第3話 本音と真実(side 金色の月光)
俺たち『金色の月光』は、今王都へ向かう馬車に揺られている。
王都で行われるAランクパーティー昇格試験を受けるために。
「ねえローデ、ミーアにいくら渡したの?」
「金貨100枚チョットかな」
「えーっ、それ渡しすぎじゃない。10枚ぐらいでよかったんじゃないの」
「いや、これでいいんだよ。俺たちの為にもな」
「私たちの為?」
「そうさ。これだからケチな奴はダメなんだ。最近、パーティーを追放される支援職が増えているって話、知らないのか?」
「知ってるわよ。使い潰して、ポイッてやつでしょ」
「それって昔っからギルドで問題になっててな、最近また増えてきてるんでギルドが目光らせてるんだよ」
「ここで下手にケチってギルドに目付けられたら、Aランクパーティーになったとしてもいろいろとまずいんだよ」
「メンバーを追放するパーティーなんて噂流れたら、面倒だしな」
「だから円満に抜けてもらう必要があったんだ」
「大金まで払ってそんなまどろっこしいことするより、適当に罪押し付けて追放処分にしてもらえばいいじゃん」
「お前バカか。それこそ愚か者の発想だな。ギルドの連中はバカじゃない。あいつらの調査能力、マジ半端ないから。もしそのでっち上げがばれたら、俺たち全員犯罪者だぞ。それこそ金貨100枚の方がよっぽど安くつく」
「冒険の最中に始末するのも悪手だからな。パーティーランク降格に加えてギルドの調査が入る。噂だって流れるだろう。そんなパーティーに入ってくれるメンバーなんていろいろと傷を持った奴しかいないだろ」
「Aランクの昇格試験は俺たちなら何とかなる。試験さえ何とかなれば俺たちはAランクだ。後ろ暗いところのない新進気鋭のAランクパーティーが支援職を求めりゃ引く手あまただろ。あんな奴より優秀な奴が山ほど来るってもんだ」
「それに、金貨100枚って確かに大金だけどさ、俺たちあの娘にもっと稼がせてもらったよな。一人あたり30枚だぜ」
「そうね。私とディートは前に出るから、武器や防具がすぐダメになっちゃうのよね。特に私の盾、あれって殆ど消耗品だからね」
「カッチェの盾がなかったらって思うと、ゾッとするわね」
「俺やセリーヌだって同じさ。ミーアの薬に何度助けられたか。あのキノコの回復薬、魔力も回復したからな」
「いつもちゃんとした装備で出られたから、今ここに俺たちはいるんだ」
「でもそんな娘、追い出しちゃってよかったの?」
「武器や防具や薬は金で何とでもなる。今求めているのは金やアイテムじゃない。攻撃力なんだ。攻撃力が上がれば強い魔物とも戦える。薬を買う以上に儲けられるさ」
「もう俺たちはあの娘を必要とはしてない。それに代わる十分な蓄えもできたし、Aランクの依頼になれば報酬もケタ違いだ。新たな支援職メンバーを迎えて更なる飛躍をするんだ」
「「「おぅ!」」」
「Dランクの時のこと覚えてる?」
「そりゃ忘れもしないさ。昇格してすぐはガンガン行けたのに、パタッと止まっちまってさ。何をやっても上手くいかない。そんなときギルドに紹介されたのがミーアだろ」
「ミーアが入ってからは失敗していたクエストもすんなりこなせるようになったしな。一体何だったんだろうな」
「でも俺はミーアが加わる事、ちょっと悩んだんだぜ。なんせあのジョブだろ、毒使い。そんなのが入って大丈夫なのかなって」
「でさ、ホントのところなんでミーアを追放したの?ミーアにしたあの話、あれ嘘でしょ」
「まあな。確かにミーアには助けられたけど、俺たち『金色の月光』には毒使いは相応しくない。毒は闇なんだ、そして俺たちは光り輝く存在だ。だから彼女を切ったんだ。イメージの問題ってやつさ」
「イメージね。でも確かに一理あるわね。これからは貴族と付き合うこともあるけど毒使いじゃ印象悪すぎるもんね」
「そんなところさ」
でも私は知っている。この裏に隠された本当の意味を。そして彼がそれを実行したことも。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(某所にて その1)
「お前のパーティーに毒使いがいるだろ」
「ミーアの事か?」
「ああ、そいつだ。そいつをパーティーから追い出せ」
「なんでだよ、別に悪い奴じゃないぞ」
「いい悪いの問題じゃないんだ。とにかくそいつをパーティーから放り出せ。できれば冒険者も引退させろ]
「ミーアってなんかやばい奴なのか?」
「お前が知る必要のないことだ。金が必要なら用意する」
~~~~~~~~~~
(某所にて その2)
「追放の件、進んでいるんだろうな」
「やっぱ無理だよ。あの娘いい娘だし」
「金なら用意してある。とりあえず金貨100。成功すればさらに100だ」
「どうしてもやらなきゃダメか?」
「上からの命令だ」
~~~~~~~~~~
「あのさ、ミーアの事なんだけど……」
「ん?どうした?」
「俺たちのパーティーそろそろAランクじゃん。Aランクになる前に抜けてもらおうかと思うんだけど」
「急になんなんだよ。ミーアがいちゃ何か問題でもあるのかよ」
「いやぁ、Aランクになれば今までと違う依頼が増えるだろ。今までよりずっと強い魔物とか、貴族の護衛とか。そんなときに戦闘になったら俺たちじゃミーアを護れなくなっちまう。だからと言って見捨てることなんてできねえ。それに貴族相手に毒使いって拙いだろ。だからAランクになる前に、昇格試験の前にミーアに辞めてもらうんだ」
「俺たちがミーアにどれだけ助けてもらったのか忘れたんじゃないだろうな」
「忘れる訳ないじゃないか。でもミーアを護るためにメンバーを増やすってわけにはいかないだろ」
「…………」
「だったらAランクになる前にミーアには辞めてもらい、その後で新しい支援職の奴を入れた方がいいじゃないか」
「それはそうだが……」
「だろっ」
「でもミーアの奴、分かってくれるかな」
「分かってくれるかなじゃないんだよ。分からせるんだよ」
「それでも嫌だって言ったら」
「金を用意する。文句言えない額をな」
「金貨20枚ぐらいか?」
「いや、100は用意する」
「100っ!そんな大金どうやって」
「俺の方で用意する」
「まさかお前、パーティーの金を」
「そんなこと出来る訳ないのはお前が一番よく知ってんだろ。まあパーティーからも少しは出してもらうけどな」
「でも何でそんな大金を……」
「トラブルにならないために保険さ。100で済むなら安いものさ」
「カッチェやセリーヌにはなんて言おうか」
「二人には俺から話しておく。Aランク昇格試験を受けられるようになった時に実行に移す」
「あと数回のクエストてことか」
「俺はミーアが傷つくところを見たくない。しょうがないことなんだよ」
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(某所にて その3)
「首尾はどうだ」
「まあなんとかやってみてるさ。彼女が冒険者を辞めるかどうかは分かんないぞ。あの娘、冒険者以外で生きてく術を知らないからな」
「まあいい、お前たちのパーティーから抜けてくれりゃそれで構わねぇ」
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