第43話


 学校も終わり、俺は軽く伸びをした。

 もうやることもないので、さっさと学校からおさらばした俺はアパートに戻ってきた。

 ポストをあけて中を見ると、手紙が入っていた。……切手はついていない。


 ということは、送り主が自ら入れに来たということだろう。

 俺はポケットからハンカチを取りだして、それで掴む。


 アパートへと入り、手袋をつけてから中身を確認した。

 ……可愛くいうのなら、ファンレターだ。ただ、どうにもカピカピと気持ちの悪いイカ臭さがあるが。


 一緒に添えられた写真には、美月の姿が映っていた。そこには乾いた何かがついていて、俺でなければ嫌悪感を抱いていたかもしれない。

 

 ただし、昨日の写真はない。ここ数日、どこか遠くから美月を隠し撮りしているようだった。

 ……周囲を警戒していたが、確かに昨日は怪しい人間はいなかったな。

 それらの手紙は証拠品としてとっておいた。


 それから、俺は親父に連絡をする。


「もしもし」

『おお、久しぶりだな雄一。元気していたか?』

「一応な。美月のストーカーってのはどうなんだ? 親父なら、犯人自体は特定できたんだろ?」


 親父は一応、腕利きの探偵だ。だから、ストーカー程度ならすぐに特定できるだろう。


『もちろん。警察にも伝えて、犯人には注意が言っているはずだが、なんだまた何かあったのか?』

「きっもち悪いファンレターが入れられていたんだよ」

『そうか』

「そいつの画像とかはあるのか?」

『ああ、もちろんだ。あとで送ってやろう。何か企んでいるのか?』

「まあな。ただのストーカーだと、たいした罰則はないだろ?」

『そうだな。軽い懲役、罰金のどちらかだろうな』

「なら、別の罪で追いこむだけだ」

『なるほどな。……気持ち悪い手紙、か。少なくともオレが担当していたときは、そこまではなかったな。遠くから見ている程度だったが……』

「どんどん過激になっていっているわけだな。とりあえず、画像だけは送っておいてくれ」

『了解だ。そういえば、おまえこの前の土曜――』


 親父が何かを言い出す前に、俺は通話を切った。

 あとで、画像が送られてくる。……どこにでもいる冴えない中年男性ってところか?

 俺は小さくため息をついてから、これからのことを考える。


 ストーカー野郎はどうやら近くにいるようだ。

 それがはっきりとしているのなら、あとはこちらが誘いこめばいいだけだ。

 恐らく、朝もこのアパート近くに潜んでいたはずだ。


 大丈夫だとは思うが、一緒に行動していたほうがいいだろう。

 俺はそれから、美月に電話をかけてみた。数コールの後、彼女は電話に出てくれた。


『どうしたんですかセンパイ?』

「いや、ちょっとな。今どこで収録しているんだ?」

『えーと、どうしたんですか?』

「そこの収録が終わった後、一緒にカラオケまで行かないか?」

『え? つまり、あ、会いたい、ということでいいですか?』


 美月の声がとても嬉しそうだった。


「ああ、まあ、それでいいや。そういうわけだ。で、今どこにいるんだ?」

『終わるころに合わせてきてください。住所も一緒に送りますから』

「ああ、分かった。仕事頑張れよ」

『もう、センパイが会いに来てくれるなら、頑張ります』


 嬉しそうな声が聞こえてきた。……まあ、そう誤解させておけばいいだろう。

 俺は通話をきった。

 

 とりあえず、これで美月は問題ないな。

 他にも色々と連絡を取っておく必要がある。


 まずは、美月のマネージャーだ。

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