第74話 バイク乗り競争
「ルイスおじさん、後でチョットいいですか」
いろいろ考えたんだけど、おじさんにはクルマのこととエルフィのことは知らせといた方がいいと思ったの。
「ん、なんだ」
「うちに来てほしいから」
「わかった。国王はどうする」
「おじさんが判断してくれればいいよ。今わざわざ陛下に手間を取らせることはないかなって」
「分かった。いつにする、今すぐでもいいぞ」
伯父さん、仕事はどうしたんですか。私は特別補佐だから特に仕事がない時はヒマですけど、叔父さんは違うでしょ。国王の補佐なんだから……
「ミーアのこういう時は、必ずと言っていいほど面白いことがあるからな」
うーん、まぁしょうがないか。
「じゃぁ行きましょうか」
「ここに来るのも随分と久しぶりな気がするな」
いや伯父さん、前に来た時からまだ1カ月もたってないんですけど。
「そんなことないでしょう。おじさん、こっちです」
伯父さんをクルマを置いてある方に連れて行きます。
「これは何だ。初めて見るものだな」
「これは『クルマ』というものです。帝都へ行ったときに皇帝陛下から頂いたものです。帝国ではいろいろとあったものですから、そのお詫びにと」
「でこれはどういうものなのだ」
「馬のない馬車です」
「馬のない馬車?どうやって動くのだ」
「まだ研究をはじめてはいませんが、恐らく魔力を元にして動くのではないかと」
「魔力で動く馬車か。いや魔車と呼ぶべきか」
「だからクルマですって。帝国ではそう呼ばれていました」
「帝国でこれを見たのか」
「見たから頂いたんです。帝都ではこのクルマが普通に街を走っていました」
「そうなのか。それだけの力のある帝国と、ミーアは対等に渡り合ってきたというのか」
「少なくとも賊には圧倒してきましたからね」
「これをミーアはどうするつもりなんだ」
「王国で走らせようと思っています。ただ今あるのはこの4台だけです。この4台を研究して王国でクルマを作ろうと思っています」
「クルマを作る。出来るのか」
「出来るかどうかなんて今はまだわかりませんよ。研究も始めてないんですから。ただこれができると王国も変わるかなって」
「ミーアよ、やってみるがいい。ここ暫くはミーアに頼む仕事はないはずだ」
「分かりました。期待しないで待っててください」
「期待しているぞ」
「だから、期待しないでって………」
「このクルマというものは一体どういうものなのだ」
「試しにチョット動かしてみますね」
今朝チョットだけ動かす練習をしておいたんだ。サフィアとエレンはバイクの練習してたけど。
クルマに乗り込んで動かす準備をします。ゆっくりと前に進みだしました。
「おぉ、動いている」
「おじさんも乗ります?」
「いいのか。それでは失礼する」
反対側のドアを開けて叔父さんが乗り込んできました。
「座り心地がいいな。まるでソファーに座っているみたいだ」
「それじゃぁ少し動かしますね」
玄関前から馬車が通る道を使って正門まで走らせました。
「凄いな、これは。全然揺れないし、それに速い。馬車よりずっと速いじゃないか」
「そうなんですよ。それにこのクルマって馬が要らないから休ませる必要もないんです」
「休まずにずっと走らせることができるのか」
「まだこれから研究をしないといけないんですけど、そんな感じです」
正門近くの広場でぐるっと回って玄関に戻ってきました。
「速いし乗り心地もいい。早く実用化してくれ」
「これ結構するんですよ。こっちの人がいっぱい乗れるやつは金貨200枚ぐらい。こっちの荷物を運ぶ奴は金貨120枚ぐらい。そしてこれは金貨150枚ぐらいするんだから」
「そんなに高いのか」
「少なくとも帝都ではね。王国で作るとなるともっと高くなるかも。初めは失敗も多いし、研究するにもお金がかかるからね」
「ミーアはどうするつもりなんだ」
「とりあえず仕事にはしないで、私の空いた時間で少しずつ研究するつもり。まぁ3年ぐらいで目途が立てばいいかな」
「そうか。それで陛下を呼ばなかったんだな」
「それもあるわ。別に隠すわけじゃないけど、ほら私が特別補佐になった時に言ってたじゃない。『差し当たって何もすることはない』って。だからこれを仕事にはしたくないなって思ってるの。それにこのクルマってやつ、絶対に軍が目を付けると思うのね。だって人も荷物もたくさん早く運べるのよ。私としてはできたものを軍が使うのは仕方ないにしても、この技術を軍が独占するのはチョット」
「まぁいい。これは全部ミーアのだ。私に教えてくれただけでもいいとするか」
「ありがと、おじさん。研究が進んだら教えるからね」
「よろしく頼むぞ」
「あと、もう一つあるんだ」
「何があるんだ」
「エルフィ、ちょっと来て」
「エルフィって」
森の中からエルフィが飛んできました。私の肩にちょこんと止まって『呼んだ?』って。
「なんだこれは」
「見てのとおりです。これがエルフィ。ホワイト・ドラゴンです」
「ホワイト・ドラゴンだって。そんな危険な魔物がなぜ」
「危険じゃないし、そもそもドラゴンは魔物じゃないよ。ドラゴンは竜族だから」
「ねぇミーア、この人だれ」
「この人はね私の伯父さんで、王様の弟なんだよ」
「ふーん、じゃぁ偉いんだ」
「言葉が分かるのか」
「竜族は賢いからね。人間の言葉だけじゃなくって、魔物の言葉も分かるんだよ」
「はじめまして。私はエルフィ、ホワイト・ドラゴンの女の子です。竜族の中では若い方で、まだ生まれて80年ぐらいです」
「あっあぁ、私はミーアの伯父でルーファイスと言います。ルイスと呼ばれています」
「ルイスさんですね。覚えておきます」
「エルフィは私のお友達なの。ちゃんと竜の里長の許可も取ってあるわ。普段はこの庭から出ないように言ってあるから心配しないでいいわ」
「この森とても居心地がいいんで大好きです」
「そ、そうなんだな」
「ただね、ホワイト・ドラゴンの最大の敵って人間なんだって。私はこの子のことを絶対に守るって約束したから。おじさんはここに来た時にばったり出会ってもビックリしないでほしいって事だから」
「わかった。まだビックリしてるがな。ところでエルフィちゃんは大きくなれるのかな」
「今は小さくなってるの。何もしないとずっと大きいよ。でもまだ私小さいから、大きくなった竜の半分ぐらいしかないけどね」
「ミーア、飼うのは言いが大きくさせちゃダメだからな」
「エルフィはペットじゃないよ。友達だからだから飼うんじゃなくって一緒に住むんだもんね」
「うん。ミーアと一緒にここに住むの」
「ミーアが規格外と言うことは分かっていたが、まさかここまでとは」
「ねぇそれって失礼じゃない」
「失礼かもしれないが、強ち間違いでもないだろう。どこに『旅から帰ってきたらホワイト・ドラゴンの友達と一緒でした』なんて人がいるんだ。ミーアしか思いつかんぞ」
別に変なことをした訳じゃないのにこの言われようって、ちょっと不満です。分かる人に分かってもらえればいいんですけどね。
「エルフィのことを含めて陛下にどういうのかはおじさんが考えてくださいね。ただエルフィはこの屋敷からは出さないんで、そこのところもよろしくです」
「陛下には私の方から話しておく。恐らく見に来たいというだろうがな」
「それはそれで構いませんが、エルフィの事秘密にしといてくれないと、私王都から出てっちゃいますからね」
「分かった、分かった」
この後すぐに
**********
「ミーア様、私乗れるようになりましたよ」
自慢げにバイクに乗ってるのはサフィアです。そりゃね、あれだけ練習すればね。そう言えばエレンはまだみたいですけど。
サフィアに先を越されたのがちょっとだけ癪に障ったので、少し練習をしてみました。結構難しいね。
私が練習しているとこへバイクでやって来たのは、なんとジャスティン。彼ももう乗れています。
「ミーア様、私も乗れるようになりました。見てください」
そんなこと言われなくたって見りゃわかるって。さっき向こうから乗ってきたでしょ。
こんにゃろ、ジャスティンにまで先こされてしまったよ。何が何でも乗れるようにならないと、ビリになっちゃう。それだけは何としても避けなければ。
不思議なこともあるもんで、どうやったのかはわからないんだけど、なんとなく少し乗れたのよ。ほんのちょっとなんだけど。でもね、1回それが出来たら次からはなんとなくだけど乗れるようになって、いつの間にか普通に乗れるようになってたわ。って事で私は3番目でした。
その後マリアンナも乗れるようになりましたとさ。めでたしめでたし。
「めでたしじゃないわよ。なんでみんな乗れるのよ。ねぇどうやって乗るのか教えてよ」
「どうやってって言われてもねぇ、なんとなく乗れるようになったから」
「私もです。気が付いたら乗れるようになってました」
「コツみたいのがある気もするんだけど、教えられないや」
「ということでエレンさん、頑張ってください」
「みんな待ってよ」
私たち4人はバイクに乗ってお屋敷の中をスーイスーイと進みます。気持ちいいね、風を切って走るのって。
数日後、無事エレンも乗れるようになりました。これでホントにめでたしめでたしです。
クルマの前にまずはバイクだね。これを銀貨70枚ぐらいで売れたらきっとみんな買うよね。よしっ、頑張るとしますか。
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