第58話 魔道具【遠隔交信装置】
王宮晩餐会も終わり、パーティーも終わって、平穏な生活が戻ってきました。私は、公爵になろうが大臣になろうがお構いなしに、相も変わらず『ミル薬局』経由で王都の中をぶらぶらしています。大臣って言っても特にやることないんだもん。月に1回の会議ぐらいかな。私はいるだけ。
たまにはファシールでも覗いてこようかな。バタバタしていて全然行ってなかったからね。保護も終わったって言ってたし。
ファシールの交流区はだいぶにぎやかになってきました。10軒あるお店も全部開いていて、いろんなデザインの服が売られています。やっぱ女性だから服だよね。仕入れてるのかなぁ、みんな結構買ってってるね。
食堂も営業しています。閑古鳥が鳴いているのは町営の食堂のようです。ラファーネさん、頑張りましょうよ。
ラファーネさんが頑張って作った例の所、結構繁盛してるみたいです。いいんでしょうか。
「お姉さん、寄ってきなよ。サービスするからさ」
女だってわかって呼び込みですか、お姉様方。あの3人がここに来たら、ずーっといたりして。ブルブル
門のところで通行証を見せて中に入ります。通行証がないと中に入れませんから。私に入れないところはないですけどね。
町の中もそれなりに賑わっています。ちょっと広すぎましたかね。
「ラファーネさん、こんにちは」
庁舎の一番上の階にある代官室を訪ねました。中でラファーネさんが書類の山と格闘しています。
「あっ、ミルランディア様。じゃなかった公爵様。何か御用でしょうか」
「用がなきゃ来ちゃいけないの?」
「そんなことありませんけど、何も変わらないですよ」
「ちょっと様子を見に来ただけ。ちょっと広く作りすぎたかな、この町。使ってない店舗も随分あるみたいだし」
「広いのはそうですね。7つある居住区も3つは使ってませんし」
「交流区は賑やかだったよ」
「あそこにお店を出したいっていう人が多くって、結構順番待ちができてるんですよ。最初はやっぱり服ばっかりですけど、来月はアクセサリーや小物の店も2つぐらいでそうなんです」
「トラブルはない?」
「今のところは起きてないです。交流区には専門の警備を配してますから」
「そういえば町営食堂、ガラガラだったよ」
「町営食堂だって味は悪くないんですよ。値段もそんなに高い訳じゃないし。他のお店のお料理がおいしすぎるんです。あれじゃぁ敵いませんって」
「あと例の、あの娼館。賑わってるわね」
「そうなんです。あそこ男性だけじゃなく女性も行くんですよ。公爵様も行ってみませんか。ご一緒しますよ」
もうすでに客引きにあったし。ってかラファーネさん行ってるの?
「畑は?」
「半分ぐらい貸し出しています。残りは遊ばせておくのももったいないから、本局の方でやってる試験栽培をこっちでもやってます」
「あとさ、カチェリーナって女性来た?」
「カチェリーナさんですか。ええ来ましたよ。なんでも公爵様のお知り合いだとかで警護に仕事をしたいからと尋ねてきました。話を聞いて交流区で働いてもらうことにしました」
「事情はみんな聞いた?」
「ええ、あの事件で捕まって勤労刑の処分を受けたって。恩赦で少し早く刑期が済んだんでこっちに来たといってました」
「じゃぁラファーネは代官としてカチェリーナを警護役として正式に雇ったって事ね」
「はい、そうです」
「治療院の方はどう?」
「セリーヌ院長がしっかりやってくださっているので、安心してお任せしています」
「後なんか困ったことない」
「1つお願いがあります。この町に教会を作って欲しいのですが」
「教会ですか。分かりました。教皇と話してみます。建てる場所はどこになりますか?」
「治療院の隣に開いてるところがあるので、そこがいいかなって思ってますが」
「後で見ておきますね。それから職員用の部屋、1つ使っていいかな」
「構いませんが何にお使いですか」
「私の出入り口。私って馬車で来るわけじゃないでしょ。ワープで来るんだけど、ゲートを開けるところを作っときたいのよ」
「それなら幹部用の住宅で使っていないのがありますから、そちらをお使いになれば」
「別に住むわけじゃないからいいのよ。ヨロシクね」
「分かりました。それでは第3棟の10番のお部屋をお使いください」
その後治療院に行ってセリーヌとおしゃべりをした後、教会をたてる予定地を見てから帰りました。例のお店に入ったのかって?行きませんよ。ラファーネさんはしきりに誘ってきましたけど。
**********
「教皇様、チョット相談事があるんですけど」
「どういたしましたかな、公爵様」
ラファーネさんもそうだけどみんな私のこと公爵様って呼ぶのね。前はミルランディア様とか姫とか読んでたのに。私はミルランディアだし姫であることにも変わりないんだから前のまんまでもいいんだけど、やっぱダメか。私的に動いてるときは公爵様だね。
「ファシールという町ができたのはご存知のことと思いますが、その街で教会を作って欲しいとの声があります。そこで教会を建てる際に気を付けなければならないことと、その教会に派遣する人の人選をお願いしたいのです。派遣する人は女性でお願いします」
「女性か。分かった。1週間後に来てくれ。用意させておく。教会を建てる時に気を付けることは特にはないが、これから建てるのだろうから派遣される人の話を聞いてやってはもらえんだろうか」
「1週間後ですね。教会はその人と相談しながら作ることにします。ありがとう」
その後協会は作ってきました。新しく赴任される女性司祭と一緒にね。凄く可愛らしい教会よ。あそこで素敵な男性と結婚式を上げられたら……ってあそこの町、男子禁制だったわ。ダメじゃん。
**********
何?一向に進まない【ミーア化物化計画】に痺れを切らしてる人がいるって?
誰だそれっ!ちょっとこっちへいらっしゃい。
でもあと候補に挙がってるのって自動防御、
鉱物探索はもういいか。探せなくても集められちゃうからね。あれからチョコチョコと出かけるたんびに集めてはいるんだ。ミスリルもオリハルコンも100キロぐらいあるからもういいかなって。ダイヤとかルビーとかの宝石もいっぱいあるし、もちろん金や銀や鉄なんかもね。
指輪は簡単にできますよ。それこそ錬金術と創造術を駆使すればね。今は試しだから1個だけ。そこにドールの受け口を埋め込みます。元々ゴーレムの制御用だからどんなものにでも埋め込めるのよね。でもこれだけじゃダメ。指輪と交信するんじゃなくって指輪に魔力を込めた人と交信する訳だから、そこをまず変えなきゃ。魔力が一定以上貯まったら発動して、えーと魔力のパターンを……めんどくさいから創造術さんに丸投げしてみよっと。こんな感じね、『指輪に魔力を込めて、あんまり多いと大変だし、かと言って少ないと繋がらなくてもいい時に繋がっちゃうと面倒だから、まっそんな感じに貯まったら宝石が光るの。そしたら私と繋いで思ってることを伝えられるようになるの。私と繋がってもその人のことは動かせないからね。あくまで交信だけ。あと私からは繋げたい人の持ってる指輪を起動して宝石を光らせるの。「これから交信はじめますよ」って知らせるためね。そしたら交信ができるようになる。あとは魔力を込めるのを止めれば繋がりが切れて宝石が光るのが止まる。こんな感じだね。魔力パターンは最初に魔力を込めた時に記憶しておけば分かるし、悪用されないために最初に込められたパターンと違うパターンだったら発動しないようにしておけばいい』こんな感じでお願いね、創造術さん。
これでできたらすごいね。創造術じゃなくって想像術かも。つまらないシャレでした、ごめんなさい。
ってできちゃったわけよ。自分が作った物だから手に取ってみるとどんなものかわかるからね。思った通り考えた通りのものだね。ちゃんとテストしないとね、確かめは大事だから。ジャスティンで試すとその後うるさそうだし、エレンは……とんでもない。マリアンナがいいか彼女に手伝ってもらおうっと。
「ねぇマリアンナ、チョット手伝ってくれない?」
「ミーア様なんでしょうか」
「これなんだけど」
「うわー、綺麗な指輪。これ貰えるんですか」
「うんあげるよ。この指輪を使って試したいことがあるんだ。いいかな」
「はいっ、喜んで」
マリアンナさん、目がウットリしてますよ。指輪を貰ってそういう目をするのは男性からの時だけにしてくださいね。
「はめた?そしたらその指輪に魔力を込めてみて」
「はい。こうですか?」
魔力を込めてるのに宝石が光りません。間違ったかな?
「チョットかして。調整するから」
魔力の閾値が高すぎたようです。魔力って人によって多かったり少なかったりするもんね。使う人に合わせて閾値が変わるようにしました。一体最初の閾値はどうやって決めたんでしょうか。まさか私の魔力量?だとしたら私の魔力量ってそんなに多いのかしら。
「これでもう一度お願い。暫くしたら宝石が光り始めると思うから、そうしたら少しずつ魔力を送り続けてみて」
今度はグーッと魔力を込めた時に宝石が光り始めました。私とも繋がっています。ひとまずは成功です。
「ミーア様、宝石が光り始めたんですけど、何なんですかこれ」
『マリアンナ、魔力を切らさないで』
「ミーア様、何ですかこれ。頭の中でミーア様が喋ってるんですけど」
『いいから、魔力を送りながらマリアンナもやってみて、頭の中で私に話しかけるの』
『こうですか?ミーア様聞こえてます?』
『大丈夫みたいね。疲れてない?』
『平気です。これミーア様が作ったんですか』
『そうよ。1回魔力切って』
宝石が光るのを止めると私とのつながりも切れました。半分成功です。
「じゃぁ次、私からね。マリアンナはそのままでいて」
マリアンナのパターンの受け口のついた指輪を探して起動します。
「うわっ!急に指輪が光りだした」
『それじゃぁさっきのように指輪に魔力を送ってみて。いまだとこっちからしかつながってないから』
魔力を込めると他の宝石も光りだします。あとは同じですね。
『じゃぁこっちから切るね』
つながりが切れて宝石が光るのも止まりました。実験は大成功です。
「ミーア様これって」
「私との間の遠隔交信装置。私としか交信できないんだけど」
「こんな魔道具見たことありません。これって大発明ですよ」
「いろいろ不便なことがあるからね。私だけでも便利になろうかなって」
「ミーア様としか繋がんないんですよね。私はそれでいいです。ミーア様と繋がっていられるのであれば」
マリアンナさん、あなたはエレンの毒牙に掛かったんですか。これはエレンじゃないですね。サフィアの感じがします。
「今のところはね、私だけ。私と連絡を取るのが目的だからね。じゃぁ次は遠くで試してみたいから、マリアンナはここで待ってて。私ちょっとニールに行ってくる」
ニールのお屋敷にGOです。常時繋いである訳じゃありませんが、この壁の扉を開けるとそこはニールの別荘です。
さっきの手順でマリアンナを呼び出します。
『ミーア様、ニールからですか?』
『そうよ。今ニールの別荘から』
『凄いです。ちゃんとつながっています』
『よし。じゃぁ一度切るね。今度はそっちから呼び出してみて』
一度切った後、すぐにマリアンナが繋いできました。そんなに慌てなくってもいいのに。
『ミーア様、ミーア様。マリアンナは幸せです』
何を言ってるんですか。あの真面目で仕事のできるマリアンナはどこへ行ってしまったのでしょうか。
『うん、ソッチからも成功ね。それじゃぁ屋敷に戻るから』
繋がりを切って屋敷に戻りました。
「ミーア様、これ一生大事にします」
大事にはしてもらいたいけど、一生って。そんな代物じゃないよ。
さて次です。私と他二人、3人に挑戦です。3人ができればあとはいくらでもできそうだからね。
「じゃぁ次はサフィアを含めて3人でやってみようか」
「サフィア呼んできますね」
その間にサフィアの指輪を作ります。一応私のもつくっとこっと私は指輪で交信はしないけど、繋がりができたことを知るためにはあった方が便利だからね。私のは
「ミーア様、何ですか?」
「今ね、ちょっと面白い実験をしてるの。サフィアも手伝って」
「いいですけど、何をするんですか?」
マリアンナの時と同じように使い方を説明します。おっ!私の指輪もちゃんと反応するね。ヨシヨシ。
「それじゃぁ3人で交信してみるから、マリアンナ私に繋いでくれる」
『マリアンナとは繋がったね。マリアンナはこのままにして。私はサフィアに繋ぐから。サフィア、どう?』
『大丈夫です』
『じゃぁそのままマリアンヌと交信してみてくれる』
『マリアンナさん、聞こえますか』
『聞こえるわよサフィア』
『私にも聞こえるな。これなら3人でおしゃべりできるか』
『これ楽しいです』
『次のテストするから1回切るよ』
3人同時交信はできました。これなら何人でも行けそうですね。
次のテストは私からの一斉交信です。やり方はこうです。まず私が交信したい相手と繋ぐ。そして一方的に話す。向こうから繋いできても私と1対1に制限する。ではではやってみましょう。
『聞こえたら手を挙げて』
マリアンヌもサフィアも手を挙げました。マリアンナが繋いできました。サフィアもです。
『ミーア様、今のは何か違うのですか』
『サフィア、マリアンナが話していたの聞こえた?』
『いえ、何も聞こえてきません』
『マリアンナはサフィアの話してるの聞こえてる』
『いえ、何も聞こえませんが』
『これならどう』
さっきと同じようにマリアンナとサフィアも繋ぎます。
『サフィア、聞こえますか』
『聞こえます。これでさっきと同じですね』
『じゃぁこうしたらどうかな。交信が出来なかったら普通にしゃべって』
私とマリアンナ、私とサフィアのつながりを切ります。今繋がっているのはマリアンナとサフィアです。静かにしているということは繋がっているんですかね。
暫く動きはありません。私がマリアンナと繋ぐとマリアンナの声だけが聞こえるようになりました。サフィアと繋ぐと全部聞こえます。
『実験は成功のようね。ありがとう、終わりにしましょう』
「これ凄いです。最後は私とマリアンナさんだけで喋ってたんですよね。ミーア様には聞こえなかったですか」
「うん。切ってるときは何も聞こえない。繋げば聞こえるけど。最後のは使い道が難しいからどうするかわからないけど、一応仕組みは分かったから。ありがとう二人とも。その指輪はあげるね、っていうかもうそれ専用だから。他の人じゃ使えないはずだよ。試しに交換してやってみて」
交換した指輪に魔力を注いでもうんともすんとも言いません。その状態でこちらから繋ぐと……繋がりませんね。これはこれでいいでしょう。変に情報が洩れませんから。元に戻したらちゃんと使えたので、この実験は完了です。あとは指輪を作りますか。リオおじさんとルイスおじさん、グランおじさん、おじいさま、ジャスティン、エレン、あとラファーネさんかな。7人か。とりあえず10個作っとけばよさそうだね。
ジャスティンとエレンにも渡しました。二人とも感動してます。
「これ、あくまで緊急時用だから。何もない時に使わないでね。基本、私からの呼び出し用だと思ってね。私もあまり使わないようにするからさ。特にジャスティン、私が見当たらないからって呼び出さないこと。いいわね」
ジャスティンは渋々返事をしてました。そういう使い方をしようと思ってたんでしょうね。
おじいさまと伯父様たちにも渡しましたよ。ルイスおじさんなんてもっと欲しいなんて言い始めて、一体誰に渡すんでしょうねぇ。全部私の所に集まってくるんですから勘弁してください。あと緊急用だって事はよーく伝えておきました。緊急性の低い要件で頻繁に使ってたら使えなくするって脅しも加えてね。
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