熱烈トレーニング
「そういえば、ドレッドさんはどういうところを鍛えたいのかしら?」
「そうだな……」
ドレッドとしては騎士全般、様々な分野を鍛えたいと考えているのだが、ここは集中して鍛える方が効率がいいだろう。
今、一番困っていることを答えることにした。
「鎧を装備してても動けるようになりたいな」
「動けてましたわよね……? あ、わかりましたわ! 了解ですわ!」
ジョセフィーヌは『一を知って十を知る』という言葉を思い出して、ドレッドが何を望んでいるのかを察することにした。
(鎧を装備してても普通に動けるように……ではなく、そのさらに上! 連続バク転とか、木から木へ飛んだりできるくらいに動けるようになりたいんですわね!)
ジョセフィーヌは〝これは筋トレしがいがある〟と眼を輝かせたのだが、ドレッドは何か第六感で不安になってきた。
時刻は昼になった。
高く上がった太陽から直射日光が降り注ぎ、黒い全身鎧を着たドレッドに吸収されていく。
シューシューと蒸気があがり、表面は焼肉をするのに最適なコンディションになっている。
「最初に出会ったとき、暑さで倒れていたのでこの状態で筋トレをしますわ!」
「待て、殺す気か!?」
黒い全身鎧を着けての夏場の野外トレーニングは大変危険ですので、人類は真似しないでください。
「何やら魔族さんは頑丈らしいですし、ハードな筋トレもきっと平気ですわ!」
「いや、現に我は倒れて……もしかして、料理のウデの差を見せつけたのを根に持ってい――」
「まずはスクワット! そのあとに食材や飲み水調達の全力ダッシュ! 下半身や体幹を徹底的に鍛えますわ! できなければ、アースさんに〝ドレッドさんって、これっぽっちの筋トレもできない根性なしでしたわ~〟と報告することにいたしましょう」
「くっ、悪役令嬢め! なんて卑怯な……! いいだろう、我の根性を見せてやろう。人間とは格が違うのだ」
ドレッドは目をカッと見開き、えらそうに腕組み仁王立ちのポーズでスクワットを始めた。
そして四時間後――水くみ三往復全力ダッシュを終えたところで白目を剥いて倒れていた。
――三日目。場所は火食鳥やサラマンダーが生息する溶岩地帯。
「暑さに慣れながらトレーニングもできるという一石二鳥ですわ!」
「暑さというより熱さなんだが」
あまりのハードすぎる筋トレにドレッドは現実逃避をし始めた。
塩の器の中に鶏肉を入れて、外から焼くという料理があったというのを思い出しながら、現在の自分と重ね合わせる。
夜ご飯はそれを作ってみようかなと熱で昇天しそうになりながら考えていたら、筋トレ中にもかかわらず火食鳥やサラマンダーが襲ってきた。
「うおぉ!?」
「追加トレーニングですわね!」
「晩飯までに死んでたまるか……!」
ドレッドは帯びていた剣を引き抜き、次々と襲いかかってくるモンスターを斬り伏せていった。
こうして筋トレだけではなく、極限状態の実戦経験まで積み上がっていく。
あとついでに溶岩地帯の食材も手に入り、一石四鳥ともいえるだろう。
家に帰れば、大量にゲットしてしまった溶岩地帯の食材の加工だ。
さすがに一度に食べきれないので、日持ちするように保存食にしていく。
可食部以外は、次にベルダンディーが来たときに回収してもらい、街で売りさばく。
これが高ランクモンスターということもあり、かなりの収入源になるらしい。
山住まいの悪役令嬢の知恵である。
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