第13話 攫われた?
今日も私は薬草採り&ゴブリン退治です。
もっといい仕事はしないのかって?
そうですね。今のところは考えてないです。
少し前までは『しません!』だったのが、少し変わってきました。
別にその日の稼ぎが確保できて、まだ飽きてないから今のままでも……
ごめんなさい、少し飽きてます。
またまた新しいスキルが身に付きました。
1つは前に覚えそうって言ってた【精密射撃】です。
『ここに当てる』って強く思って撃つと軌道が修正されて必ず当たるようになるんです。
これもチート技です。
1つはって事は、そうです、2つ目もあります。
【多重処理】ってやつなんですけど、はっきり言ってなんだかわかりませんでした。
薬草を探しながら魔物の気配も探るとか、狙いを定めながら魔法の準備をするとかやってたら身に付きました。
いくつかの事をバラバラに考えることができるスキルみたいです。あまり効果が出てないようです。
あっ、そういえば探索が少し楽になった気がします。
探索と言えばこのスキルもバージョンアップしました。その名も【マルチ探索(オートマッピング)】です。長いから探索って呼んでますけど。
何が変わったかというと、頭の中にミニマップが出てきます。で、そこに見つけた結果が表示されます。しかも自分の向いてる方に自動で回転するんです。凄いでしょ。
それから、何がマルチかというと、探索の結果だけでなく魔力探索の結果も同時に表示されます。更に追跡のルートまで。
あと、空間魔法と合わせて、マーキングしたところの周りを探索することもできます。私がいない場所でも探せるって、凄くありません。
そっか、これって【多重処理】ができるようになったからバージョンアップしたんだ。
次は何のスキルが身に付くのかって?
そんなに私を化け物にしたいですか。
今でもこれだけのスキルがばれたら狙われ放題です。
穏やかに暮らしたいだけの平凡な女の子なのにです。
えっ?フラグって何か知ってるかって?
ええ、知ってますとも。フラグって旗ですよね。応援する時に振るやつです。
何っ?そうじゃないって?
やっぱり化け物化は止められないのでしょうか………
時空魔法を覚えて、マジックバックを作ったことで、私の持ち物事情は大きく変わりました。
中で2つに分かれているポーチは、片方を亜空間につなげました。その亜空間と私のポケットも繋がっています。
ポーチには小銭も入れてあります。一々亜空間から持ってくるのも面倒だし、もし、「金をよこせ」って脅されたときに「これしかありません」って逃げられるでしょ。
そしてこのポーチには探索タグというのが付いています。私の探索と繋がって、どこにあるかがすぐわかるようにね。この探索タグ、一度つけてみたらあまりにも便利だったんで、私の持ち物にみんなつけちゃいました。
私のリュックは亜空間接続タイプと空間拡張タイプのハイブリッドです。物が少しは入っているように見せかけていますけど。
クロスボウの矢筒の中には、小さくした矢がたくさん入っています。矢がなくなる心配をしなくていいほどです。
いくら、どこへ行くにも手ぶらで問題がないレベルの空間魔法の使い手(ちょっと自慢)でも、町の外に出るのに手ぶらで行くほど馬鹿じゃありません。(一度、武器もリュックも持たずに外に出ようとして、衛兵さんにこってりと絞られた挙句、外に出してもらえなかったことは秘密です)
それっぽく持ってる風のカモフラージュはします。
「今日も元気に薬草採取~♪」
歌を口ずさみながら薬草採りに励みます。
天気も良く、大漁です。魚じゃありませんけど。じゃあ大猟かな?でも、獣でもないし…
でもどうでもいいです。とにかくいっぱい採れました大量にです。
薬草摘みに励んでいた時、探索に反応がありました。いつものゴブリン、ではないようです。っていうか魔物ではありません。人間みたいです。
私の探索って、人間には弱いところがあります。魔物や獣は大体敵認定しちゃっていいんですけど、人間にはそういう訳にはいきません。いきなり撃ったら捕まっちゃいますからね。
そういう訳で、誰かが近づいてるって感じです。それも全部で3人。全員妙な動きです。
うーん、悪意があるのかどうか分かるといいのにな。
えっ、これがフラグですって?
3人は私を取り囲むように動いてきます。私が気づいてるなんて思ってないんだろうな。
クロスボウも矢筒もリュックもナイフも全部亜空間に放り込みます。手持ちはポーチと杖だけです。
杖って言っても棒っきれのやつです。
ポーチの亜空間接続を切断して、さっき摘んだ薬草を少し入れておきます。
「こんなところでお一人ですか、お嬢さん」
「はい、薬草を摘んでるだけですから。ってお嬢さんだなんて、あらっ」
「でも、魔物も出るから気を付けないとね。近くでゴブリンの目撃情報もあるみたいだしね」
「襲われそうになったら逃げちゃいますから大丈夫ですよ」
一人の男が私の前に現れて、親しげに話しかけてきました。残りの二人は後ろから近づいてきています。
私は賢いから、後ろの二人には気づかないふりをします。
「そんな不用心じゃ危ないですよ。ミーアさん」
「??あれっ?私、名乗りましたっけ?」
大失敗です。私はこの男たちをただの物取りだと思っていました。
ただの物取りならポーチを置いて逃げてしまえばいい。後でポーチを探して、「怪しいところを見つけた。盗賊のアジトかもしれない」って衛兵さんに言えば解決すると。
しかしこの人たちは私の事を知っています。知ったうえで近づいてきていたんです、悪意をもって。
うぇーん、探索の役立たず。敵なのかどうか教えてくれたっていいじゃん。
後の祭りです。アフターフェスティバルです。
彼らの前で私の力を見せる訳にはいきません。
「お前がミーアだな。大人しくついてきてもらおうか。大人しくしてれば手荒な真似はしないが、分かってるな」
分かりたくなんてありません。今すぐ逃げ出したいです。
でも、男の人3人に囲まれて逃げ出せそうにありません。ワープを使えば逃げ出せますけど、そんなことしたら次は簀巻きにして運ばれちゃいそうです。
「どのようなご用件でしょうか」
私はあくまで平静を装います。
「薬草摘みの途中なのですが」
突然、私は眩暈を起こして倒れこんでしまいました。どうやら鳩尾に強烈なパンチが入ったみたいです。
「大人しくついて来れば、痛い思いもしなかったものを…………」
気を失ってしまいました。
気を失ったまま乱暴されてしまうのでしょうか。
私の初めては大好きな人にって決めてたのに。
どこかに売られてしまうのでしょうか。娼館ではないと思います。こんな私につくお客なんていないと思いますから。
確か、公には奴隷って駄目だったはずです。でも、裏の世界ではあるのかもしれませんね。
どれだけ気を失っていたのでしょうか。胸の痛みを急に思い出し、目が覚めました。
5分?1時間?半日?1日?3日?
少なくとも5分ではなさそうです。目が覚めたところは洞窟の中。しかも鉄格子がはまった小さな部屋の中です。草の敷き詰められた上に横たえられていました。
『私、どうなっちゃうのかな』
人生初の大ピンチです。
荷物は……、あるはずがありませんね。ポーチも杖もありません。杖はあそこに落としてきたのかもしれません。ポーチは身に付けていたから、多分盗られたんだと思います。
ポーチの探索を行います。この少し先の部屋にあるようです。杖も一緒でした。
洞窟の様子を探ります。今私がいるところの周りに、同じような部屋が全部で4つあります。出口は1つです。そこには2人います。盗賊の見張りでしょう。他の多分牢獄のような部屋には誰もいないようです。つまり、捕まっているのは私だけって事です。
探索って便利すぎです。居ながらにして何でも分かってしまう。使い方を誤ると怖いです。
もし軍隊に探索持ちがいたら、敵の情報は丸裸です。
イケメンなら丸裸にしたいです。丸裸にして……あんなことや……こんなことや………。妄想タイム終了です。
見張りの居るところは通路です。通路を右に行くと出口になります。出口の周りにも部屋がいくつかありますね。多分盗賊たちの部屋でしょう、下っ端の。
大きな部屋に、若くて力のあり余った男たちが、沢山。そして、雑魚寝。見たくありません。
見張りがいるところの通路を挟んで反対側にも同じように通路になってます。見張りがいて、その奥に部屋がある。部屋は全部で4つ、でも一つ一つがここよりかなり広いです。大部屋でしょう。1つの部屋に5人から10人がいるようです。
あそこに捕らわれてる人たちは闇の奴隷市場へGOなのでしょうか。何とかしてあげたいとも思いますが、今は私も捕らわれの身です。
左に行くと部屋が幾つか、幹部の個室でしょうか。その前にかなり広い部屋です。多分ボスの部屋です。何人か動いています。お世話でもしてるのかな。ボス部屋の奥にも小部屋が幾つかあります。人がいるところもあります。ボスのお気に入りで、慰み者にされる人なのでしょう。他にも部屋はありましたから、宝部屋もあるのでしょう。
突き当りは大広間です。多分食堂ではないでしょうか。宝部屋はボス部屋の横に3つ。
これがこのアジトの全貌のようです。
盗賊は少なくとも100人はいそうです。かなりの大所帯の盗賊団です。きっとボスには凄い額の賞金がかけられているのでしょう。
攫われて捉えられている人が25~30人。
早く、このアジトの情報を衛兵さんにもっていきたいです。
『う~ん、ミニマップだけじゃどうしても細かいとこ分かんないよね。なんかこう、まるで見たかのように分かるといいんだけどな』
だからそれがフラグなんですって。【ミーア化け物化計画】のね。
とりあえずポーチと杖を取り返します。
ポケットから亜空間においてある予備のバックを取り出します。
バックのつなぎ先を、ポーチのおいてある部屋にします。するとどうでしょう、バックの中から部屋にあるものが取り放題です。
先ず私のポーチと杖を取り返します。杖は何の変哲もないただの棒っきれなんですけど、なんか取られたまんまだと癪に障りますからね。
バックの中を見ると、金貨や宝石、ネックレスや指輪、ブレスレットなどのアクセサリ、魔道具のようなものや剣や槍などの武器が沢山あります。
盗賊のお宝は盗んでも罪になりません。遠慮なく頂くことにしました。
バックを亜空間にもつなげて、部屋の中のものをポンポンと亜空間に放り込みます。
部屋はあっと言う間にすっからかんになりました。
他の宝部屋の中身もいただきます。当然ボス部屋の中にある宝部屋もです。
しかし、こいつら一体どれだけため込んでいるのでしょうか。
私は攫われた被害者です。被害者の当然の権利として、お宝を頂くことにしました。全てです。根こそぎです。
凄い量のお宝を手に入れました。
前にもらった金貨100枚が霞んでしまいます。
金貨だけでも数千枚、いや、数万枚はあるでしょう。
金貨だけではありません。1枚で金貨100枚の白金貨、聖金貨もありました。
一遍に大金持ちです。
宝石やアクセサリ、宝刀も大量です。
ただ頂くだけじゃ申し訳なく思えたので、置き土産をすることにしました。
私は毒使いです。だから毒のプレゼントです。
悪用されると困るので、最初に開けた人にだけ効いてあとは無毒化するように手を加えました。
全身がかゆくなる毒、常に空腹を感じる毒、頭の中で常に変な音が響いてるように感じる毒。
解毒薬?そんなものはありません。私なら作れますけど。
バッグを元に戻して、お宝強奪作戦完了です。
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