第17話 お宝騒動
今日も朝から暇………じゃないです。
今日はマルチアイの訓練をするんです。
今日は4つぐらい同時に動かします。映像はこう、並べて配置します。
気分は秘密基地の司令官です。【コマンダーミーア】です。
アジトの入り口、通路、攫われた人が押し込まれている牢屋、ボスのお部屋、この4つにします。幹部さんのお部屋なんて面白くなさそうですしね。
視覚を作って配置します。覗き魔ミーアの誕生です。【ピーピングミーア】です。
ボスってば一体、朝っぱらっから何をやっているのでしょうか。けしからん奴です。
盗賊の人達もお仕事を始めました。盗賊のお仕事って………、商隊や乗り合いの馬車を襲ったり、金品巻き上げたり、売れそうな人攫ったり………。お仕事しなくていいです。大人しく引き籠っててください。
私の見張りは……、ちゃんといます。私に逃げられたら大目玉ですからね。逃げるとしてもそこからは逃げませんけど。
攫われた人の牢屋はなんだか酷そうです。食べ物もちゃんともらえてないのでしょうか、弱っている人が大分いるようです。まだ病気の人はいないようですけど、放っておいたらみんな病気になっちゃいます。
やっぱりやることがなくなっちゃいました。
4か所の同時監視はもう慣れました。あと2つぐらいは行けそうです。
うーん、見てるだけじゃ飽きてしまいました。
覗きの次は盗み聞きしかありません。これをマスターして【ストーカーミーア】にクラスチェンジです。
犯罪者一直線ですね。捕まらないように気を付けます。
マルチアイの習得と比べてマルチイヤーの習得は簡単でした。何せ理論はマルチアイで確立済みです。
聴覚を複製して、送り込んで、再生するだけ。
ほら、簡単だったでしょ。
この分だと五感全部行けるんじゃ。あっ、味覚と臭覚はいいや。いきなり臭いの嗅ぐのもやだし、食べてもないのに口の中に味が広がるなんてのもゴメンです。
触覚は…、どっちでもいいです。でも、触られたって感じるのかな?どうなんだろ。
早速試しましょう。私の時間の浪費のために。
触覚を試してみました。絨毯を触った(?)ら、ふわふわの感じがしました。成功です。
ボスのほっぺたを突いてみます。思ったよりプニプニしています。
ボスの反応は………、変な感じがしたのでしょうか。手を当てたり首をひねったりしています。
気のせいだったと思ったのでしょうか、すぐに元に戻ってしまいました。
成功です。触覚でさえ気のせいレベルです。視覚や聴覚はもっと気づかないでしょう。
たとえすごく敏感な第六感を持ってたとしても。
私、最強です。普通の女の子は強いです。
おっと、ここで新スキルが出現しました。【マルチアイ】さんの登場でしょう。さあ、どうぞ。
ん?、【マルチアイ】さんじゃありませんね。【マルチセンス】さんになっています。
そうです。視覚だけでなく、聴覚と触覚、全部まとめて面倒見てくれるスキルのようです。
この世界には『生活魔法』って言うのがあります。私もいくつかは使えます。
1つは火をつけること。お料理をするときに、竈に火をつけるときに使います。
もう一つは水を出すこと。私は水魔法を使って水を作ることもできるんですけど、実は生活魔法で作った水の方が飲み水に適しているんです。だからお料理の時はこっちを使っています。
他に明るくしたり暗くしたりする、暖かくしたり涼しくしたりする、風を起こす、土を耕す、清潔にする、小さな傷を治す。こんなのがあります。
どれも普段の生活の中で使えればちょっと便利ですよね。
この生活魔法は、例の10歳になった時のお祭り、ジョブをくれるお祭りね、そこで使い方を教わります。初めの頃は魔力が少ないからほとんど使えないのですが、大きくなれば使えるようになるって言ってました。
あのころに比べれば、私も十分大きくなりました。きっと魔力も増えてるでしょう。
私の魔力って、どれぐらいなんだろう。結構使ってるよね。
マジックバックは常に亜空間と繋げてるし、亜空間の時間も止めてる。
全部合わせても自然回復の半分にもいかないぐらいなんで気にしてなかったんですけど。
今度機会があったら調べてもらいます。自分のこと知らないのやだし。
で、生活魔法の事を思い出したんで早速使ってみます。何を使うのかって?そんなの決まってるじゃないですか。
清潔にする魔法『クリーン』です。
3回ぐらいかけました。ようやくさっぱりしました。
服は汚れたまんまです。水魔法を使って選択してもいいんですが、着替えがないから服が乾くまでの間、スッポンッポンで過ごさなきゃなりません。うら若き乙女としては、そんなことできません。
仕方ないのでまた下着だけ洗濯します。昨日は魔法の事をすっかり忘れていたので乾くまでに時間がかかりましたが、今日は大丈夫です。
洗濯をして、よーく絞ったら、暖かい風を当てます。すると……
何ということでしょう、あっと言う間に洗濯物が乾いてしまいました。
**********
なんだか急に慌ただしくなってきました。何かあったんでしょうか。
私は、興味本位で、じゃなかった、情報収集のために覗き見を始めます。
「一体どうなってんだ!」
「分かんねぇよ!とにかくお頭に報告だ!」
なんとなくわかってきました。そうです、お宝がなくなっていることに気づいたんです。
私が失敬、違った、譲渡されてから1日半、それまで気づかなかった方がおかしいのです。
ここにあったお宝は、今は私の亜空間の肥やしです。
今、亜空間と繋がっているのは、私のポケットだけ。
それを切ってしまえば、ここにいる誰も亜空間の存在に気づけません。
私には亜空間の場所は分かるんですけどね。
「なにぃ、お宝が消えただと?」
「へぃ、空っぽなんです」
「全部か」
「3つともです」
「お頭、こんなものがありましたぜ」
薬壺です。でも既に開いています。何を入れといたっけ。確か、かゆくなる奴かな。
壺に価値なんてありません。せいぜい銅貨10枚ぐらいです。
「ん、なんだ。開いてんじゃねーか。誰が開けたんだ」
「分かんねぇっす。俺が見つけた時にはもう開いてましたから」
腕をポリポリ掻きながら下っ端は答えてます。
君が開けたことは解っているんですよ、お姉さんにはね。
「お頭、ありましたぜ」
別の部屋から壺が見つかったようです。今度は開いていません。
あれは、お腹がすく奴だったかな。
「よしっ、お前、開けてみろ」
「へぃ」
蓋を開けました。その瞬間、下っ端その2は毒に侵されます。
精神的にじわじわ来る毒ですから、即効性はありません。だから毒に侵されているなんて気づくわけありません。
「あれっ?空っぽですぜ、お頭」
「もう一つありました!」
私の置き土産は3つ。最後の壺です。この壺はチョとした仕掛けがしてあります。
開けた時、パンって破裂音がします。ちょっとびっくりする程度ですけど。
「開けてみろ」
今度の犠牲者は下っ端その3です。
「パンッ!」
みんなびっくりしてます。いきなり破裂音がしたら、爆発したのかと思いますもんね。
「なんも入ってません!」
下っ端3は大声で叫んでいます。なんか滑稽ですね。
「なんもないって事はわっかたからよ、もう少し静かにしゃべれや」
「なんか言いました?五月蠅くって聞き取りにくいんですよ。もう少し大きな声で話してくれませんか」
下っ端3は連れ出されてしまいました。
まぁ、一人で喧しかったのでしょうがないですね。
「おめぇら、猫糞したんじゃねぇだろうな」
なんだかおもしろくなってきたので、チョットした演出を加えてみます。
金貨をポケットの中に忍び込ませます。
さて、誰にしましょうか。おぉ、いいのがいました。
下っ端のまとめ役みたいです。中隊長といったとこでしょうか。
金貨1枚をポケットに入れて、もう1枚を床に落とします。
「チリンッ」
「何の音だ?」
「お頭、金貨が落ちていました」
「金貨だと?ここにはそんなもんねぇはずだが」
一人の男の顔色が急に悪くなります。暑いのでしょうか、汗ばんでいるようです。それとも寒いのかな、ガタガタ震えてるようでもあります。
「おい!どうした」
「い、い、いえ。な、何でも、あ、ありません」
そりゃ、そんな返事したら、余計に怪しまれますよ。
ピンチの時ほどポーカーフェイス。これ基本です。
「おぅ、チョットそいつ調べてみろ」
「い、いえ。何もありませ、んから。だ、だいじょぶですって」
部屋には15人ぐらいいるのかな。そんな中でキョドっちゃったら、フクロに合うの分かってんじゃん。
あっと言う間に身ぐるみを剥がされ……る前に金貨が見つかってしまいました。
「俺はなんも知らねぇ。信じてくれよっ!」
盗賊に信用を求めています。こいつバカなんじゃないでしょうか。
「俺じゃねぇっす。誰かに嵌められたんっす」
もう、責任逃れしてるようにしか映りません。
まぁ合ってるんですけどね、嵌められたって事。嵌めたのは何を隠そう、この私なんですから。
えっ?隠してないって?そりゃそうです。絶対私だってばれませんから。真実は闇のヴェールに隠されているのです。
今すぐゲロって死ぬか、拷問されて吐いてから死ぬか、二択を迫られたようです。どっちにしても死ぬんですね。ご愁傷さまです。
あんたに渡した金貨は、三途の川の渡し賃にでもしてください。そんなのがあるかどうか知りませんけど。
結局お宝は見つからずじまい。そりゃそうです。私が引き取ったのですから。私に譲渡されたお宝は既に私のです。
見張りが一人私のところに来ましたが、私がここから出てないことを知っているので、一応の確認だけで帰っていきました。
**********
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!やられたっ!」
その夜、アジト中にボスの大声が響き渡りました。
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予告通りミミリンさん登場です。
ミーアさんの超進化はまだ続くのでしょうか。
次回、更なる展開に、乞うご期待!
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