第36話 奴隷オークション

**********(side ローレンス&ラフィンドル with ミーア)



「数は集まっているか」

「Aの15は難しいそうです。今は14確保してあるとのことですが、全部出してしまうとその次に出せなくなってしまうとのことです」

「で、幾つなら出せるといってるんだ」

「10で何とかとのことです」

「10か。まあ仕方ないな。Aが12、Bが10、Cが8、こんな所か」

「そうなりますね。でもCの8なんて捌けるんですか」

「最後は娼館辺りが持ってくさ。あいつらの商売もブツあってのものだからな。いくらでも欲しいのさ」


黒幕確定です。ローレンス・サウムハルト侯爵とラフィンドル・ミルデュース子爵ですね。後で報告です。


「案内状はどうした」

「例の所へはもう出してあります」

「薔薇にはA5B5と伝えておいてくれ」



**********



「おじいさま、やはり黒幕はローレンス・サウムハルト侯爵とラフィンドル・ミルデュース子爵でした」

「それでは直接話を聞くか」

「ちょっと待ってください、侯爵様。2人を問い詰めても、『知らぬ』と言われれば、何の証拠も無い以上どうしようもならなくなるでしょう。攫われた人たちを助けることも大切ですが、誰が買ったのかを突き止めるのも重要だと思います」

「ミーアの言う通りじゃな。で、何か案はあるのか」

「はい。監視を続けたままオークションを開かせます。裏のオークションですから一般の人はいないはずです。なのでその人たちを特定して、証拠固めをするんです。ローレンスやラフィンドルと違って攫われた人を買ってます。全員でなくとも少しは証言を得られるでしょう。そこから追い詰めるのです」

「可哀想な気もするがな」

「大事を得るためには小事には目を瞑る、これが策なのではないのですか。少し苦労をかけることになるかもしれませんが、後で十分に助けてあげればよいのです」

「開催の時間と場所は分かっているのか」

「いえ、どちらも分かりません。でもローレンスやラフィンドルの監視も続けます。薔薇の監視も続けます。どこかで必ず繋がります。そしたらそこに忍び込みます」

「ミーア、危ない真似だけはするんじゃないぞ」

「私はずっとここに居るんですよ。危ない訳ないじゃないですか」



**********(side 黒幕たち&金色の月光 with ミーア)



「おぅ諸君、今月もまたお願いするよ」

「承知しました。いつもと一緒でよろしいですね」

「それで構わん。今回もしっかりと頼むぞ」


あれっ!どこかで見たことあると思ったら『金色の月光』の皆さんじゃないですか。こんなところでお会いするとは奇遇ですね。って私は見えてないか。

あの人たち、侯爵の仕事をしてるみたいね。ちょっと気になるから、覗くことにします。


「変わり映えのしない護衛仕事だけど、いい金になるからな」

「そんなこと言ってないで、行くぞっ!」


ローデたち4人は侯爵家の商隊の護衛をするようです。そう言えば支援役を入れたって聞いたけど、辞めちゃったのかな。4人の結束が強いからね。

この商隊も侯爵家の旗を掲げてのキャラバンなのですね。証明さえしっかりしていれば安全この上ないものだからね。

一体どこへ行くのだろう。ま、このまんま付き合ってれば分かることだけどね。


ローレンス侯爵とラフィンドル子爵が動き出しました。どこかへ行く準備をしています。


薔薇も動き出しました。馬車に攫った女性ひとたちを載せています。貫頭衣と言うんですか、粗末な服を着せられ、手枷に猿轡を嵌められています。この馬車の行き先が会場なのでしょうね。


薔薇の馬車が向かったのはアルンドという街でした。何とその街には『金色の月光』が護衛をしているサウムハルト侯爵家の商隊がいます。怪しいですねぇ。


何と薔薇の馬車は商隊に合流しました。ローデたちも合流する頃は知っているようです。って言うことはローデたち『金色の月光』もグルって事ですかね。


一行の目的地はクロラントという街でした。商隊はここのロレント商会に入っていきました。ローデたちは街に入ったところで商隊からは離れています。ローデたちは………、とりあえず放っておいてよさそうですね。


あの女性ひとたちはと言うと、商会の地下に連れていかれました。そこで体を洗われ、髪を整えられ、食事を与えられています。ローレンス侯爵からすれば大事な商品ですからね。少しでも高く売れるようにするのは当然です。


あれっ?ローデたちが商隊と一緒に王都に帰っていきます。ホントに関係ないのかもしれません。

入れ替わるように黒幕2人がクロラントに到着しました。


「お前たちはもうすぐ、新しい主人の下に行くことになる。いいか、新しい主人はお前らの事を気に入って使用人とするのだ。今までのように薄暗い洞穴の中の暮らしがいいのであれば構わないが、お前らにとって新しい主人の下で使用人になることが一番なのだ。お前らは奴隷などではない。私は困っているお前らを新しい主人と引き合わせているだけなのだからな」


攫って来た女性ひとを売って金儲けをする人たち。こんな輩、許せるはずがありません。

そんな女性ひとを買うような輩が給金など払うのでしょうか。まずないでしょうね。ということは、こいつらも一蓮托生です。

この後追跡調査を続けたいと思います。



**********



「おじいさま、公爵様、分かりましたよ。オークションはクロラントで開かれるようです。既に侯爵も子爵も入っています」

「では、参加する者は分かるか」

「それは分かりません。件のオークションの前に普通のもやるみたいで、ごった返しているんです」

「なら、始まってからが勝負という訳じゃな」

「侯爵はこんなことも言ってました。『奴隷ではなく、新しい主人の使用人なんだ』と。それから侯爵自身『私は困っているお前らを新しい主人と引き合わせているだけだ』とも」

「綺麗ごとを並べおって。化けの皮を剥がしてやるまでさ」

「あっ、私、侯爵と子爵は分かるんですけど、その他は知らないんです。どうしましょうか」

「どうしましょうって言われてもなぁ」

「錬金人形で首から上を作りますので、それでいいですか」

「それなら大丈夫だな」




奴隷オークションが始まりました。ここからは実況でお送りいたします。

Cランクから始まるのでしょうか。出てきた人はCグループの人のようです。衣服は何もつけていません。後ろ手に縛られ、首輪を付けられています。その首輪には番号札が付いています。Cランクの入札は一斉に行われるようです。ステージに8人が並べられました。


8人の人形を作ります。首から上だけだとちょっと気味悪いので、胸から上にします。

入札に参加している人たちのも作ります。30人ほどいるでしょうか。出来上がった人形を見て、後ろから歓声が上がります。

「こいつウフェル男爵じゃないか」

「こいつはムルジット子爵。そしてハビット商会の商会長だな」

次々と面が割れているようです。


Cランクの入札が終わりました。大体金貨2~3枚が相場のようです。買い叩かれてますねぇ。

最後まで残ってた3人は、まとめて金貨2枚でハビット商会長に買われていきました。

彼女たちを買った人たちは、彼女たちに何十倍も働かせるのでしょうね。部屋代、食事代、服代と称して一銭の給金も与えずに。そういうのを奴隷って言うんですけどね。

彼女たちの未来は性奴隷なのでしょうか。8人のうち5人を買ったのはハビット商会長でした。きっと娼館送りなのでしょうね。


Bランクからは1人ずつの入札です。初めに全員の顔見せが行われました。参加者は誰を落とすか考えているようです。

そうこうしているうちに参加者30名の人形はすべて完成しました。

次々と競り落とされていきます。このクラスだと金貨8枚から10枚といったところが相場なのでしょうか。

Bランクの最後の1人も競り落とされました。何と金貨15枚でした。



いよいよ本命のAランクです。今まで見向きもしなかった人たちが動き出します。

このランクでは顔見せはありませんでした。


まず連れてこられたのは、このランクで一番年上と思われる女性です。早速人形を作ります。

「この娘、バシュリーゼ男爵の娘と違うか?」

彼女も他の人と同様に衣服は一切付けていません。

整った顔立ちに、張りのあるツンと上を向いたおっぱ……、そんなとこを見てるんじゃないんです。少し悔しそうに顔を背けるしぐさが印象的です。

『さてご来場の皆さま、いよいよ最後のランクとなってまいりました。素晴らしい品をそろえておりますが、いいものが後から出てくるとは限りません。これはと思ったものは、お早めにお手にするのが一番かと思います。それでは皆さん、存分にお楽しみください』

あっと言う間に値が上がっていきます。彼女を競り落としたのは頭の禿げた厭らしい目つきのデブの親父です。

「こいつが72で落としました」

「こいつはスワルコッチャ伯爵か」

彼女を見る禿親父の目はどうよく見ても普通じゃありません。慰み者にしようと思っているに違いありません。こいつも女の敵です。必ずや私が成敗、しなくても国王様が成敗してくれますね。


次々と女性たちが競り落とされていきます。さすがAランク、他とは相場が違います。大体50枚から80枚ですね。さすがに伯爵が入ってくると高騰します。


あのチビッ子が出てきました。Aグループにいたあのちっちゃな子です。こんな幼気な少女に手を出す親父なんざぁロリ●ン確定です。

おっと、ぐんぐん値が上がっていきます。70を越えました。80………、ついに100も突破です。まだ上がって行くようです。110、112、115、116、120。決まりました。120で決着です。落としたのはコイツです。

指さした人形はファーヴ伯爵のようでした。白髪混じりの逞しい感じの渋い男の人ですが、ロリ●ン確定です。追跡調査も決定しました。


『さて皆さま、次が本日最後となります。まだ躾は完全ではありませんが、生きの良さは折り紙付きです。ではどうぞ』

連れてこられることに抵抗しているようです。

『何するのよっ!止めなさいよっ!見ないでよ。見ないでって言ってんでしょっ!おうちに帰してよ。お願い、帰してったら』

かなり気の強そうな女性ひとです。攫われてからまだあまり時間がたってないのでしょうか。見ないでって言ってますけど隠せるはずありません、だって後ろ手に縛られているんですから。

『いいねぇ、かなりの上玉だ。あの気の強さを屈服させるのは、さぞかしいい気分だろうな』

おっと、手が挙がりました。100です。いきなり100が出ました。会場がどよめいています。

『ちびちび上げるなんざぁ性に合わねぇ。俺はこの女に150まで出す。まぁゲームだからな、149と出されたら退くかもしれんがな。それでいいならかかってこい』

会場は静まり返っています。

『き、決まりでよろしいでしょうか。返事がないようなので、100で決定です』

最後の人形を作って、落とした奴を指名します。

「ギルティム伯爵か……」

「それにこの娘、ギャルフィード子爵が平民の女、確か結婚していたと思ったが、それと無理やり関係してできた子じゃないか」

「そんな噂を聞いたこともあるな。煩わしくなって攫わせたかな」


うーん、闇深いです。どうやらAグループは貴族の血が入った人、Bグループは平民のようです。



『皆さま、お気に入りをお買い求めいただけたでしょうか。惜しくもお買い求めいただけなかった方、更にお買い上げいただきたい方、3月後にまた開催いたします。Aランクは少なくなるかもしれませんが、それなりの数は揃えますので、よろしくお願いいたします。本日は皆様、ありがとうございました』



オークションは終わりました。買いに来た40人、買われた30人、ローレンス伯爵にラフィンドル子爵、薔薇に監視を付けます。いやーマジ【ピーピングミーア】だわ。マルチさん、頑張ってね(ハ~ト)


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