三話 4人になった家族?
「それで、クロガネ君はいくつなんだい?見た感じだと15~16歳に見えるけど。」
目の前に座っているロニードが聞いてきた。
今は朝食後のティータイム中だ。
「12歳です。」正直に答えた。
ドラグウェル国の関係者ではあるが、一緒に生活するのだこの程度の質問なら答てもいいはずだ。
ロニードは俺の言葉を聞くと驚いた様子だった。
ランジスはほぅと言って顎をさすりながら考え始めた。何か考えている時の癖なのか、たまにする仕草だ。
やがて考えるのをやめたのか、俺を見て口を開いた。
「一応聞いとくが、お前さんの両親は?」
「両親はとっくに死んでます。父はトウジシ王国の中でも有名な軍人だったので戦争に参加して戦死。母は父の死に耐えきれず自殺しました。」
「有名なトウジシ王国の軍人……。」
ランジスは少し考える素振りをみせた後、顔を上げて口を開く。
「その父親の名前はなんていうんだ?」
「リョウ・トクホウです。」
その名前を聞いた瞬間、ランジスは目を見開いた。しかしそれも一瞬ですぐ元の表情に戻り口を開いた。
「なるほどね。そういうことかい……」
ランジスは一人納得しているようでうんうんと言っている。
「そういうこと?」
「まぁまぁまぁ、茶でも飲めって。ロニード特製のハーブティーだぞ。」
問いには答えず、ランジスはお茶を勧める。
とりあえずは話を聞かずにお茶を飲むことにした。
確かに美味い。
香りが良くてリラックスできる。
味も薄すぎず濃過ぎない丁度いい塩梅になっているし、何より温かいというところが素晴らしい。
俺は夢中になって飲み干してしまった。
それを見たロニードは満足そうに笑っていた。
「それで、次はこっちが質問しても良いですか。そもそも貴方達は一体なんなんです?どういう関係なんですか?」
「そうだねぇ……まずは何から話せばいいか……。」
ロニードは困ったような顔でランジスを見ている。どういったら言いかといった感じだ。
「えーと、僕達の関係を簡単に言うと、僕が軍を脱走したときにランジスさんに拾われて、その恩でお爺ちゃんをお世話してる感じかな〜」
「誰がお爺ちゃんだ!俺はまだ若いわ!」
「いやいや。もう歳じゃないですか。」
「まだ50代前半だからセーフだよセーフ。」
「はいはい、分かりました分かりました。」
この会話だけでも二人の仲の良さが伝わってくる。それなりの時間一緒に居たのだろう。
見ていると家族と過ごした日々を思い起こさせる。少し、羨ましく感じてしまう。
そんな事考えてると、話が脱線してたのに気づいたロニードが話を戻してきた。
「それで、なんで軍を脱走したかっていうとね。敵国つまりはトウジシ王国の軍人を助けた事がバレてしまって、罰せられる前に逃げ出したんだ。」
「そんで、こいつが駆け込んだのがこの家だったわけよ。そん時に俺がここでサボってて見つけちゃったんだよなぁ。」
と、ランジスは息を吐く。サボれる場所を守る為に黙っているということなのだろう。
更にロニードはレティとの関係も説明してくれた。
「それから、レティちゃんもランジスさんが拾ってきた子なんだ。彼女も色々と訳ありでね。」
レティはこくりと小さくうなずく。
年齢に関しては触れない方が良さそうなのでスルーしておくことにしよう。
それにしても、レティについては名前以外情報がなさすぎる。
気になることもあるし聞いてみることにしようか。
「ちなみにこの子はどんな訳があるんです?」
「本人に聞いてみろ。」
「といっても、彼女はあまり語りたくないだろうけどね。」
「私からは言えない……ごめんなさい。」
やはり話したくないようだ。無理強いするのは良くないな。
「まぁ、事情があるみたいだし深く詮索しません。すみませんでした。」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」
健気にも彼女はそう言って微笑んだ。
彼女の情報は手に入らなかったが、無理やり聞くものでもないのでやめた。
本当に聞きたいことは彼女の事ではないからだ。
一息ついてから一番聞きたかった事を聞く。
「それで、結局俺に何をさせたいんですか?」
ランジスはやれやれと言ったように大げさに肩をすくめた。
「あんまり急かすんじゃないよ。物事には順序ってものが必要なんだよ。」
「お前さん、親父の仇をとりたいんじゃないのか?
だとしたら、ドラグウェル軍のことについて知る必要があるんじゃないかと思ってな。軍に入るにしても入らんとしてもだ。」
「そこでお前を鍛えてやろうと思ったわけだな。」
ここまで一気に喋ってランジスはどや顔をした。
「鍛える?」
思わずポカンとしてしまった。まさか只鍛えるだけなのか?
確かにあのとき鍛えてやると言われたが、それとは別の思惑があるのではと思っていた。
「ああ、お前さんの父親はトウジシ王国の中でもかなり有名な軍人らしいからな。そんな奴の息子なら、ある程度武術の心得はあるはずだ。」
ランジスは俺の困惑を無視して喋る。
それを遮って聞く。
「ま、待ってください!
本当にただ鍛えたいだけなんですか?他に何か思惑があるとかじゃなくて?」
「そりゃもちろんあるとも。」
ランジスは悪びれずに言った。
「そ、そうなんですか……」
思えばそりゃそうだろう。
まぁ、ただ鍛えてくれるというのであれば問題はない。
強くなることが目標なのだ。むしろ願ったり叶ったりである。
「さっきランジスさんが言った通り俺は父の仇をとる為に強くなりたいんです。だから…
ランジス…さん、これからよろしくお願いします。」
俺はランジスに頭を下げた。
「おおぅ!?︎ 随分素直になったもんだなぁ……。まぁいいさ、こっちこそよろしく頼むぜぇ?」
こうしてランジスのもとでの修行が始まった。
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