幕間 屈辱のカロリーヌ

「ブゥゥッキィィィイ!! なんでアタシが地面に頭をこすりつけなきゃいけないのよ!」


「そ、それは相手が帝国の第一皇子アース殿下で……」


 王宮にある寝室――その部屋主のトリスと、ブタの様に叫ぶカロリーヌがいた。

 破られて綿の飛び出た枕、転がり落ちて水がこぼれた花瓶、粉砕された金属製の棚。

 暴れ回るカロリーヌによって、部屋のあちこちが破壊されている。


「悔しいぃぃぃい!! このアタシ、カロリーヌが頭を下げなきゃいけない人間なんて、存在してはならないのよぉ!」


「そんなムチャクチャな……」


「でも、まだ表向きは帝国に敵意を向けちゃマズいわね」


 アースの庇護下に入ったジョセフィーヌには手を出すことができない。

 もし、一時の感情でそれをしてしまったら、帝国と戦争――いや、国力の差で戦争にすらならずに王国は潰されるだろう。

 むしろ、王国を手に入れるための挑発かもしれないとカロリーヌは深読みする。


「となると……裏側から仕掛けるしかないわね……」


「か、カロリーヌ!? 一体何を考えているんだい!?」


「ジョセフィーヌお姉様はお人よしだから色々と簡単にいきそうねぇ……。まだ例の危険な『特級封印指定区域』にいれば事故も装えるでしょうし、中に〝アイツ〟を送り込めば暗殺も狙えるわねぇ」


 カロリーヌの頭の中では、すでに適任者を刺客として送り込む算段を付けていた。


「そして、煩わしい帝国は少し時間をかけて足元から潰してやりましょう……アタシ自慢のカロリーでねぇ……ブヒヒヒヒ……」


 冗談ではなく本気の表情を浮かべているカロリーヌを見て、トリスは顔面蒼白になった。

 醜い欲求だけで自身の姉と帝国すら手にかけようというのだ。

 そのリスクと醜悪さは計り知れない。

 もし失敗したら、トリスはおろか王国すら破滅への道を辿るだろう。


(女とはこうも恐ろしい生き物だったのか……)


 トリスは安易な口車に乗って、ジョセフィーヌと婚約破棄してしまったことを後悔しない日はなくなってきた。

 自分がどれだけ恵まれた相手と結ばれる予定だったのかと思い知らされる。


「ブォッフフ、頭を働かせたらカロリーが消費されてしまったわ。ディナーが楽しみねぇ」


 トリスはふと思い出した。

 カロリーヌがおかしくなる前もディナーを楽しみにしていたのだ。

 そして、そのディナーでは特別に手に入れたという〝紫色の肉〟を生でかじりついていた。


(もしかして、原因は……)


「帝国もアタシの手中――いえ、胃中に収めてあげるわぁ! ブヒヒヒヒヒ!」



――


あとがき

次回から三章予定です!

そのため、三章詳細プロットや、新キャラ設定などを煮詰めるために毎日投稿が途切れると思います。

すみません!


そして別作品ですが、10月12日に私が原作のマンガが出たので宣伝です!

『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~ 2巻』

いつものように書き下ろし小説もついてお得!

(よし、宣伝頑張った)


あと、きりよく章区切りとなるので、ご祝儀として★★★など頂けると作者の筋肉が喜びます。

ではでは、なるべく早めに三章を開始できるように頑張ります!(この連載、ガチで書き溜めとか設定なしでずっとやってるからギリギリすぎる)

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