第33話 お屋敷完成(前編)
やってしまいました。また新たな
その名も【人形遣い】。お人形さんを操る人だそうです。
確かに私は、私の作った錬金人形を操ります。でもそれってマルチさんがやってることですよね。
えっ、違うの?マルチさんじゃないんだ。ん?マルチさんだけど、マルチさんじゃない。よくわかんないから、ちゃんと説明して。
なんでも人形を動かすには、命令を出すのと命令を受けるのがセットで必要なのだそうです。そのセットの使い手こそが【人形遣い】なんだそうです。普通の人だと、1体の人形を上手に動かすには全ての思考を使ってしまうそうです。だから一人一体って事ね。私の場合、そこを【多重処理】さんがやってくれるので、余裕で何体も動かせるって事みたい。だからマルチさんじゃないけどマルチさんらしい。
ところでこのスキル、マジヤバい。私はね、人形を操れるだけだって思ってたの。ところが違ったの。自分が作った人形だけでなく、他人の作った人形も動かせます。まぁ許容範囲ね。女の子の持っているお人形さんや、木でできたおもちゃの人形だと、動きはぎこちなくなるけどね。でも突然人形が動き出したら、ホラーよね。
ヤバいその1はこれ、死体も操れるって事。死体だよ、頭がないかもしれないんだよ、腕がちぎれてるかもしれないし、お腹がえぐれてるかもしれない。そんなのが動くんだよ。人形が動くどころのホラーじゃないよね。超ホラーだよ。ネクロマンシーじゃないから、死んじゃった人が知ってたことを、私が知るなんてことはできないけどね。
ヤバいその2って言うか、超ヤバいのがこっち、生き物も操れるって事。全ての生き物じゃないんだけどね。全て操れるなんてことになったらねぇ。えっ?『どうせこのスキルも進化して、全ての生き物を自在に操れるようになるんだから』って、止めてよね、そういうこと言うの。フラグが立ったらどうするの。あっ、もうフラグ立ってるのね。
全てじゃないって言うのは、私が操ろうとする力に対抗できる人はダメって事らしい。寝てる人、気絶してる人、私が操ることに同意してる人、そんな人達は操れるみたい。魔物もそう。あまり考えてそうにない魔物は操り放題。例えば、スライムとかゴブリンとか、ウルフとかオークとか。でもハイオークとかゴブリンロードとかになると難しいかもしれない。でもだんだん操る力が強くなって、そのうち普通に操れる人も増えていくんだろうなぁ。フラグがどうしたって?もう立ってんだからいいのっ!
ねっ、ヤバさが分かったでしょ。フラグが回収されないまま消えることを願うしかないね。
あと【多重処理】だけど、かなり前に【多重処理(改)】になってたのね。最初は処理できる数に制限があったんだけど、【(改)】になって制限がなくなったらしい。らしいって言うのは無制限に処理したことがないからね。
でこれが、【
お墓参りから戻って1カ月、私のおうちができました。おうちってレベルじゃなかったですけど。
1カ月も何してたのかって?近衛の人たちとお人形さんごっこしたり、私のおうちで使うガラス窓を作ったり、ガラスの食器もいっぱい作ったわ。土の中にあるほんの僅かな銀を集めて、ナイフやフォーク、スプーンも作ったし、いい土があったからそれで綺麗な食器も作ったの。土の中の銀って普通じゃとても使えないものだから、いくら集めてもいいって言われたんだ。結構深いところ、って言ってもとても掘れるようなところじゃないけどね、そんなところにいっぱいあったから、遠慮なく頂いたわ。鉄と胴と金とミスリルとオリハルコンもね。大きな塊にしてしまってある。
おうちができたからって、色々と準備しておかないとすぐには住めないのよ。小物が結構大変でね、揃えるだけでもずいぶん時間がかかっちゃった。
おじいさまにおねだりされたわ、ガラスの食器。透明なものや赤や青の色のついたものも。結構な数あったかな。王宮でも使ってないものだからって言ってた。うちじゃ普段使いだけどね。
『そんなにバンバン使ってると、またスキル化するよ』って心配してくれてるのか呆れてるのか知らないけど、錬金術は気にしないことにしてるの。これスキルにしてる人それなりにいるみたいだからね。別にその人の仕事取る訳じゃないし。だからこれは【ミーア化け物化計画】の対象外です。
で、そのおうちなんだけど、どうしてこうなったのかしら。説明してもらわないといけないみたい。
「おじいさま、私のおうちができたって聞いたんですけど」
「おお、この間出来たみたいだぞ。儂もまだ見ていないので、一緒に行くか」
「おじいさまだけじゃなくって、出来ればこれに関わった人をお願いしたいんですけど」
おじいさまとおばあさま3人、ルイスおじさんとナジャフ公爵さん、ジャスティンとマリアンナ、それから設計した職人の方、みんなで行きましたよ。皆関係者だったんですね。特におばあさま、3人ともとは………。(はぁー)
真っ白い、かなりの高さの壁が見えてきました。この間来たときにはありませんでしたから、その後作ったんでしょう。そして、立派な門があります。
「大公様、ミーア様に、礼っ!」
門を警備している護衛さんたちが、敬礼で出迎えてくれます。
「ここが正門です。ここを通れるのはミーア様とお客人だけになります。使用人や御用の商人は向こうの勝手口を使うことになります。この門は常時護衛が詰めており、不審者の侵入を見張っております」
「ご苦労様ですね、これからもよろしくお願いしますね」
門をくぐるときれいに整備された道が続きます。途中、分かれ道がありましたが、庭園を廻ったり東屋みたいのがあったりするそうです。
馬車に揺られてしばらく行くと、家?屋敷?館?とにかく家に着きました。
「あのー、何で2つ建ってるんですか?」
「2つではありません。地下の廊下で繋がっております」
地下があるんですね。この間見に来た時に地下の工事をしてましたから、あるのは分かってたんですけどね。
「こちらがミーア様のお屋敷になります。3階建で地下は2階あります。こちらはパーティーホールになっていまして、ミーア様とご家族様の控室、お客様用の控室が30に談話室などもあります。お客様の控室は全て地下に用意させていただきました。ミーア様とご家族様の控室は1階にあります。ホール自体が2階の吹き抜けとなってますので、1階、2階のバルコニーをお使いいただくことができます」
頭が痛くなってきました。誰がこんなものを作ってくれと言ったのでしょうか。少なくとも私ではありません。
「ルイスおじさま、宮殿のパーティーホールはもちろんこれよりも立派なのですよね」
「何と言ったらいいか、こちらの方が広いし、豪華であることに違いないな」
王宮のものより立派なものって…、これはきっとおばあさまの誰かの仕業ね。
「気に入ってもらえたみたいでよかったわぁ。私たちの夢でできてるみたいなものだからねぇ」
ここをおばあさま方3人でお作りになったんですね。
「お屋敷とホールは地下の通路で繋がっております。ミーア様とご家族様の通路、使用人の通路、こちらは主に料理用となりますが、それぞれ別になっております。
お客様の馬車はあちらに止めておくことができます。馬車50台、馬100頭までは止められます。お付きの方の休憩所も用意してございます」
至れり尽くせりですね。私はパーティーを開くために王都に来たわけじゃないんですけどね。
「それでは中をご覧いただきたいと思います」
煌びやかな入口の扉から中に入ります。ホールを思わせるような広いロビーです。受付も用意されています。地下のお客様用の控室に案内されました。一口に言って圧巻です。ずらりと並んだ部屋、扉には誰の部屋かわかるようになっていて、間違えることもありません。部屋もそれなりの広さです。メーク用のスペースはもちろん、各部屋にお手洗いもあります。休憩できるようにソファーや椅子、テーブルもあります。着替え用の小部屋にはクローゼットもありました。
「全部同じ部屋なのですか?」
「多少配置が変わるところもありますが、設備と広さは大体同じです。今は30部屋用意してありますが、ミーア様がお引越しされてくるまでに、あと20用意することになっています」
「おばあさま、これだけのものっているんですか?」
「そうねぇ、ミーアはまだ知らないかもしれないけど、パーティーの時の女性って大変なのよ。パーティーは女性の戦場、見栄が火花を散らしているわ。ドレスやアクセサリー、メーク道具もいくつも持ち込みたいの。でもほとんどの場合ドレスは持ち込めないわね。メーク道具にいくつかのアクセサリーぐらいなの。メイドが持っているけど、控室なんてまずないわね。王宮でも控室を使えるのは限られた人だけよ。そこもこんなに整ってないわ。まずお手洗なんてない。部屋にお手洗があるだけで安心なのよ。ドレス着てたらいけないでしょ。でもこれならお手洗の前にドレスを脱ぐこともできるし、用が終わればすぐに着れるわ。一人じゃ脱ぎ着出来ないからメイドに手伝わせるんだけどね。
この控室だけでもすぐに噂になるわよ。そうそう、王宮のパーティーホールもこんな風にしてもらわないといけないわね」
淑女の戦場ですか……。この先はバトルロイヤル会場って事ですね。
1階に戻ってきました。
「こちらの3部屋は談話室になります。普通のお部屋ですねぇ、ゆったりとお話ができるように作ってあります」
普通に10人ぐらいがゆっくり寛げるな。寛ぐだけならロビーでもいいんだろうけど、おしゃべりするから部屋なんだろうな。聞かれたくないこともあるかも知れないし。
家族の控室って言うのは、まぁ想像の範囲内でした。お客様用のを4つまとめたぐらいで、お手洗も3つありました。奥の扉が家(私は屋敷とは言わない、予定)に繋がる地下通路のものなのでしょう。
とんでもなかったのが私の控室。ちょっと説明させます。
「ちょっと確認しておきたいんだけど、ここを使うのは私と、今はまだいないけど旦那様や、子供たちって事でいいのよね」
「いえ、こちらはミーア様専用となります。旦那様やお子様は家族用をお使いいただくことになります」
「それちょっとおかしくありません?なんで私一人しか使わないのにこんなに広いの?家族用のと同じぐらいあるじゃない。それにお手洗も」
「お手洗はこちらですね。他の部屋のものより少し広めに作られています。こちらは浴室となっております」
開いた口がふさがりません。なんでパーティーホールの控室にお風呂が付いてるんです?斜め上にも程があります。
「で、これは?」
「応接室にございます。パーティーでありますので、多くのお客様が一堂に会します。それぞれ個別に当たれるよう、このようにいたしました」
応接コーナーがずらりと6つ並んでいたのでした。
もうホールを見るのが怖くなってきました。おばあさまはこんな小娘に何をさせたいんでしょうか。
「おぉ、これは」
ルイスおじさーん、ナジャフさーん、帰ってきてくださ―い。おじいさま共々3人は呆気にとられています。
「これよねぇ、私たちが求めるのは」
おばあさまたちは興奮しっぱなしです。あんまり興奮しすぎると血管切れちゃいますよ、気を付けてくださいね。
ってか、おばあさまたち、私の家で遊ばないでください。おじいさまのお屋敷に建てればいいじゃないですか。
「こちらがメインのパーティーホールになります。ある意味ミーア様のお顔となるところなので、頑張らせていただきました」
いや、そんなところで頑張らなくっていいから。皆勘違いしてるみたいだけど、私冒険者だからね。そこんとこ間違わないでね。
300人ぐらい入っても余裕がありそうです。天井が高いのも広く感じるところなのでしょう。それでいて十分に明かるのは大きな明かりがいくつもあるからでしょう。私の作ったガラスをふんだんに使ったシャンデリアが天井や壁一面に一杯に吊るされています。大きな魔石が明るく光っているのでしょう。
「あれいいわねぇ、あんなにキラキラ光ってる。ねぇミーアちゃん、あれ作ってくれない。向こうのお屋敷に付けたいから」
後で作ることにしました。大した手間じゃないですからね。
「ミーア様が出入りする扉はこちらになります。こちらからミーア様の控室に繋がっております」
圧巻ですねぇ。ここに立った私がみんなから注目を浴びるのですね。溶けてしまいそうです。
「2階のバルコニーは、こちらの階段を上がっていただければ出ることができます。バルコニーは4つ作られています。廊下で繋がっておりまして、反対側から降りることもできます。1階からは庭園へ出ることができますので、お楽しみいただけるかと思います。庭園の方は庭師の方に整備していただかなければなりませんが。噴水も作らせていただきました」
お庭ねぇ、馬の練習でもするんですかねぇ。
「楽団は2階のバルコニーの反対側になります。奥に楽団員の控室と用具置き場がございます。お料理とお酒、お飲み物はホールの後ろ側での提供になります。後ろの扉のお部屋がお屋敷の厨房と繋がっていまして、そちらから持ってきていただければと思います。料理人の方は使い慣れた厨房の方がいいと思ましたのでこのようにいたしました」
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