第37話 追跡調査
「ミーア、パーティーの準備は進んでおるか?」
今日もおじいさまは私の家に来ています。おばあさまたちはどう思っているのでしょうね。今度、おじいさま抜きでおばあさまたちを呼んでみようかしら。
パーティーまで1カ月チョット、えっ!もう1カ月しかないの?なんて焦ることはありません。ちゃんと準備は進めてあります。何せ私には超優秀な執事がいるのですから。その名もジャスティン。彼がいるので安心です。
お料理の内容もだいぶ決まってきました。ただ、冒険者や平民の間で人気なオークやミノタウロスのお肉は、貴族の間では不評のようです。あんなに美味しいのに、残念です。仕方ないので、豚さんや牛さんのお肉を冷凍倉庫に入れてあります。結構な量が入っているみたいです。鳥も野生のモノは固いと言われて敬遠されがちですが、調理の仕方と香草の使い方で解決済みです。鳥の中でも特に美味しいと言われているランドル鳥を沢山仕留めました。
香草は庭のチョット奥まったところに
で、ウチの料理長なんですけど、普通に料理を作るととってもおいしいんです。だけど、創造力と言うか、個性的な感性と言うか、発想の柔軟さと言うか、突飛と言うか。とにかくいろんな料理にチャレンジします。まぁ、半分は失敗作なんですけどね。残りの半分も失敗じゃないってだけで。でも稀に大当たりが出るんですね。天才の一人なんでしょうね。でもうちの厨房じゃないとダメでしょう。他の厨房だとその天才的な発想は受け入れられないと思うから。
あと、パーティーまでに一度クロラントの南、港町に行ってみたいと思ってます。クロラントには例の件でマーキングしておく必要がありますからね。で港町と言えば、そうです、魚です。新鮮な海の幸、魚に貝、海老、蟹これらをどっさり買い込みます。パーティーに出したいんですよね。だって、港町から王都まで馬車で1週間以上、新鮮なものなど手に入らないのです。でも私ならすぐです。港町から私の家まで数秒ですから。大量のお魚も亜空間に入れてしまえば問題ありません。あと、海のお塩も欲しいですね。
「おじいさま、何人ぐらいいらっしゃるのですか?」
「パーティーに来るのは250人ぐらいだと思うぞ」
「250人ですか?そんなに控室ありませんよ」
「何人かでまとまってくるものもいるからの。それに公爵家のパーティーだって控室などないぞ。控室を使うのは上の者からでよいのじゃ。それに250名といっても貴族家とすれば100ぐらいじゃろ」
あのホールなら250人ぐらいなら問題ありません。多少増えたところで300人ぐらいでしょう。料理はそれぐらい用意するとします。
「あと、パーティーには参加しないが土産だけ持ってくるものもおるからな。地方の貧乏貴族など出たくても出れないものもいるのじゃ。大体50ぐらいかのぅ」
と言うことはお返しは150。まぁ200作っておけば大丈夫でしょう。お返しは決まっています。熱に強いガラス製のティーセットにミスリルのティースプーンをセットにしたもの。それにヘンネルベリの紋章を入れたものです。試作品も完成していて、おばあさまもいいと言ってくれました。200セットなら頑張れば3日もあればできますね。3日も続けて頑張れないですけど。
「ところで、例の様子はどうじゃ」
「酷いもんです。見ていて可哀想です。ハビット商会に買われた5人は、もうお客さんを取らされています。粗末な部屋に押し込まれ、碌な食事も与えられずに、どうせすぐに取っちまうんだからと言われて服も着せてもらっていません。そんな女性が10人以上います。前に買った女性たちも多くいるのでしょう。Cグループの他の3人は、使用人たちの捌け口になっているみたいです。所かまわず犯されています。
でも、店は『新しい従業員だ』と言っているようだし、他の3人も新しい使用人となってるみたいです。彼女たちも使用人、従業員と思っているらしく、奴隷と言う風には思っていません。奴隷は鉱山奴隷のような過酷な労働を強いられるものと刷り込まれているようです」
「それでは奴隷の使用で追い詰めるのは難しいのか」
「そうなりますね。買った側が『新しい使用人だ』『新しい従業員だ』といい、女性も『奴隷じゃない』と言われればまず無理でしょうね」
「うーむ、策を練り直さねばならんな」
「続けていいですか?Bグループの人たちです。彼女たちの多くは、買った貴族の子供たち、出来の悪そうな女性に縁のない息子たちの玩具としてあてがわれているようです。彼女らを買ったのは子爵、男爵たちですからねぇ。女性の扱い方も知らない、無駄にプライドだけは高い彼らのやる事です。扱いは目茶苦茶です。暴行はもちろん、暴力も振るわれていますし、焼き印を押された娘もいました。こんな男の所に嫁に来る女性は可哀想です。女の敵として始末しちゃいたいです。何とかしてあげたいのはここですね」
「こんな連中がこの国の未来を支えるのかと思うと………」
「腐ったところは全て捨て去るしかありません。そうしないと他に移ってしまいます。
Aグループの中で目に付くのは例の3人ですね」
「3人と言うと?」
「スワルコッチャ伯爵、ファーヴ伯爵、ギルティム伯爵です。他の4人も似たり寄ったりですけど。
まずスワルコッチャ伯爵ですが、どちらかの男爵の娘さんでしたっけ、彼女は伯爵の快楽の捌け口となっています。短い薄衣1枚を羽織らされ、常に傍に置かれています。男性のお客様が来た時も連れてかれ、弄られ続けています。時にはお客様の相手もさせられているようです。常に弄られて、伯爵の気分次第で犯されるといった感じです。初めはさすがに抵抗していましたが、もう諦めてしまったようです。
ファーヴ伯爵の買った娘、あのちっちゃい娘ですね。彼女は暴行は受けていません。受けてはいないのですが、人としての扱いも受けていません。人としてという意味ではスワルコッチャ伯爵の方がまだましですね。ファーヴ伯爵の娘は、完全に愛玩ペット扱いです。首輪を付けられています。部屋の中では服も着せてもらえず、伯爵に呼ばれればついていき、体中を撫でまわされています。外に出るときはリードで繋がれて、大事なところを小さな布で隠すだけの、それでいて腕や足には可愛いフリルのついた服を着せられて連れまわされています。
ギルティム伯爵のところ、子爵の隠し子でしたっけ、彼女は躾と称して酷い扱いを受けています。初めの頃は暴力も振るわれていました。今は暴力は受けていませんが、暴行は続いています。ただ、躾としての暴行で、伯爵の快楽のためのものではないのです。初めはだいぶ抵抗していましたが、今はただ泣きじゃくるだけです。泣いているとまた暴行を受けるという繰り返しなのですけど」
「ミーアには大変申し訳ないことをしたと思ってる」
「全くですよ。あんな鬼畜なものをずっと見せられて、トラウマにでもなったらどうしてくれるんですか」
「もうやめてもいいんぞ」
「でもやっぱりあの女性たちは助けてあげたいし、そのためにはあいつらを潰すしかない。潰すには証拠も必要だし……。やっぱり私は冒険者なのですね。困ってる人を見捨てられない。自分第一の貴族にはなれません」
「ミーアは王族じゃ。お前の信じるものが国や国民をを救い、助けると思うのであれば、それに邁進すればよいのじゃ。彼女たちの事は特別なことが起きぬ限り気にしないでよい。代わりと言っては何だが、ローレンスとラフィンドルの監視を引き続きお願いしたい」
どうやら女性が暴行を受けることは特別なことではないようです。まぁあれだけ見せつけられちゃぁねぇ。慣れって恐ろしいです。
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