第72話 お土産

「ただいまっ!」

「おかえりなさいませ、ミーア様」

「変わりはない、ジャスティン」

「はい、こちらは何も。ってミーア様、それなんですか」

「それ?あぁこの娘ね。この娘はエルフィ。ホワイト・ドラゴンの女の子よ。私の友達なの」

「エルフィです」

「友達って…。ドラゴン、ですよね」

「そうよ。そう言ってるじゃない。今はこの娘の力で小さくなってるけどね。エルフィ、外で元の大きさに戻ってみてよ」

「いいよ」


「お、おぉ。ドラゴンだ」

庭で大きくなったエルフィを見て、ジャスティンが後ずさりしています。怖いの?こんなに可愛いのに。

「そうだ、使用人のみんなを集めてくれない。紹介しちゃうから」

メイドやら料理人、警備の人たちやその他お屋敷で働いている人たちが集まります。

「えぇと、みんないいかな。私の友達でお客さんでもあるホワイト・ドラゴンのエルフィを紹介します。目の前にいるこの娘ね。エルフィは女の子です。私の友達だから、みんな怖がらなくっていいからね。いつもこの大きさだと目立っちゃうから普段は小さくなってます。エルフィ、さっきの大きさに戻ってくれる」

「うん、ちょっと待って」

「喋った。ドラゴンが人間の言葉を喋ったぞ」

「ドラゴンって賢いから人間の言葉ぐらい喋りますよ。魔物の言葉も分かるんだよね」

「大体わかります。でもスライムは分かりません」

「スライムって喋るの」

「体を震わせてコミュニケーションを取ってるみたいです」

「あっみんな、ここにいるときは大体この大きさでいることが多いから間違えないで。エルフィもいいネ。みんなと仲良くしてね」

「「「「「はいっ!」」」」」


「エルフィさぁ、私仕事で王宮に行くことがあるんだよ。エルフィの事連れてってあげられない時もあるからその時はここでお留守番だけど大丈夫」

「大きくならなきゃいいんでしょ。ここは森も水もお花もきれいだから平気よ」

「何か欲しい物とかあったら、さっきのジャスティンかマリアンナに言ってくれればいいから。それから離れていても私を呼びたいこともあると思うの。そんなときはこれ使って」

エルフィに通信の指輪をネックレス型にしたものを渡しました。もちろんエルフィが大きくなったら自動的に大きくなる仕組みを加えてね。

「そのネックレスに魔力を込めてみて」

「あっ!光った」

「そしたら私に話しかけてみて。頭の中でね」

『こうかしら。ミーア、これでいいの』

『そうそう、それでいいわ。ちゃんと聞こえてる。魔力を込めるのを止めれば切れるからね』

「これ凄いね。いつでもミーアとお話ができる」

「そうなんだけど、まいっか」


**********


『伯父様、ミーアです』

『ミーアか。どうした』

『先ほど戻りました。今王都のお屋敷にいます』

『無事か』

『ええ。で報告のことなのですが、かなり重要なことがありますので全ての大臣を集めてほしいのです』

『なら明日の10時に王宮で会議を開くとしよう。それでいいか』

『分かりました、明日10時ですね』


「ジャスティン、明日の10時に私王宮だから」

「畏まりました。エルフィは」

「まだ連れてけないわ。屋敷から出ないように言ってあるから。あとこれ、ジャスティンが部屋で使って」

「何ですかこれ」

「時計よ。これなら鐘の音がなくても正しい時間が分かるの」

「このような大切なものをどこで」

「帝都よ。でもこれ、大切って程のものではないのよ。帝都だと普通の家にもあるものだから」

「普通の家にもあるのですか。帝都と言うのは進んでいるのですね」

「そうね。こことはだいぶ違うわね」

「分かりました。使わせていただきます。ミーア様はお使いにならないんですか」

「私はこれを買ったから」

皇帝が国王に送った時計と同じぐらいの物を取り出しました。

「こんなに小さなものまであるんですか」

「これはちょっと高かったけどね。これを使っていろいろ調べてみようと思って。だって帝国でできて王国じゃできないなんて悔しいじゃない」

「ミーア様は研究熱心でありますから」

「そうでもないよ。興味があるものには熱が入るってだけだから。そうだ、他にも買ってきたものがあるからマリアンナとサフィアとエレンも呼んできてよ。庭にいるから」


「マリアンナ、私が出かけてる間、エレンは飲み過ぎてなかった」

「なんで私なんですか」

「だってエレンだし」

「飲み過ぎてはいませんでしたよ。普段より多めに召し上がっていましたが」

「マリアンナも、どうしてそういう言葉遣いになるのよ。確かにちょっと飲んだけどさぁ」

「でも3人で過ごす夜は楽しかったわよね」

サフィアちゃん、親睦を深められたみたいでよかったですけど、あやしくはないですよね。健全にお願いしますよ。

「帝都で買ってきたものを見せるね。どれもみんな私の研究材料なんだけど」

引っ張り出したのはバイク。最初2台買ったんだけどなんだかんだで10台ぐらい買ってたみたい。

「最初はこれ。えっと、これは私のお気に入りだからダメだけど、それ以外のから1台ずつ選んで」

「これなんですか」

「バイクって言ってたわ。人の力で進む乗り物よ。私はまだ乗れないんだけど。コツがあるみたいなんだけど帝都の人たちはみんなスイスイ乗ってたわ」

「これを私たちが頂けるんですか」

「これがあればこの広いお庭を行ったり来たりするのが楽になるでしょ」

「じゃぁ私はこれにします」

「私はこれがいいかな」

「ミーア様、こちらを頂きます」

「私はこちらを」

「じゃぁ後のは研究用ね」

「研究用って何をするのですか」

「王国でもこのバイクってやつを作るのよ。そのためにはいろいろ調べなきゃいけないから、その材料として使うの」

「これが街を走るのですか」

「いいと思わない。魔道具じゃないから普通の工房でも作れそうだし。小さめに作れば子供でもいけると思うよ。流行ると思うんだけどなぁ」

「平民でも買えるような手頃な値段だったらいけるかもしれませんね」

「誰が早く乗れるようになるか競争しない」

「いいわねぇ、やりましょう」

「分かりました。仕事に影響が出ない範囲で頑張ります」

いつの間にか競争が始まってしまいました。エレンちょっと狡くない、私やることいっぱいあるんだけど。サフィアもさぁ、私がいない間ずっと練習するつもりでしょ。


「あとはこれ。これはみんなにって訳じゃないんだけどね」

私は亜空間収納マジック・バッグから4台の車を出します。

「これは何ですか。馬車の様のも見えますが」

「これもね帝都で買って来た『クルマ』っていう乗り物なの。馬のない馬車ってとこかな」

「馬のない馬車?それじゃぁ動かないじゃないですか」

「それがね、ちゃんと動くの。人が乗って動かすんだけど。でもね、馬車よりずっと速いのよ」

「このようなものが帝国では走っているのですか」

「帝国って言うか、走ってたのは帝都だけだったけどね」

「ミーア様はこれも作るつもりなのですか」

「そうよ。道を綺麗にしなきゃいけないけど、普通の馬車の5倍から10倍は速いんだから」

「そんなに…」

「これだともっと速いわね」

私用に買ったちょっと小さめのクルマを指さします。

「それをどうするの……。そうか、魚」

「それもあるわ。ニールなら1日で着くと思うし。それにこの荷物用のクルマならたくさん運べるからね。それにこっちの人用のクルマだと一度にたくさんの人を運ぶことができるし」

「乗合馬車みたいな」

『そんな感じね」

「それだと今の乗合馬車が」

「それは大丈夫不だと思うよ。道を綺麗にしなきゃいけないって言ったでしょ。でも国中の道を綺麗にすることなんて出来っこないから、大きな街の間だけよね。つまりそこでしか使えないって事。それに全部の村や町に止まる訳じゃないから。早く着きたい人が乗るんだから止まるのは大きな街だけでいいの。さらにその先っていうなら、そこから乗り合いに乗ればいいじゃん。それに特別料金にすれば目的によって分けられるよね」

「ミーア様はこれで何をしようとしてるんです」

「そうねぇ、王国を豊かにしたいっていうのとこの国の民を幸せにしたいって事かな」

「そんなことができるのでしょうか」

「出来ると思うよ。クルマのために道を綺麗にするのは大きな仕事じゃない、お金もかかるけど。綺麗な道は王国の財産だし仕事があればスラムの人も少なくなると思うの。それから王都に来るまで1週間かかるところが2日になれば王都に来る人も増えると思わない。今王国の中で動いてるのって行商人と貴族と王国軍で殆どでしょ。ここで民も動くようになればこの国はきっと変わるわ」

「どうやってそれをやるおつもりで」

「商会を作ろうかなって思ってる。あと街の開発を王様にお願いするつもり。さっきのバイクやクルマを作ったり、荷物や人を運ぶ仕事をしたり」

「王都ではやらないのですか」

「王都だと車を作るには狭いし、それに王都に人が集まりすぎるのってよくないと思うから」

「それはなぜです」

「1つは帝都ね。帝国は帝都だけが発展してるって感じだったの。全部帝都に集めて、帝都の発展こそが帝国の発展みたいにね。でもその代わり他の町や村は凄く寂れていたわ。あれじゃぁ民は幸せにはならないわ。私は王国をああにはしたくないの。もう1つは今の王都を壊したくないって事かな。新しいことをはじめれば活気づくことは間違いないんだけど、でもそれによって困る人も出るから。特に今度私がやろうとしていることは今の王国にはない物だから、混乱は大きいと思うのね。そのためにもどこが別の場所がいいかなって」

「そこまでお考えだったのですね」

「でもすぐにできることじゃないから、それにバイクやクルマの研究はここでもできるし」



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