第3話
魔物の肉を食らった俺は……無事目を覚ました。
体を起こそうとした瞬間、体の奥底から力が湧き上がった。
「……これは――!」
俺が感動しながら自分の体を見ていた。と、その時だった。
俺は違和感を覚え、それから自分の能力を確認した。
エミル 男 18歳
体レベル 138
才能:【再生の勇者:レベル138】【憑霊ブラッドウルフ:レベル1】
よし! 体レベルがあがったぞ! というか、俺が考えている以上の上昇だった。
……魔物の心臓というのはそれほど影響があるんだな。
でも、変化もあったな。
才能の枠に見たこともない文字があった。
……才能は後天的に発現する場合もあると聞く。しかし、これは明らかに先ほど食らったブラッドウルフが関係しているだろう。
しかし、これはどのような才能なのだろうか?
「憑霊:ブラッドウルフ」
才能によってはこうして口に出すことで使用できるようになる。
次の瞬間だった。俺の嗅覚が鋭くなった。同時に、脚力もあがったような気がした。
……これは、もしかしてブラッドウルフの力を自分に宿したということか?
そういえば、聞いたことがある。
魔物の心臓を食らったものは、まるで魔物のような力を使いこなしたと。
……もしかしたら俺もそうなったのかもしれない。
「……何でも良いか。今はこれで、力が手に入ったんだ。もっと、もっと心臓を食らって、力をつけてやる!」
そう決めた俺は、すぐに魔物を探して食らっていった。
この階層に出現する魔物は、ブラッドウルフというウルフの魔物。シャドーアサシンという人の陰のような形をした魔物。そして、ミノタウロスだった。
……まあ、今はヘビーミノタウロスが暴れまわっているが。そのおかげで、俺はブラッドウルフ、シャドーアサシン、ミノタウロスの心臓を手に入れることに成功した。
……途中、何度かヘビーミノタウロスに殺されはしたが。
また、同種の心臓もいくつも食べていった。
そのおかげで、俺の才能に【憑霊:シャドーアサシン】、【憑霊:ミノタウロス】も追加された。
俺は能力を発動する。まずはシャドーアサシンからだ。
意識すると自分の体にシャドーアサシンの力をまとうことができた。シャドーアサシンという魔物は、気配を感じにくい魔物だ。その効果が俺に発動しているようだ。
また、影を操り攻撃もできる。……ただ、まだまだ操作が難しいな。
それから、ミノタウロスの力をまとおうとしたのだが――。
「ぐああ!?」
……二つ同時に使おうとすると、力が反発しあう。痛みに襲われ、慌ててそれを解除した。
……まだ、二つ同時に使うのは難しいようだ。
ひとまずは一つずつ使っていくしかない。
ミノタウロスの力は、肉体の強化だ。力を籠めようとすれば、さらに大きな力を出せるようになる。
咆哮だってあげられるようだ。……完全にミノタウロスになっているような気分だな。
そして、体レベルも88→430まであがっている。
滅茶苦茶上昇したのだが、まだヘビーミノタウロスを討伐するには足らないだろう。
俺はさらに心臓を食らいながら、シャドーアサシンの影操作技術についての練習を行っていく。
体レベルがあがったことで、この階層の魔物たちとも何とか戦えるようになってきた。
どうやら、この階層の魔物は俺にとって格上だったようで、魔物を一体倒すだけで、かなりのレベル上昇が見込めた。
俺はブラッドウルフ二体と向かい合っていた。
「影縫い!」
とびかかってきたブラッドウルフの一体を、俺自身の影で縫い付ける。
その体を鋭利に尖らせた影で突き刺して一体を仕留めつつ、もう一体を見やる。
襲い掛かってきたブラッドウルフの攻撃を避け、剣を振りぬいた。体レベルも【再生の勇者】もレベルが跳ね上がった今、俺はこの階層で問題なく戦うことができた。
「よし、レベルあがったな」
エミル 男 18歳
体レベル 1832
才能:【再生の勇者:レベル1832】【憑霊ブラッドウルフ:レベル1513】【憑霊ミノタウロス:レベル1401】【憑霊シャドーアサシン:レベル1330】
あっという間にレベルがここまであがった。
一人で魔物を仕留めていることで経験値が良かったのはもちろんあるだろうが、再生の勇者のレベルが500を過ぎたあたりから再生能力が跳ね上がった。
心臓を食らっても、毒によって肉体が破壊されるより先に再生力が上回るようになった。そのおかげで、気を失うこともなく心臓を食べ続けることができた。
魔物との戦闘でもそうだ。仮に腕に噛みつかれようとも、戦闘の間には傷が治る程度には回復できるようになった。
回復いらずでそこそこの相手ならどうにでもなる。それが今の俺だった。
もう少し鍛えたいところだけど……地上では妹が俺の帰りを待っているはずだ。
そろそろ戻るために、最後は――ヘビーミノタウロスを倒すとしようか。
俺は好き勝手に暴れていたヘビーミノタウロスを発見し、シャドーアサシンをまとった。
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