第293話 タカトウ直す

Side:タカトウ


 このままリーンワース帝国経由でキルナール王に情報が渡るのはまずい。

リーンワース王国により俺たちから攻撃されたなどと伝わってしまったならば、纏まる話も纏まらなくなる。

その前になんとか交渉に漕ぎ着け、この施設の修理ドックを使わせてもらわなければならない。


「キルナール王に送った通信は?」


「だめです。先程から魔力乱流が発生していて魔導通信が途絶しています」


 どうやら、そう遠くない過去に、この近辺で魔導バースト爆発があったようだ。

その魔力残滓によって、不定期で魔導通信が妨害されているのだろう。


 となると、陸上戦艦よりも高出力の、この第6ドックの通信設備を使用しなければキルナール王と接触することは叶わない。

だが、第6ドックの通信設備は壊れてしまっていて、満足な通信を行えないようだ。

そこで俺はこの施設の電脳に一つ提案をしてみることにした。


「電脳に問う。我らがこの施設の通信設備を修理しようと思うが、許可がもらえるか?」


『クラスB管理者、タカトウに通信設備復旧を依頼する』


 どうやら、このドックに害なすことをしなければ、俺たちにはある程度の自由は確保されているようだ。

尤も、俺たちを排除しようにも、それを行う警備ゴーレムが全て破壊されてしまっているので無理なのだが……。

しかし、俺がクラスB管理者だということで、敵だとは認識されていない気はしている。


「よし、許可が出たぞ。艦から作業ゴーレムを降ろせ。

通信設備の問題を把握し、修理を試みるのだ」


『資材の使用を許可する。

第396倉庫のロックを解除した。自由に使うが良い』


 どうやら第396倉庫に通信系の予備部品があるようだ。

それが使えるのであれば、修理も捗ることだろう。


「電脳、通信は送信障害か受信障害か?」


『送信障害だと把握している』


 つまり、送信アンテナの可能性が高いな。

元々の障害に、魔力乱流の魔法災害が加わって送信が安定しないのかもしれない。

機器は魔力乱流の影響の外に持って出れば使える状態なのかもしれないが、動けない第6ドックにとっては、それこそ常態化した問題なのだろう。


「よし、通信にブースト装置を取り付けるぞ。

魔力乱流対策のやつだ」


「ケーブルのチェック終了。

損傷が見られますので、該当箇所を交換します」


 通信ノイズの原因の一つだな。


「外は?」


「通信塔が倒れて半分埋もれています」


「そいつはもう駄目だ。

全交換だ。塔の設置は可能か?」


「土魔法使いにやらせます」


「ブースターにアンテナ、倉庫にて発見しました」


「よし、壊さないように搬出しろ。

ゴーレムに運ばせるんだ」


 我が艦の乗組員と作業ゴーレムにより、速やかに通信設備の復旧が行われた。


「試験通信、艦から発信した信号に電脳が答えるかを試験せよ」


「送ります」


『受信した。これはまた……』


「第6ドックより返信、『我が第6ドックはクラスS管理者クランドの指揮下にあり』です」


『受信内容は、「第6ドックはクラスB管理者タカトウの指揮下に入れ」だったぞ』


「それならば、通信試験は成功だな」


 これで第6ドックの通信設備を利用してキルナール王クランドと交渉をすることが可能になった。

一つの問題をクリアしないとならないが。


「電脳、通信設備を使わせてくれ。

俺はキルナール王クランドと話さなければならない」


『要請を許可する』


 第6ドックは、俺たちの努力を認めてくれたのか、この魔力乱流下で唯一使えるこの施設の通信設備の利用を認めてくれた。

これでキルナール王クランドと話すことが出来るだろう。

出来れば友好関係を結びたいものだ。

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