかそういうものをくれたの。見せたらとりあえず宮殿の応接室に通してくれることになったようです。
「ミルランディア殿、今日は何の用件で」
「ドルアさん久しぶりです。今日は駐屯地について相談に来ました」
「1000人規模で作るといってたやつですね」
「一応構想が纏まりましたので、一度確認をしてもらおうかなって。それと、私帝国の人ってドルアさんと陛下しかよく知らないんですけど、ドルアさんって忙しい方ですよね。私いつも突然訪ねるから迷惑じゃないかなって。ドルアさん以外の私の担当がいたら紹介してもらった方がいいかなって」
「私がヘンネルベリ王国とミルランディア殿について陛下より全権を託されています。なので私がいればいつでも応対いたします。私が所用で出ている時は部下が私の戻る時を伝えることとなっていますので、いつ来られても構いません。それにミルランディア殿はどこからでもすぐにこちらに来ることはできるんでしょうから」
「まぁそうですね。じゃぁ私が必要と思った時には寄らせてもらいます。で、駐屯地ですが、直接見ながらお話をした方がいいかなと思いますけど」
「分かりました。部下の同行は構いませんよね」
私とドルアさん、部下3名で駐屯地予定地に行きます。もちろんワープでね。私にとってはいつものことですけど他の4名は初体験、驚いていました。これからの方がもっと驚くんだけどね。
「ここは…」
「駐屯地の予定地です。その壁は高さ5メートル幅2メートルで駐屯地の周りを囲っています」
「これをすぐに作れるのか」
「まぁ。ここからだと全体が分かりにくいので分かりやすいところへ行きたいと思います。チョットびっくりするかもしれませんけど慌てないでくださいね。浮遊!」
上空へ上がります。50メートルぐらい上がりましたかね。全容が見えます。
「うわっ!」「ちょっとっ!」「何だっ!」
ほらそこの3人、うるさいよ。黙って見てなさい。
「これが駐屯地の全容です。川側に居住区などの施設、奥が演習場となっています。森の方は壁を作っていませんから対魔物の訓練もできます。門は分かりますよね。門を入って川沿いの壁側に兵舎を建てる予定です。1棟に100室の集合住宅にします。それを10棟建てる予定です。居住区の前には倉庫を建てます。一応大きめな倉庫を5つ建てようと思っています。森側には馬房を作ります。100頭ぐらい入れるようにしようと思ってますけど、足りますよね」
「あ、あぁ。十分だ。演習場はどれぐらいなんだ」
「奥は1キロぐらいあると思います。幅も500メートルぐらいはあるんじゃないかな」
「じゅ、十分だ」
「あと、門のところに橋を架けたいんですけどいいですよね」
「あぁ、兵士用の橋って事だろ。構わないぞ。それよりあの隣は何なんだ」
「あそこは領内にある集落に住んでる人たちの仮住まいを建てる予定地です。領内に住む方は全てあそこへ越してもらいます。領都並びに領内の開発に支障が生じるためです。一時的にあそこで生活してもらって、最終的に帝国領に戻るのか王国に移住するのかを決めてもらおうと思っています。駐屯軍としても護るべき対象が1箇所に集まっていた方が護りやすいでしょ。あと軍の訓練で魔物狩りをして、そのお肉を隣に差し入れてあげてほしいんですけど。あの森の外縁部にはオークとかが適当にいますから」
「承知した。しかしながらいつもミルランディア殿にはいろいろと驚かされるな」
「予定地はこんな感じですけど、いいですか」
「悪いが兵舎がどんな感じになるか教えてはもらえないだろうか」
「いいですよ。じゃぁ降りましょうか」
流石はドルアさんです。降りた後も足元はしっかりしています。3人組はダメでしたね。降りた途端にヘタってしまいました。
私は錬金術と創造術、土系の魔法を駆使して兵舎の1室を作ってみました。
「こんな感じを予定しています。さぁ中へどうぞ」
一般兵用の1部屋タイプです。
「あまり広くはありませんが、入ってすぐにトイレと洗面所それから風呂ですね。反対側が寝室です。突き当りのドアの先が居間兼食事場です。台所はここになります」
「これが一部屋か」
「そうです。少し狭いかもしれませんけど、長くて5年ですからねそれぐらいは我慢してください。これは部屋が1つのタイプですけど、もう1種類部屋が2つのタイプも用意しようと思っています。1つのタイプが800室、2つのタイプが200室の予定です。予定としてはこの部屋を20戸横に並べたものを5階建てにするつもりです」
「ドルア様、自分はこのような立派な兵舎を見たことがありません。ミルランディア様には私たちの兵舎を見てから建てていただいた方がいいのではないでしょうか」
「それはそうなんだが………。ただ5年で潰してしまうのも惜しい気がするが」
「そこは心配なさらなくて大丈夫ですよ。帝国駐留軍が撤退した後は領軍の練兵場として使う予定です」
そう言えば王国軍の一般兵の宿舎なんて見たことないや。やっぱり酷いのかな。
「それでいつぐらいにできるのかな。これだけの規模だとかなりかかると思うが」
「そうですねぇ、
「一月だと?一月でこれができるのか」
「大丈夫だと思いますよ。あとここが出来たら砦は明け渡してくださいね。砦への駐屯は許していませんから」
「わ、分かった」
「じゃぁここが出来たらまた伺いますね。それじゃぁ帰りましょうか」
**********(side ドルア)
「ドルア様、あの駐屯地……」
「分かっておる。だから言うな」
とんでもないものをサラッと作るな。どこの兵舎に風呂などあるのだ。考えられん。普通なら共同の水場で体を流す程度だというのに。
辺境の駐屯など2軍、いや3軍を当てようと思ってたのだが、考え直さねばならんな。
あれだけの施設をみすみす逃すのは惜しい。何とかして手に入れることはできないだろうか。
「ドルア様、何をお考えになっていたのでしょうか」
「いやな、つくづく惜しいなとな」
「そうですねぇ。それには同感です」
「それにあの立地では、ゆくゆくは我等の脅威になるかと」
「そうかも知れぬが…。ところでお前たち、あれを見て辺境の駐屯地に行きたいと思うか」
「私は行ってもいいと思っています。あの演習場であればいろいろなケースを想定できます。それに私たちが得意としない対魔物戦も」
「私もです」
「私も」
「そうか、分かった。どうでもいい3軍でも置いておくつもりだったが、予定の変更だ。1軍のうち訓練期間に入った部隊を廻すことにする。足りない分は3軍と合わせて底上げを図る。手放すのは惜しいが決まっていることだ。使えるものはすべて使うぞ」
**********
下水の整備が先ね。下水の浄化の仕組みは王都の仕組みでいいかな。またスライムの大量捕獲をしないとね。
水は魔石を用意してもらいましょう。水をお湯にする魔道具と明かりの魔道具、魔道コンロは帝国に用意してもらいます。そんなものこっちで用意しててお国に持ってかれたら大損ですからね。テーブルや椅子、ベッドなどの家具ももちろん帝国持ちです。
『おじさんに頼んで土木技師を紹介して貰わないとね』
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