第4話

 ヘビーミノタウロスはこちらに気づいていない。

 一気に迫ると、ヘビーミノタウロスがこちらへと反応した。

 しかし、それより先に俺は影を操る。


 ヘビーミノタウロスの足へと影を突き刺した。


「があ!?」


 ヘビーミノタウロスは確かに凄まじい力をしていたが、鍛えた影はその肉体を突き破った。

 レベルがあがったのもあり、今のシャドーアサシンならば並のものなら簡単に突き破ることができるだろう。

 ヘビーミノタウロスは驚いた様子で俺を見てきた。


 そして、斧が振り下ろされた。しかし、見える。

 今までと違い、肉体のレベルが跳ね上がったこともあって、何とか見切ることができた。

 俺はヘビーミノタウロスの攻撃を寸前でかわし、笑みを浮かべる。


 今なら十分にやれる……!

 ヘビーミノタウロスの攻撃をかいくぐりながら迫る。ヘビーミノタウロスの腕を浅く斬りつける。

 ……俺の持っている剣ではさすがに倒すのは難しい。


 だが――!

 ヘビーミノタウロスは俺の一撃を受け、持っていた斧を手からこぼした。

 それを俺は見逃さない!


 即座に憑霊を切り替える。シャドーアサシン→ミノタウロスへと切り替えた俺は、その斧を掴み、一気に力を籠める。

 さすがに、重たい。たぶん、ミノタウロスの力がなければ持つこともできなかっただろう。

 だが、手にした。


「うおお!」


 俺はミノタウロスに力を借りながら、思い切り斧を振りぬいた。

 ヘビーミノタウロスは俺の一撃を腕で受け止めたが、その腕を突き破った。


「がああ!?」


 鮮血があふれる。俺はすぐにその斧を戻し、もう一度ヘビーミノタウロスへと叩き下ろした。

 以前、やられたように頭から体を真っ二つに両断してやった。


 ヘビーミノタウロスはその場で膝をつき、動かなくなる。

 俺はその姿を見届けていると、ヘビーミノタウロスが死ぬのに合わせて斧が消滅した。

 放っておけば、いずれあの死体も迷宮に取り込まれるだろう。


 俺は急いでヘビーミノタウロスの心臓を食らった。

 体の奥底から力が湧き上がってくる。

 能力を見ると、俺のステータスに【憑霊ヘビーミノタウロス】が追加されていた。

 ……よし、この調子で残りの二体も倒して迷宮を脱出してやる。


 そう思った俺はすぐに行動し、残りのヘビーミノタウロスも仕留めた。


 


 それから、地上を目指して移動する。

 途中魔物をくらい、心臓を食らった。


 エミル 男 18歳

 体レベル 2213

 才能:【再生の勇者:レベル2213】【憑霊ブラッドウルフ:レベル2018】【憑霊ミノタウロス:レベル1918】【憑霊シャドーアサシン:レベル1815】【憑霊ヘビーミノタウロス:レベル1673】【憑霊ダークスケルトン:レベル1415】【憑霊アクアリザードマン:レベル1215】


 ……ステータスとしてはこのような形となった。

 ダークスケルトンは、ダークボルトという攻撃魔法が使用できる。……ただ、俺としてはシャドーアサシンのほうが使いやすい。

 アクアリザードマンはアクアキャノンという攻撃魔法が使用でき。ただ、こちらもやはりシャドーアサシンのほうが使いやすいと思った。

 

 迷宮脱出までに手に入った能力はこのような形だが、確かにこれだけ魔物の心臓を食らって力が手に入るのなら、人体実験をしようとするのも当然か。

 ちなみに、ダークスケルトンは心臓がなく、心臓部分に魔石が埋め込まれている。それを食べてみたら力が得られた。


 とにかく俺は――やっと最後の階段をかけあがり、迷宮の外へと出た。


「久しぶりの地上だな……」


 俺は軽く息を吐いてから、外を見た。

 近くに街があるはずだ。とりあえず、そこにいって妹を探しに行かないとな。

 俺は軽く伸びをして、久しぶりの外を歩いていた。


 とりあえず街についたのだが、やたらと視線が集まる。

 ……たぶん、服装などが原因だ。魔物と戦いボロボロの服はもちろん、髪などはべたべたと汚れてしまっている。それに、長く風呂にも入っていない。

 妹――ルーナに会う前に身支度を整えておいたほうがいいか。結構そういうところうるさいからな。


 俺はひとまず身支度を整えた俺は、それからこれまでに泊まっていた宿へと向かったのだが――


 そこで俺は思いがけない光景を目にした。

 宿の前……そこでスパーダが俺の妹、ルーナの手首をつかんでいた。


「いつまでも、こっちが下手に出てると思うなよ!!」


 スパーダがルーナへと怒鳴りつけ、その手首をつかんでいた。

 状況はまるで分からないが、スパーダにそのような態度をとられるような無礼をルーナがしているはずがない。


「おい!!」


 俺が怒鳴りながらスパーダとルーナの間に割って入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る