第8話 時空魔法
私、実はもう一つスキルがあるんです。ちょっと勘のいい人ならわかると思いますけど。
そのスキルは、ズバリ【水魔法】。
そうです。魔法系のスキルが身に付いたんです。でも、エレンさんには言えませんでした。こんなの告白したらとんでもないことになりそうだったので。
あと、【精密射撃】っていうのがスキル化しそうです。なぜ解るかって?今までの経験からなんとなく感じるんです。
空間魔法っていうのを調べることにしました。今は猪のお金があるので、無理に外に出る必要がありません。時間はたっぷりとあります。
調べるといえば図書館ですね。この街にももちろんあります。なんてったってトップ10に入るような大きな街ですから。
何度か入ったことがあります。中は本でいっぱいです。当たり前のことですが、本は他ではほとんど見ないのです。ギルドの資料室に少しあるって程度しか。
資料室には空間魔法の本はありませんでした。火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、回復魔法の本はありましたけど。
図書館を使うにはお金がかかります。1日銀貨1枚です。本が高いからなのでしょうか、仕方ありません。
魔法関連の書架を探します。気になる本はたくさんありますが、今はとにかく空間魔法です。
書架を隅から隅までじっくりと探します。この図書館、魔法関連の本がとにかく多いです。なので探すのは大変です。
この世界の本って、娯楽の要素がほとんどないんです。印刷の技術もないので、すべて写本です。なので、娯楽としてではなく記録としての本がほとんどなのです。
物語の本もありますよ、伝説とか神話とか。
恋愛小説なんてありません。書けば受けるんでしょうけど。私、書いてみようかしら。
1時間ぐらい探したでしょうか。ようやく1冊の本を見るけることができました。
『時間と空間の理』
なんだか難しそうな本です。でもそんなことは言ってられません。私はその本を手に取って、読み始めました。
理解しようと一所懸命に読み進めるのですが、専門的な言葉が多いせいでしょうか、なかなか進みません。1日かかって半分ぐらいしか読めませんでした。
翌日もまた来ます。続きを読み進めます。
さらに翌日、ようやく読み終わりました。理解できたかっていうと、そんなわけありません。本を読んでサッと理解できる人など、ほんの一握りの天才だけです。私は天才ではありません。
次の本を探します。なかなか見つかりません。適性のある人が少ないからでしょうか、本の数も他と比べて極端に少ないです。
なんだかんだでようやく見つけたのがこれ、
『理論と実践 時間魔法と空間魔法』
これです、私が探していたものは。私は手に取って読み始めました。
「この本は、貴方の時間をただ浪費するだけかもしれない。何も得ることができないかもしれない。
無駄を人生のオアシスと思えるのならば開くといい。」
哲学書かいっ!!
もちろん私はそんなことを気にせずに開きます。わくわくでいっぱいですから。
結論から言うと、分かりました。理解しました。使えるようになりました。えっ!
最初の本『時間と空間の理』はあまりに難解だったためにどうなる事かと思ったのですが、あの本、あれで基礎的な理論がしっかりと押さえられていたのです。ですから2冊目を読んだ時にはスッと入ってきたのです。
最初の程難しくなく(とは言っても難解であることには変わらないが)、読み進めることができたのです。
適性がどうかですって?
「適性がないから諦めるっていうのは努力しない人の言い訳です」
なんてこと言ったら殺されそうなので言いませんが……
すみません。撤回します。失言でした。
そもそも私の魔法の適性なんて知りません。魔法職でもないので調べる気にもなりませんでしたから。
だから私が、1000人に1人の逸材なのか、大多数の中のイレギュラーなのかもわかりません。
適性があったから使えるようになったのか、使えるようになったから適性が付いたのか。そんなことはどっちでも構いません。今は適正持ちです。きっと、多分。これもエレンさんには言えません。
空間魔法だけではありません。時間魔法も使えるようになりました。
過去に行ったり、未来に行ったり…………はできませんが、私の時間の流れを変えることができるようになりました。
周りの時間より早くすると、まるで私が加速したようになります。時間を戻すことはできませんが、止めることはできます。時間を止めてしまえば私は何でもできます。あんなこともこんなことも、やりたい放題です。やりませんけど。
逆に私の時間をゆっくりにすると、たっぷり休めます。時間の流れを半分にすると、1時間の休憩で2時間分休めます。これはこれでとっても便利なのです。
マジックバック、それは空間拡張されたカバンです。空間拡張、そこで使われるのが空間魔法です。
いくつかのやり方がありました。そのうち私ができたのは3つです。
1つはカバンの中を魔法で広げるやり方です。これが一番簡単なやり方だそうです。
この魔法は、広げた分だけ中のものが軽くなります。100倍入るマジックバックは、中に入れたものの重さが100分の1になるって事です。でないと、袋が持ち上がらなくなりますからね。
2つ目のやり方は、バックの入り口と他の場所をつなげるやり方です。他の場所ってどこでもいいんです。自分の部屋でもいいですし、どこか知らないとこでも平気です。場所さえ記録できれば。
亜空間っていうところにも置くことができます。亜空間って、この世界だけどこの世界じゃない別の場所って事です。別の場所につなげるので重さはありません。しかも亜空間につなげた場合、時間の流れまで止めることができるんです。時間魔法を使ってですけど。
3つ目のやり方は、厳密にはマジックバックではありません。普通のカバンに、入れるものを小さくするのです。小さくしたらいっぱい入る。確かに理屈としては間違っていません。カバンは普通のものだから、取り出したものを元に戻せなければ使えませんけどね。
この方法、攻撃に応用できそうです。クロスボウで撃った矢を途中で大きくすれば、大きな魔物も倒せそうです。街やお城を囲む塀だって壊せるかもしれません。やらないですけど。
マジックバックを作ってみました。2種類です。どちらも上手くできました。中を広げる方はなんと1000倍です。私ってば天才です。
作ってみて分かったことがありました。マジックバックって常に魔力を消費するんです。まあ、自然に回復する量より少ないですから特に問題はないんですけど。
いえいえ問題です。魔力を消費する。つまり魔法が発動しているって事です。分かります?空間魔法や時間魔法を常に使っている、つまり、常に使える人じゃないとマジックバックって使えないんです。私の作ったマジックバックは私しか使えない、だから広まらないのです。
ダンジョンから出てきたマジックバックは誰でも使えるようなので、何か特別な仕掛けがあるのでしょう。作ろうとは思いませんけど。目立ちたくありませんから。
これで私の荷物の問題は解決です。目立たないように使うだけです。
空間魔法ではワープも使えるようになりました。これとっても便利です。ここと行きたいところをつないで、つないだところに入り口を作るんです。そこに入れば、ほらっ。
行き先をマーキングしておかなければなりませんが、それでもいろいろ使えそうです。
荷物運びのお仕事でも受けようかしら。
冗談です。そんな悪目立ちすることは致しません。
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