魔王と一緒にトレーニング
魔王カロリングに一撃かましたあと、二人は一緒に楽しくトレーニングをしていた。
「や、やめ……正反対のエネルギーである筋トレなんてさせられたら、アタシが消滅しちゃう……」
「ほら、弱音を吐かない! やってる内に楽しくなるから! はい、
正拳こと聖剣のエネルギーをぶつけられた魔王カロリングは抵抗する力もなく、強制的に筋トレをさせられていた。
巨人と一緒に同じ動きをする姿は非常にシュールだ。
「ブヒィィィ……きづい、ほんどうに消えじゃうぅぅ……」
しかし、腐っても偉大なる魔王だ。
ギリギリのところで踏みとどまっている。
このまま聖剣のエネルギーを強く浴びなければ逆転のチャンスもあると窺っていたのだが――
「あ、そういえばカロリーヌ。何かこの鉄球に興味があったわね? やっぱり鉄球トレーニングって気になるわよね~。ほら、使わせてあげる」
巨大ジョセフィーヌは、普通サイズに戻った鉄球を指でつまんで渡してきた。
魔王カロリングはそれをつい受け取ってしまう。
鉄球には〝20kg〟と書いてある。
ちなみにkgとは――
「コレ、ゴッツ重い……!! ブギャアアアアア」
魔王カロリングの魂は聖なる輝きをダイレクトに受けて消滅した。
残ったカロリーヌの魂が身体の主導権を取り戻して、そこで目覚めた。
「ジョセフィーヌお姉様……。アタシ、やっと戻ってこれましたわ……」
「カロリーヌ……」
普通なら感動のシーンなのだが、勘違いしたままのジョセフィーヌから見れば、やっと厨二病の魔王プレイを終わらせた反抗期から脱出した妹なのである。
というわけで――
「よし、それじゃあ、そのたるんだ身体を引き締めるために筋トレですわ!」
「えっ」
魔王カロリングに酷使されていたときと同じ――いや、それ以上の地獄のトレーニングが開始されたのであった。
***
――あの戦いからしばらくの時が経過した。
後日わかったことなのだが、魔王と勇者の決戦は外の時間で見れば一瞬のことだった。
体感数ヶ月かけてダイエットして痩せたカロリーヌが暗黒空間から出てきても、いきなりすぎてアースたちが混乱していたくらいだ。
そして――あれからジョセフィーヌはというと。
「うーん、何かメチャクチャ筋肉がデカくなったはずなのに、どこかに消えて元の普通の身体に戻ってしまいましたわね……」
その分野を研究していたグランツによると、鍛えられた筋肉は見えない異空間にしまわれているだけらしい。
「あっ、しまった」
ケインが作った石膏像を、油断してゴリッと握り砕いてしまった。
どうやら筋肉によるパワーは据え置きで、力加減をミスると大変なことになってしまう。
「あとで謝っておかなきゃ……。でも、今は急ぎの用事があるのですわ」
ジョセフィーヌは、大切な人に呼び出されているバルコニーに向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます